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タブレット&トラベラー ~魔力課金で行ったり来たり~  作者: 藤崎
第一部 勇者(アインヘリアル)チュートリアル
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インターミッション01 ファーストリザルト

第二部は8月だと言ったな? あれは本当だ。

幕間的ななにかとして、実績解除関連のお話を投稿します。

普通に、前回からの続きです。

「そういえば、オーナー。起業のことは一旦脇に置いて、実績解除の話をしてもいいですか?」

「むしろ、そっちを脇に置いてたんだろ」

「すべての物事は表裏一体ですから」

「まあ、家捜し中じゃ余裕がなかったってのは分かる」


 ここ最近なかった、運営からの実績解除のお知らせ。

 さすがに、初めてポーションを飲んだとか不動産を手に入れたという実績はないらしかった。


 もしかすると、ガチャこと《ランダムボックス》の神引きが、引越祝いのつもりだったのかもしれない。


 ……適当に言ったけど、あり得なくはないか?


 拠点がないのに世界樹の種とかもらっても扱いに困るし。そして、世界樹の助力がなかったらメフルザードは倒せなかったし。


 紋章の消えた左の拳を眺めつつ物思いに耽っていると、エクスが


「まず、吸血鬼を退治したことでヴァンパイアハンターの実績が解除されました」


 なるほど。レイレイは何人いても困らないもんな。まあ、俺はビシャモン使いだったけど……もちろん、格ゲーの話ではない。


「特典は、《銀の精神(こころ)》。魅了や支配の能力への耐性を得るスキルです。もちろん、吸血鬼以外からのもですよ」

「それは地味に使えるな」


 魅了とか支配、ダメ、ゼッタイ。


「これは、勇者の指輪(アインヘリアルリング)を通してカイラさんと綾乃ちゃんにも効果が及びます」

「当然だな」


 だって、とどめ刺したの本條さんだし。


 それはいいんだけど……苦労した割には、しょぼい。しょぼくない? 使えるのは間違いないんだけど、やっぱ地味というか。


「ふふふ。オーナー、まだエクスのターンは終了してないですよ?」

「なんだとエクス」

「楽しそうね、二人とも」

「同時に、真祖殺しの実績が解除されました」

「あんのかよ、真祖殺し」


 エクスが、ちょっとドヤ顔でうなずいた。


「特典として、吸血鬼の特性を得られるそうです」

「ほう。怪力とか?」

「吸血鬼といえば、先ほどの魅了もそうですね」

「その通りです。他に、動物の使役、霧化、飛行、生命力の吸収、超知覚力、目からビーム……いろいろありますよ」


 目からビームは、どうなんだよ。吸血鬼あんまり関係なくね?

 というか、真祖を狩り尽くして全部の能力を得たら、『おまえが、新たな真祖となるのだ……』みたいな展開になる。ならない?


「動物の使役もできるのね」

「意外なチョイスだ」


 ニンジャだし、そうでもないのか?


「偵察や情報収集に使えそうでしょう? これから商会を作るのであれば、必要になるわよ」

「一理あるけど、微妙に誤解されている気がする」


 やるとしても、異世界貿易会社だよ?


「……それで、これからどうしようか」


 実績解除のスキルは今すぐ選ぶ必要もないらしいので、現実を先に処理しなければならない。


「どう、と言いますと……?」

「本條さんは、いつ頃家に帰るのかとか」

「え? 私だけ、向こうの家に戻るのですか? なにか、リディアさんに報告することが?」

「違うよ。実家だよ、実家」

「実家……?」


 きょとんと首を傾げる本條さんは魅力的すぎたが、本人はまったく意図していない。まあ、だからこその可愛さなんだが。


「家ですか……。家、ああ、家ですね」


 ようやく理解した本條さんだったが、直後、新たな疑問にぶち当たる。


「私って今、どういう状況なんでしょう?」

「そう改めて聞かれると、俺もよく分かんなくなってきたな」


 ええと……。


 始発で帰宅途中にトラックにひかれて異世界行って、オーガをどうにかするためにペットボトルを買いに一旦戻ってきたんだよな。


 それが終わってから、なぜかカイラさんも一緒にこっちに来て、コンビニで買い出しした後に、夜勤へ行った。


 翌朝、その帰りに本條さんと出会って、ゾンビっぽいのから逃げて、買い物したりラーメン食べてからメフルザードと遭遇した。


 ……なので、今はその直後。二日? 地球だと、まだ、そんなもんしか経過してないの? なんかもう、半年近く冒険してた気分なんだけど。


 あー……。


 駄目だ。これは駄目だ。


 エクスの言う通り起業するかは別にして、会社勤めなんて絶対できないわ。生活リズムというか、二重生活にしても乖離しすぎてどうにもならない気がする。


 って、今は、本條さんだ。


「とりあえず、学校には仮病で休みで、家には途中で具合が悪くなったけど学校には行った……って連絡をしてたはず」

「……そうでした。ということは、私だけ帰らなくてはならないということですか?」

「ミナギくん、アヤノさんもこの家に泊めてあげたら?」

「止めてください。死んでしまいます」


 女子高生が外泊なんて、どう説明すればいいんだ。


「……早めに、帰ったほうが良さそうですね」

「じゃあ、タクシーを呼ぶから」

「でも、そんなお金……」

「大丈夫、大丈夫。多めに持つようにしてるんだ」


 だって、電車が動いてない時間に呼び出されたら、タクシーで行くしかないからね。あとから精算されるけど、それまでは自分で立て替えないといけないからね。となると、現金が頼みだからね。


 順番通りじゃねえか。なにがおかしい。


「あの……。ありがとうございます。甘えさせていただきます」

「気にしなくていいよ。パーティ財産から支払ったものと思えばなんの問題もないし」

「もうひとつ、お願いがあるのですが……。その……秋也さんの連絡先をですね……」

「あ、そうか」


 とりあえず、電話番号とメアドでいいかな。本條さん、スマホ持ってないっぽいし。


 ……ん? ちょっと待った。


 メフルザードは倒したし、もう、本條さんと関わる――


「はい。じゃあ、オーナーの個人情報を伝えますからメモしてください」

「大丈夫です。記憶力には自信がありますから」


 ――まあ、第二第三のメフルザードが出てこないと限らないしな。あっちの家は本條さんの物でもあるし、ここでお別れってのはなしか。


「出身は、長崎県。年収は……もう、必要ないですね」

「その情報自体が必要ないよね!?」


 事実確認だか自己欺瞞だかをしているうちに、俺の個人情報は漏洩しきってしまった。





 本條さんは、タクシーで帰っていった。

 カイラさんとタブレット……エクスも、その付き添いでタクシーに同乗。


 ついでに、不審者がいないか周囲を見回ってくるということだ。


 というわけで、俺は家に一人。


 ようやくシャワーを浴びて一息ついた俺は、ベッドに寝っ転がってスマホでゲームを始めていた。

 幸いにしてAPが溢れてはいないが、今はイベント中。少しでもぽちぽち周回を進めないといけないのだ。


 仕方ないね。普通のクエストじゃ素材ドロップしないからね。

 あまりにも落ちなすぎて、初期は、オーバーキルが発生するとかドロップ率が上昇するとか、幸運のステータスが高いキャラをパーティに入れておくと素材が落ちやすいなんて都市伝説も発生してたぐらいだ。


 まあ、今はそこまで躍起になって頑張る必要はないんだが……。


 ……やばい。イベントガチャ礼装は、どれをつければいいんだ? 久しぶり過ぎてまったく憶えてねえ。攻略サイト見なきゃ。


 企業系の攻略サイトは広告がうざすぎてアクセスしたくないんだが、背に腹は代えられない。もし、メフルザードがモバイルアンカー広告を撲滅するからと勧誘していたら、歴史は変わっていたかもしれないな。


 そうして脳死周回を続けていると、脳のリソースが余って他のことに意識が行く。


「起業……社長か……」


 声に出してみても、その現実感のなさに違和感しかない。

 どれくらい現実感がないかというと、異世界転移で大冒険とか吸血鬼と死闘を繰り広げたってぐらい。


 嘘くさすぎて笑える。


 でも、夢オチとかそんなちゃちなものじゃないんだよなぁ。


 本條さんから告白されたのも。


「そもそも、の差がねえ……」


 年齢はダブルスコアでも足りない。ダブルクロス(裏切りを意味する言葉)じゃない、ダブルスコアだぞ。

 そりゃ、何年かすれば犯罪状態ではなくなるだろうけど、この年の差ってのは一生ついてくるはず……だけど……?


「……そういえば、吸血鬼の特徴には不老ってあるよな」


 もしかして、年の差すらも克服できてしまうのか?

 そもそも、若返り的なスキルがないとも限らないんだよな……。


 障害がなくなったら、俺は……?


「あいたっ」


 ボーッとしていた俺の顔に、スマホが降ってきた。言うほど痛くはないけど、びっくりするんだよなぁ。


 ……よし。


 考えても仕方ないことを考えても仕方ない。なるようになるだろ。メフルザードだって倒したんだ。どうにかなるって。


 後ろ向きに前向きになったところで、玄関から鍵を開ける音が聞こえてきた。


「ミナギくん、戻ったわよ」

「オーナー、ただいまです」

「ああ、おつかれ」


 問題なかったみたいだ。


 心配はしていなかったが、結果がはっきりするとほっとする。


 起業とか、世界樹とか、向こうでの活動とか。

 いろいろあるけど、みんなと一緒ならなんとかなるさ。


 スマホをスリープにしてベッドから起き上がり、今の俺にとっての現実を出迎えにいった。

第一部完に伴いたくさんの感想や評価をいただき、ありがとうございました。

日間ランキングにも乗ることができましたので、お礼の投稿です。


作者は、感想や評価やPVが増えると更新しなきゃとプレッシャーがかかる生物なので、

軽率に感想とか評価をつけるのはWin-Winですよ、Win-Win。カーズ様もそう仰ってます。


というわけで、またこんな幕間的な話が更新されるかもしれませんが、第二部をお待ちいただけますようお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魅了とか支配、ダメ、ゼッタイ。 じゃあ魅了して交配しよう! ボーッとしていた俺の顔に、スマホが降ってきた。言うほど痛くはないけど、びっくりするんだよなぁ。 あるある
[一言] 3日で85話まで一気読みしました ワクワクして次が楽しみで仕方ないです 無理せず頑張って連載を続けてくださいませ
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