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タブレット&トラベラー ~魔力課金で行ったり来たり~  作者: 藤崎
第一部 勇者(アインヘリアル)チュートリアル

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76.第二回異世界女子会

冒頭部分は三人称。

それから、あとがきに更新に関するお知らせがあります。

「はい。そんなわけで、今日はお疲れ様でした」

「おつかれさま……です?」

「確かに、いろいろあったわね」


 グライトの冒険者・薬師の両ギルドから贈与された屋敷。

 海から帰ってきたその日の夜、本條綾乃に割り振られた一室に、吸血鬼リディアを除く女性陣が集まっていた。


 ベッドと、最低限の家具しかない部屋。

 綾乃とカイラはそこに並んで座り、テーブルの上に置いたタブレットからエクスが浮き出ていた。


 飾り気のない光景。


 しかし、華やかさにおいては、高級ホテルのスイートルームにも劣らない。それほどまでに、集った女性たちの容姿は際立っていた。


「こんな日に集まってもらったのは他でもありません。そろそろ、次の段階に進む時が来たのです」

「カイラさんが仰っていた通り、地球に戻って吸血鬼と決着を……ということですね」


 若々しい美貌に決意を浮かべ、綾乃は膝の上に載せた拳をぎゅっと握った。


 元々、あの吸血鬼は彼女が目的。他の二人を巻き込んでしまったという悔恨は、常に綾乃の胸の内に存在していた。


 その因縁に終止符が打てるとなれば、気合いも入ろうというもの。


「それもありますが、そっちよりもよっぽど強敵がいます」

「また海に出て、ギルマンと再戦を――」

「――違います」


 エクスに2秒で否定され、カイラの耳と尻尾が力なく垂れる。

 残念ながら当然の回答であった。


「他に、そんな相手がいたでしょうか?」

「それはもちろん、オーナーです」

「ああ――」


 果たして、それはどちらがあげた声だっただろうか。

 とにかく、否定の声が出なかったのは確か。


「というわけで、綾乃ちゃん」

「は、はい?」

「明日は、オーナーとデートです」

「ででででで、デートですか!?」


 うなじまで真っ赤に染めた美少女が、挙動不審に視線をさまよわせ、指をもじもじとからませる。

 もちろん、それで彼女の魅力が減じることはない。


 逆に、見る者を笑顔にさせる。


 本條綾乃は、そういう少女だった。


「そして、デートの最後に告白をしてもらいます」

「はい。告白ですね」


 それは当然の流れと言わんばかりに綾乃はうなずき……。


 直後、ぴきりと固まった。


 理解できない。

 否、理解はできても信じられないのだ。


「……残酷で薄情な様子?」

「それは、酷薄です」


 予想済みだったのか。エクスは冷静だった。


「まあ、十中八九、受け入れられることはないですが」

「それは……きっとそうでしょうけど……」


 うつむきながら、綾乃は言葉を絞り出した。

 ベッドに並んで座るカイラも、痛ましそうにうなずいている。


「ですが、喜んでください」

「それはさすがにちょっと無理じゃないかしら?」

「告白をしてもオーナーは逃げない。その程度には、関係が進んでいるという証拠なのですから」


 かつて、エクスは言った。


『言葉ではっきり言ったり迫ったりするとオーナーは逃げ出す可能性が高いです』


 と。


 それが解消された……とまではいかないが、その程度で逃げ出すような関係ではなくなった。

 そのことを、エクスは言祝いだ。


「戦場は整えられました。ここからは、オーナーに攻勢をかけていくターン。いえ、攻勢ではないですね。大攻勢です」

「ええと……。ですが私でいいのでしょうか?」


 隣に座るカイラの顔色をうかがいつつ、綾乃は尋ねた。というよりも、確認に近い。


「恋愛方面で一番情緒が育っているのが、綾乃ちゃんですから」

「あ、はい」


 カイラもミナギを慕っているのは間違いないが、純粋に恋愛感情だけかというと微妙なところでもあった。

 それが悪いわけではないが、最初に迫るのが家令を自任する彼女では誤解を招く可能性が考えられる。


 それは避けたいというのが、エクスの判断。


「それに、《ホールディングバッグ》用の鞄を買いに行くという約束も取り付けていますから」

「そうでした。でも、明日ですか……?」


 話は分かったが急すぎるのではないか。

 少しは心の準備をする時間が欲しい。


 そんな綾乃の主張に、エクスは正面からは答えない。


「今まではナイフとワインでしたが、世界樹ちゃんの実からちょっとよさげな鞄とか出てきたら、どうなります」

「明日、行きます」


 綾乃が、力強く言い切った。





「いやぁ、綾乃ちゃんとのデート、楽しみですね!」


 露骨なエクスの挑発。

 しかし、俺がそれに乗ることはない。


 今の俺は冷静だ。


「本條さん用の鞄を買いに行くだけだよ」

「まあまあ、オーナー。そう限定せず、ゆっくり見て回ればいいではないですか」


 グライトの屋敷のリビング。

 本條さんの準備を待ってソファーに腰掛ける俺へ、エクスがなだめるように言った。


 でも、本心かどうかは微妙なところだ。なんか、粘度の高い笑顔を浮かべてるし。


「せっかく、世界樹ちゃんからデート服もプレゼントされたんですから」

「サイズぴったりなの、若干引くんだけど……」


 三日目のログインボーナスは、エクスが言う通り服だった。無理やり着せられた……というか、今も着ているので、鑑定はしていない。


 どんな服かと言えば、レイピアを使って戦いそうな服というか……。

 実写映画の三銃士みたいな、黒いジャケットとシャツに同じ色のズボンにブーツ。飾りのボタンというかリベットがたくさんあって、格好いいのは否定できない。


 生地も仕立ても良く、着ていて息苦しさがほとんどなかった。


 今までずっと着ていた吊しのスーツよりも格段に上……というか、比較にならない。


「でも、俺には似合ってないというか、おしゃれ上級者向け過ぎじゃないか?」

「いつまでもスーツを着ているよりは、全然ましですよ」

「それを言われると弱い」


 ミラージュマントとの親和性も、こっちの服のほうが上だしなぁ。


 という具合に、似合わない服を着せられているこの状況が、俺を冷静にさせていた。


 それに、男女――俺と本條さんが一緒に出かけるという状況を茶化したくなる気持ちは分かる。分かるけど、素直に受け入れられるかというと、ねえ?


「いろいろあって、グライトの街の観光もできていないではないですか」

「それは一理あるな」


 というか、異世界に来てから観光とかまったくしてないよな。やることを優先してきた結果だけど……。


 ……あれ? 俺、異世界でも社畜すぎ?


「観光でもして、決戦前に英気を養うというのもありか……」


 そう、決戦だ。メフルザードと、いい加減決着を付けるんだ。

 これ以上先延ばしにすると、俺が社会復帰できなくなりそうだからね!


 基本ラインは、失墜の聖騎士(ネフィリムガード)戦と同じ。

 俺とカイラさんでメフルザードを足止めし、《水鏡の(まなこ)》で増幅した本條さんレーザーでとどめを刺す。


 未来予知の再現をしつつ、最高火力を叩き込む。


 これ以外に、そして、これ以上の手はない。


 なお、現場である喫茶店への被害は考えないこととする。


 メフルザードの持ち物らしいし、仕方ないね。


「先に鞄を買ってから、ちょろっと見て回るか」

「いろいろ見て回って、ついでに鞄でも買いましょう」

「……ん?」

「……は?」


 本條さんを待つ俺とエクスが、顔を見合わす。

 今、すさまじい溝を感じたな。


「はあぁ……」


 デフォ巫女衣装のエクスが、わざとらしいくらい大げさにため息を吐いた。

 呼吸なんかしてないのに、こういうところは、とてもそれらしい。


「オーナーには、買い物を楽しもうという気持ちはないんですか?」

「事前に下調べして、買う時は一瞬」


 買い物って、そういうものでは?


「これが、カルチャーギャップってやつか」

「違いますが、鞄を買うという目的は一旦忘れてください」

「いや……」

「忘れてください」


 俺は無言でうなずいた……うなずかされた。


 エクスさん、ちょっと圧が強すぎませんかね? そんなプレッシャー出してたら、天パに速攻で感知されちゃうよ?


「代わりに、《初級鑑定》は常時こっちで動かしておきますから。掘り出し物があったら、通知でお知らせします」

「それ、どういう交換条件だよ」


 まあ、あれか。

 本條さん第一に行動しろってことだよな。


 こっちの世界なら通報される心配はない……はずだ。


「秋也さん、お待たせしました……」


 今日の方針が再設定されたところで、リビングに本條さんが戻ってきた。

 ソファーから立ち上がり、振り返って本條さんを迎え入れ……絶句する。


「……どう、でしょうか?」

「う、うん……」


 ディアンドルに似た民族衣装風の服を身にまとった本條さんは、簡単に言うとすごかった。

 容姿への形容に使う言葉ではないかもしれないが、他に表現のしようがない。


 これが普通の美人なら、どうしてもコスプレっぽさが残ってしまう。要するに、個々の要素はいいのに、調和していない――似合っていないのだ。


 そんな現実との微妙な折り合いの悪さは、本條さんには存在しない。


 なぜなら、衣装のほうが着用者に奉仕をするからだ。


 要するに、美人はなにを着ても美人なのだ。


「そろそろ、なにか言ってあげないとアヤノさんも困ってしまうわよ」

「あ、うん……」


 本條さんと一緒に戻ってきていたカイラさんに促され、本條さんに声をかける。


「とても、よく、似合ってます」

「はい。それでは、行きましょう!」


 実にほめられ慣れた様子で、本條さんが受け止めてくれた。

 本当にほめられ慣れているんだろう。実に自然。


 俺としても、あっさり流してくれたのは実にありがたい……はずなのだが。


「いやぁ。綾乃ちゃん、とてもきらきらしてますねえ」

「まったく、スルーできてない」


 きらきら(物理)すぎる。


 俺にほめられてそんな嬉しい……というか、やっぱ、《勇者の祝福》の判定がばがばすぎるだろ。


 いや、それよりもだ。


 そんなきらきらさせたまま、街に行くの……?

メインのPCが起動しなくなりました。

いろいろやったんですが、BIOS画面も出てこない状態です。


だいたい書き終えているのとサブのノートがあるので次回は更新できそうですが、その先はちょっと分かりません。

ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。

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