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タブレット&トラベラー ~魔力課金で行ったり来たり~  作者: 藤崎
第一部 勇者(アインヘリアル)チュートリアル
67/225

67.引くべきか、引かざるべきか

「方針を整理しましょう」


 俺と本條さんの間でエクスが人差し指を立てて、世界に秩序をもたらした。

 ところで、白衣に着替えているのは、女教師を意識しているので?


「短期的――メフルザードを倒すためにスキルやアプリを購入するのか。それとも、中長期的な視点で石を投資するのか。まずは、どちらにすべきか決めるべきでしょう」

「そう言われると、焦点が明確になりますね」


 エクスのまとめに、本條さんは長い黒髪に指を絡ませながら首肯した。


「後者であれば、単に保留とするだけ。議論の必要もなくなります」

「そうかな? 戦闘用じゃないけど、戦闘で役に立つのもあるかもしれないじゃん?」

「中途半端は良くないと思います」

「……正論だ」


 俺は諸手を挙げて降参した。

 こっちに理がないわけじゃないが、議論をいたずらに難しくするだけというのは認めざるを得ない。


 あの褐色ショタ吸血鬼をどうにかしないと、日本で身動きが取れないというのは厳然たる事実なのだから。


 でも、無駄遣いしないで貯蓄しましょうねと、言われているような気もするのはなぜなんだろう?


「では、対メフルザード戦を想定したスキル・アプリの選定をしていきましょう」

「これ、カイラさんがいるところで話したほうがいいんじゃ」

「話を進めておくのは悪くないことですし……」


 一度言葉を切って、少し言いづらそうにしてからエクスが続ける。


「外見に騙されそうになりますが、ぶっちゃけわりと脳筋ですよね」


 主語を省いて。


 はい! この話終わり!


「こっちで選択肢を絞ってから話を持っていったほうが、カイラさんのためにもいいよな」

「ですです。さすがオーナー。エクスの言いたいことを、ばっちりまとめてくれました」

「その自己欺瞞は、必要なのでしょうか……?」


 要るよ。要りまくるよ。


「大別すれば、攻撃と防御ですね」

「基本だな」


 攻撃は、本條さんのレーザー魔法とリディアさんのポーション。

 防御は、基本《渦動の障壁》頼みかな。ヴェインクラルの一撃にも耐えたんだし、信頼していいはずだ。


「そうなると、本條さんの魔法を強化するなにかがあればいいのかな」

「それは……ちょっと難しそうですね」


 アプリのリストを確認してから、エクスが残念そうに言った。

 存在しないのか、存在するけど高いのかは分からないが、


「間接的に強化ということでしたら、《ステルス》というアプリがあります」

「段ボールに隠れたり?」

「段ボール箱ではありませんが、透明化できるスキルです。基本持続時間30分で、攻撃したり走ったりと、激しい運動をすると解けてしまいますが、一回石1,000個で使えます」

「地球に戻るときは、事前にかけておくのはありかな」


 不意打ち効果が期待できる。


 本條さんの魔法そのものはともかく、レーザー魔法に関しては別に心当たりがあるから、そっちを実験だな。


「なぜ、段ボール箱なんでしょうか?」


 本條さんは、そのままの君でいて。


「あとは、血で作ってくれるポーションを命中させるための手段の確立でしょうか」

「ただ単に投げるだけじゃ……ダメか」


 相手は、あのメフルザードだもんなぁ。戯れに食らってくれるかもしれないが、それを前提にしないほうがいい。


 それに、あっさり復活してきたのは、軽いトラウマだ。メフルザードを前にして、冷静に仕掛けられるかは分からない。


 まったく、せっかくカイラさんが真っ二つにしたのにさぁ。そこは、空気読んでほしかった。


 とにかく、まったく底がしれない。なにしろ、攻撃される前に逃亡を選んだからな。


「とりあえず、《投擲術》というスキルはありますが……」

「ピンポイント過ぎる」

「そうですか? 投げ槍は人類がマンモスを滅ぼした強力な武器と本で読んだことがありますけど」


 それは正しい。


「でも、今の俺たちならマクロなり魔法を使ったほうが強いよね」

「……確かに、その通りです」


 さすがに、ポーションを命中させるためだけに取るのはコスパが悪い。

 そして、《渦動の障壁》と物理攻撃は排他利用。投擲も、その例外にはならないのだ。


「液体だったら、《踊る水》で操作できるんじゃないかな?」

「なるほど。実験は必要ですが、エクスも可能だと思います」

「……あっさりと新スキルが不要になったぞ」

「エコですねぇ」


 エコというよりは、ダイエット食品を食べるよりも、ちゃんと運動をしたほうが痩せるという真理に近い気がする。

 ちなみに、エナドリ生活だと、意外と痩せない。


「ですが、ポーションに関連するスキル? ですか。その発想は悪くないのではないでしょうか。今まで無縁だった分、思わぬ鉱脈が眠っているかもしれません」

「一理あるな」


 俺の求めに応じ、エクスがスキルを検索しておすすめを探してくれる。

 この電子の妖精に対して、「お前を消す方法」とかヘルプで検索をすることはありえないな。


「ポーション関連だと……《魔法薬効果遅延》というスキルがありますね」

「効果遅延? 延長じゃなくて?」

「はい。先にポーションを飲んでおいて、一時間以内の任意のタイミングで効果を発動させることができるというスキルです」

「……複雑ですね」


 ゲームにはあんまり触れてない本條さんは頭上に疑問符を浮かべていたが、俺はわりと直感的に理解できた。


「先にHPを回復する……要するに傷を癒すポーションを飲んでおくと、怪我をした直後に効果を発動させてすぐに治せるってことだな」


 ある種の先行入力かな。


「普通では、なかなか出てこない発想ですね。なんだか上級者向けという感じがしますが、効果は理解しました」

「制限時間があるから無駄になる可能性はあるけど、わざわざポーションを飲む手間が省けるのはでかいな」


 そもそも、メフルザードやらヴェインクラルが相手だと、ポーションを飲む余裕を与えてくれるか非常に疑問だ。


 ……こいつらレベルを想定して生きていきたくはないがな!


「お値段は、石8,000個です」

「買った!」

「即決ですか? 240万円ですよ? 秋也さん、もう少し慎重になったほうが……」

「いやいや。だってこれ、指輪の効果でカイラさんや本條さんにも効果共有できるでしょ?」

「そう……なりますね。さすが、TRPGプレイヤーは一味違いますね」


 笑うなよ。本條さんが見ている。


「そう考えれば、安い買い物だって」

「ですが、往復分の《ホームアプリ》使用料を別にすると、石8,000個払ったら《中級鑑定》取得できなくなりますよ」

「マジかよ」


 今57,000個で、往復分別にすると47,000になって、そこから8,000個引くと……絶妙に1,000個足りねえじゃねえか。いじめかよ。盗賊ギルドからたくさん送られてきてるけど、本当は1,000個とか稼ぐの大変なんだぞ。


「とりあえず、保留にしようか」

「飾らない人ですね」

「そこが、秋也さんのいいところだと思います」


 そうかなぁ?


「他にポーション関連はある?」

「無難に、《魔法薬効果増幅》がありますね」


 分かりやすい。

 デカァァァァァいッ説明不要!! って感じだ。


「ただし、これは《トランスレーション》のように常時働くものなので、指輪の効果共有の対象にはならないですね。代わりに、石5,000個です」

「微妙……」


 まあ、バランスがいいとも言えるんだけど。


 俺だけ強くなっても微妙だ……。


「ポーション関連、あとは作るほうのスキルばかりですねぇ」

「そりゃそうか」


 そうなると、無難で単純に生存力を上げるようなスキルか……。


「テレポート系のスキルってないかな?」

「ファーストーンがあるのにですか?」

「瞬間移動ですか……。あっても、かなり高価ではないでしょうか」

「地球に戻ったタイミングでテレポートしたら、メフルザードから逃げられるかなって」


 状況が状況なので戦うしかないのだが、《ホームアプリ》とは違う方法で離脱できれば、別の選択肢がホップアップする。


「逃げてどうするんです?」

「仕切り直して交渉とか」

「交渉……ですか……」


 本條さんが懸念するのは分かる。だが、まだ続きがあるのだ。


「普通なら交渉の余地はないけど、そこは交渉系のスキルでなんとかできないかなって」

「……それは洗脳なのでは?」


 それで問題が解決するのなら、悪くはないと思う。

 今までの準備が、全部無駄になると言えば、そうなんだけど。


「少し話がずれますが、魅了も吸血鬼の得意技ではないですか?」

「なるほど。対抗手段があったほうがいいかもしれない」

「精神系のスキルですか。いろいろあるんですが……」


 エクスが俺の目をじっと見てから、なぜかうつむいた。


「正直、そうなるとオーナーの性格が積極的になるようなスキルをこっそり忍ばせたくなるんですよね」

「あー」

「あーって」


 なぜ、本條さんまで「ちょっと気持ち分かります」みたいな反応をするのか。


 しかし、ブレインストーミングも、ぐだってきたな。


「もういっそ、ランダムで適当に取得するスキルガチャとかあったら引いちゃいたい気分だ」

「……オーナー、なぜそれを」

「……ほう?」


 あるのか。そういうシステム。

 いや、あの運営だ。むしろ、ないほうが不自然まである。


「なんで、こんなときだけ勘がいいんですか!」

「それが人類の革新だからだよ」


 月のD.O.M.E.で待ってるよ。


「石50,000個で、スキル・アイテムを無作為に5個取得する《ランダムボックス》という機能があります」

「それだけ?」

「……ちなみに、初回は半額です」

「アイテムも混ざってるとか、クソガチャの香りがするんだけど」


 でも、引きたい。


「最低で、払った石の分は保証とか、そういうのないですから。オーナー、止めましょう?」


 初回半額だし。


「半額でも、750万円相当ですよ? 福袋ではないのですから止めたほうが……」


 引きたい。引きたくない?

ここで唐突に展開分岐アンケート。

次回の展開を下の選択肢から選んで感想欄にコメントしてください。単純に番号だけでも構いません。

あ、メッセージとか、TwitterでのコメントでもOKです。

同数の場合は、作者の独断と偏見で決定します。


1.引かない   われわれはかしこいので

2.引く(普通) 一番ネタ的に困るやつ

3.引く(爆死) 現実は非情である

4.引く(神引き)ガチャに神引きなんてありませんよ……。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから


ただ、申し訳ありませんが、結果次第で展開が変わるので一回お休みして、次回は06/14金曜日に更新します。

是非、お気軽に投票をお願いします。

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