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タブレット&トラベラー ~魔力課金で行ったり来たり~  作者: 藤崎
第三部 電子の妖精と世界の秘密
195/225

48.電脳空間へ(作成編)

完成編に続きます。

「なんかすごい、レトロフューチャー感あるな」


 昭和のアニメに出てきそうな丸みを帯びたヘルメット。それから、タブレットへと伸びているコードを眺め、俺はなんとも言えない気分になっていた。


「ミナギくんの前に、適当に捕まえてきた山賊やゴブリンで実験したほうがいいのではない?」

「それは……どうなのでしょう……」


 俺の頭上で交わされる、悪人に人権はない的な会話。本條さんが困っているので、俺は問答無用で【ヘルム・オブ・イメージプロジェクション】をかぶった。


 そして、フェアリーフォームエクスに目配せをする。


「エクスが止めないってことは、大丈夫ってことだよ」

「そうだとは思うけれど、万が一があるではない?」


 心配してくれるカイラさんの手を取り、俺は引くつもりのないことを伝える。


「最初は、必ずあるんだし。もし問題があったら、すぐに戻るから。だよな、エクス」

「はい。オーナーの安全はエクスが絶対に守ります」

「……なら、私たちは見守っているわ」


 最終的には、折れてくれた。


 カイラさんの手を離し、俺はソファに寝そべった。


「ウチらは、一体なにを見せられてるんやろなぁ」

「ええ~? お姉ちゃん、こういうの大好きよ~」


 見世物じゃないんだよなぁと、ツッコミたくなるのをぐっとこらえて横たわったままでいる。

 コードがあるから、ちょっと寝にくい。充電しながら、ベッドでスマホ使ってるときみたい。


「では、オーナー。血圧を測るときのようにリラックスして、ゆっくり深呼吸してください」


 リラックスって言われると、逆に力が入らない? 血圧測定苦手で、絶対にやり直しになるんだよなぁ……。


 とか、余計なことを考えていると、目の前の光景が変わった。


 唐突という言葉すら、脳裏に浮かばない。


 まぶたを閉じていたはずなのに、真っ白な空間に立っていた。そう、寝ていたはずなのに、立っている。


「オーナー、すごいですね。本来なら、自分の姿をイメージして……とか誘導が必要だったはずなのに、一瞬でこちらに来てしまえるなんて。驚きました」

「お、フェアリーフォームじゃないエクスだ」


 ここが電脳空間……の入り口だろうか? どこまでも続く白い空間は、とてもヴァーチャルリアリティを感じさせる。


 そのキャラ作空間らしき場所にいたエクスは、従来通りのデフォ巫女衣装。フェアリーフォームもかわいいが、こっちも実家のような安心感がある。


 どっちにしろ、エクスはかわいい。


「モデリングも、ほぼばっちりですね」


 エクスがパチッと指を鳴らすと、俺の周囲に鏡が現れた。そこに写っている姿は、現実の俺と寸分違わぬ……とまでは分からないが、違和感はない。

 むしろ、【リアリティバブル・スーツ】を着ていることが違和感なぐらい。


 それにしても……すげえな。


 全身をしげしげと眺めながら感心してしまう。


「俺が生きている間に、フルダイブできるようになるなんてな」


 地球を冒険するには遅すぎ、宇宙を冒険するには早すぎる時代に生まれた我々だが、電脳空間の入り口に立つこの瞬間に立ち会うことができた。生きるとはなんと素晴らしきか。


「ふふふ、オーナー。感動するにはまだ早いですよ。ここから、始まるんです」

「ああ、そうだな……」


 これは、ただのガワ(・・)だ。

 いろいろと肉付けしなければならない……のだが。


 やはり、見た目というのは重要だ。


 ゲームだと、ずっと操作することになるんだから、顔がいいキャラのほうがモチベーションは上がる。

 格ゲーでも、性能重視よりは好きなキャラで選んだほうが上達は早いほうに思える。


 なにより、菊地秀行履修済みであれば美形キャラの良さなど語るまでもないだろう。


 しかし、それもケースバイケース。時と場合による。


「とりあえず、顔はただの球体でいいよな」

「オーナー、いきなり攻めますねぇ。確かに、そのほうがエクスの負担は減りますが」

「やっぱりか。じゃあ、もっとモデリングの精度下げようぜ。出始めの頃のポリゴンゲーぐらいに」


 バーチャとか今見るとすんごい角張ってるけど、当時は衝撃的だったんだよ。

 だから、電脳空間であんな感じでもなにも問題はない。そうそう、まだ精巧なフルダイブは人類には十年早かったのだ。


「オーナー!? さっきの感動はどこへ行ってしまったんです!? オーナー!?」

「そうは言うけどさぁ。目的がゲームを楽しむんじゃなくて、エレクトラを張り倒すことだろ?」


 覇王翔吼拳を使わざるを得ないし、和マンチにならざるを得ない。

 CPを獲得するためには自信過剰になったり、敵を作ったり、容貌を悪くしたり、知力を下げたりするのはもはや常識。


「あー……。オーナー、お二人から抗議の声が寄せられてます」

「……なんで?」


 そりゃ、カイラさんと本條さんが同じことをしようとしたら俺も反対だ。

 でも、俺だよ? 俺の顔とかどうでも良くない?


「まあ、スルーしよう」

「いつになく、オーナーが強気なんですけど……。エクスは、パンドラの箱を開いてしまったのですか?」

「というか、電脳空間なんだから手足も必要なくない?」

「オーナー、それですとさすがに連携もなにもないのではないかと……」

「……そうか。ちょっと、突っ走りすぎたか」


 反省。反省。

 効率を追求するのはいいけど、他の人に迷惑掛けちゃだめだよな。


「そもそも、こういう体を持たなくても良くない?」

「おかしいです……。エクスが考えていたのと、違うんですけど……」


 ちょっと困り顔の(かわいい)エクスへ、思いつきを濁流のようにあびせる。


「現実ベースのほうが、動きやすい。それは確かにそうだと思うよ? でも、その分エクスに負担がかかるわけだ。一方、ここをある種のゲーム世界と定義した場合、もっと簡単なヴィジュアルで動かすことができるんじゃないかな? ああ、分かっている。ドット絵じゃまともに動けないんだろう? そこは発想を逆転させて、コマンド選択式の古式ゆかしいバトルシステムを搭載すればいいんじゃない? どうせ、エレクトラをこっちの法則(ルール)に組み入れるんなら一石二鳥だと思うんだけど。いっそ、世界をテキストアドベンチャーみたいな世界に定義し直すのはどう?」

「ええと……。はい……一理あるのが厄介ですね!?」


 ちゃんと理解してくれたらしい。

 やっぱり、エクス優秀。


「言いたいことは分かりました。要するに、世界の解像度をもっと下げろということですね?」

「一言にまとめると、そうなるかな」

「もっともな提案だとは思いますが、エレクトラを引きずり込めるかがなんとも言えないです」

「そうなのか……。元々の電脳空間の設定からかけ離れすぎてるからとか、そういう理由? それだと確かに、旨味がないか」


 さすがに、ちゃぶ台返しはマズかったか。


 反省。反省。


「よし、分かった。とりあえず、電脳空間もある程度は現実と同じ感覚で動いたほうがいいわけだな」

「そうですね。現実世界の鏡写しみたいなものだと思っていただければ」


 ふむふむ。マトリックス系だと思えばいいのか。人はいないけど、エージェント・スミスことエレクトラはいると。


「じゃあ、その方向で考えていくか」

「あっさりと方針転換しましたね」

「今ある程度、砂を吐いたから問題ない」

「アサリですか」


 少なくとも、タタミではないな。


「まずは、攻撃手段を決めよう」

「普通、そこからですよね?」

「人による」


 ポイントが足りなくなってからマイナス特徴で確保するのって、じり貧になりやすいんだよね。使わなければ、後で戻せばいいだけだし。


「基本的に、現実の俺の能力を引き継げるってことでいいんだよね?」

「はい。削れば、その分、他に回すこともできますが……」

「まあそこは、一旦置いておこう」


 俺の能力と言えば、《水行師》のマクロがメインだ。

 本條さんとの連携もあるし、それを外すのは悪手だろう。


 あ、待てよ。電脳空間でレーザーはだめとかだと、どうしようもねえな。


「本條さんの光の魔法も、こっちで問題なく使えるよな?」

「はい。むしろ、現実よりも有用かと」

「よしよし。じゃあ、《水行師》は続投だな」

「それを外すことを考えていたんですか」

「ゼロベースで考えたほうがいいかなと」

「確かに、オーナーが前衛系になることも不可能ではありませんが」

「そこまでの変更は、メリット薄いかな」


 でも、そうなると逆に難しいな。

 現実のスキルやアプリを残しつつ、強化を図らなくちゃいけないわけだから……。


 ……そうか。


「俺自身がエクスになればいいんじゃないか?」

「オーナー、一体なにを?」

「そんな変なこと言った? 狂人を見る目で見られてる気がするんだけど……」

「外では、リディアさんがお腹抱えて笑ってますよ!?」

「訴訟だな」


 言葉とは裏腹に、周囲の鏡に映る俺は笑っていた。

 バグじゃない。ちゃんと、俺の感情とリンクしてる。


 すごい技術だ……けども。


「これ、現実の俺がほとんどコピーできてるのはすごいけど、最初に言った通り表現力削れば余力は生まれるよね?」

「それは、間違いありません」

「そこで、SDキャラ化だよ。キャラクターの解像度を落としてリソース確保。ついでに、カイラさんに常時ひっついてたら防御リソースも浮くじゃん?」

「無茶苦茶な意見なのに、利があるのがなんとも……って、外で裏切りが発生しましたよ」


 カイラさんが手のひら返したかな?


「それが難しければ――」

「別に、技術的な問題の話はしていないのですが……」

「――例えば、カイラさんか本條さんの装備のなにかになるという選択肢もある」

「無機物ですか」

「そうそう。インテリジェンスソードの亜種みたいな感じ」


 カイラさんなら、マフラー。本條さんなら、魔道書かな?

 これは、どっちでもいい。


「どっちにしろ、人間捨てていません?」

「いや、だって。俺の能力に肉体必要ないじゃん」


 それに、ほら。機械の体を手に入れるはずが、ネジにされるとかそういうわけじゃないんだから。


 全然、問題なくない?

まだ、節約したリソースでミナギくんがどんな能力を取るか決めていません。

感想欄とかでご意見をいただけると、反映できるかも……。

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― 新着の感想 ―
[一言] インテリジェンスソード系の無機物という事であれば、 ミナギ君なら「よし、サークレットになろう。美少女もシーフ系もいるし」というカーラ一直線な案が出そうですね。 解像度を落としつつ水行師の能…
[一言] エンジェルパック、もしくはカレンデバイス改めミナギデバイスかな? チームR-Type入りする素養があるのでは?……なんて言われたら流石に躊躇しそうだなぁ
[一言] 確かに、肉体力が求められないなら、ひたすら小さくして被弾を減らすか、防御重視な形にするか。超合金製の球体とかになって、カイラさんに装備して貰うのが効率いいんじゃない?
感想一覧
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