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タブレット&トラベラー ~魔力課金で行ったり来たり~  作者: 藤崎
第三部 電子の妖精と世界の秘密
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19.エクスの武器?

「その様子を見ると、上手くいったようやな」

「はい。お陰様で」


 地球からオルトヘイムに戻った直後。

 屋敷のリビングで別れたリディアさんが、再会した直後“にやぁ”とやや粘着質な笑顔を浮かべた。


 それに比べて、本條さんの無垢なことよ。


「そか。なら、解禁やな」

「解禁……?」


 ソファに座って指輪を入れ替えつつ、本條さんが小首を傾げた。

 かわいい。


「なにか禁止されていましたか……?」

「避妊薬ぐらい、いつでも作ったるで?」

「そこ、詳しくお願いします」

「なんで、エクスが反応してるんだよ!?」

「止めないでください、オーナー!」

「殿中でござる、殿中でござる」


 なしなし。

 そういう、後ろ暗い気持ちになっちゃうのはなしだよ!


「そういうのは、ご両親との約束でしないことになってるから」

「からの?」

「そこで終わりだよ」

「ミナギはんは冷静やな。つまらん」

「騒いだら、そっちの思うつぼじゃん」

「せやな」


 せやなじゃない。


「ま、見たい反応は見れたからな。この辺にしといたるわ」

「その台詞、新喜劇以外で初めて聞いたわ」


 首をひねりながら「シンキゲキ? なんなん、それ」と疑問符を浮かべるリディアさんには直接答えず、俺は話題を変える。


「それよりも、二人の本は好評だったよ。すごい、かぶりつき具合だった」

「ふーん、そかそか」


 片眼鏡(モノクル)の位置を直しつつ、リディアさんは軽く流した。

 ……おや? 吹っ切れてる?


「冷静に考えると、意味不明な文字やし心配の必要あらへんやん?」

「それが……」


 冷静になった本條さんが、物憂げな表情を見せる。

 めっちゃ美人だけど、できればもうちょっと早く気付いて欲しかった。


「お母様が、かなり本気で解読に取り組んでいまして……」

「プライベートな時間は、全部注ぎ込んでるレベルらしい」

「遠からず、解読してしまうでしょう。お母様に読まれたら、なんと言われるか」

「確かに、やっつけな部分はなきにしもあらずやけど……ウチはわりといけてると思うねんけど?」


 リディアさんが、なにが問題なのかと逆に問うた。


「……お母様は、かなり厳しいので……不安です」

「ええやん。こっちは、短時間やけど人事は尽くしたんやし」


 堂々としたリディアさんの態度に、本條さんは目をぱちくりさせた。


 でも、これが正解だと俺も思う。


 変に謙遜されるよりも自信作だと言い切って欲しい。

 ほら、一般読者は、そこまで確かな審美眼なんて持ってないからさ。作者がダメだっていったら、そうかなって思っちゃうんだよ。


「でも、秋也さんにもある程度話の筋を予想されてしまいましたし……」

「そら、斬新な話はいくらでも作れるけどな。それが面白いかどうかは別問題やん?」


 世に出した以上、批判は覚悟しなければならない。批判と誹謗中傷は別だし、他人を傷つけるようなそれは厳に慎むべきだが。


 作者というのは繊細だからね。そう簡単には割り切れないんだよ?

 卵運搬クエストぐらい丁寧に扱ってね。


 ……と、景織子さんに直接言えたらいいんだけどね。


 無理なもんは無理よ。


「気を揉むのをやめろとは言わないけれど、読まれるときは読まれるわよ」

「そうですよね。渡してしまったわけですし……」

「振った賽の目を心配するなら、最初から振らなければいいのよ」


 うっ。


 この世界のことわざらしき言葉が、流れ弾になってヒットした。


 そうだ。2D6の期待値は7じゃない。5なんだ、5。

 出目に期待しちゃいけないんだ。成功率90%は五分五分だし、成功率5%はワンチャンあるんだ。


 やはり、固定値は正義。


 それはさておき。


「ちょっと試したいことがあるから、庭に出てくるよ」

「ふふふふふ。ついに! エクスの出番ですね」

「お、なんか楽しそうやな。うちも行くわ」


 というわけで、みんな揃って世界樹がなくなってすっきりした庭へ。

 相変わらず、俺の手から出ていく気配はない。


 いいんだけど……。紋章なしにできませんかね?


「さ、オーナー出しましょう」

「はいはい。焦らなくても、逃げないから」


 うっきうきのエクスに従い、通販で買ったドローンを《ホールディングバッグ》から取り出す。

 俺が子供の頃だったら、ラジコンヘリとか言われてただろう。


 男の子が大好きなやつだ。


 すでに向こうで充電をして、準備は万端。

 俺が子供の頃だったらニッカド電池を使っていただろうし、ランニングコストもとんでもないことになっていたはずだ。


 それが十機も。


「さあ、行きますよ」


 たくさんのドローンが、軽やかな音を立てて空へと飛び立つ。


「本当に飛ぶのね、あんなに小さいのに……」

「小さいから飛ぶというか、対抗しなくていいからね?」

「ほお。これは、面白いな」


 カイラさんから鋭い視線を向けられたドローンたちは、バラバラに家の周囲へ散っていく。


 まるで、それぞれが意思を持っているかのよう。

 人間では絶対に不可能な並列操作。


 なのに、エクスは平気な顔で飛ばしている。さすがエクスだ。


「あっちでは法律が面倒くさいので試せませんでしたが、こっちは気兼ねなく飛ばせていいですね」

「あー。空飛ぶモンスターとかいるかも知れないから。それだけ気をつけてな」

「はい。そこは、《オートマッピング》と連動させていますから心配ご無用です」

「まるで、レーダーのようですね……。軍事方面は詳しくないので、的外れな感想かもしれませんが……」

「いや、俺も同じ感想だよ」


 偵察機かな?

 まあ、どっちでもいいんだけど……。


 これは……。


「なあ、ミナギはん」

「分かってる」


 だから、言わないで。


「これ、普通にやばない?」

「今さらよ」


 10窓に別れて表示される空撮映像。

 タブレットに映るそれをちらりと目にしたカイラさんが、なんでもないと言った。


「そもそも、世に出したら問題なのはあなたもそうでしょう?」

「あー。薬師ギルドのスキャンダルではあるのか。リディアさんは被害者だけど」

「ウチは、精々この街とか島レベルの問題やん。こっちは、世界が震撼する系やない?」

「あ、はい……」


 否定できない。

 けど、そうだ。ばれなきゃいいんだよ、ばれなきゃ。


「どうせ、マジックアイテム島で使うだけだし」

「マジックアイテム島?」

「リディアさんが見つかったあの島のことだよ。ああなる前は、あそこでマジックアイテムが作られていたらしい」

「ほー。そんな島が、精霊力の乱れた場になっとると」


 しばし、ドローンが飛ぶ音だけが響く。


 ああ、いい天気だなぁ。


「……ほんとに行くん?」

「どうせ行くなら、事情を知ってる人間が探索したほうがいいかなって」


 今は浅いところだけみたいだけど、将来はどうなるか分からないし。

 厄ネタなら、さっさと摘み取ってしまおう作戦だ。


「オーナー! 爆弾とかくくりつけて特攻兵器にしません?」

「しません」


 言うと思ったけど、本当に言われてしまった。


「貴重なドローンだろ」

「でも、普通に偵察する分には十機も必要なくないです?」

「ドローンに積める量じゃ、大した攻撃力にならないんじゃ?」

「盗賊ギルドとかに頼めば、小型の爆弾を用意できると思うんですが。魔法の力で、魔法の力で」

「可能性はあるわね。呪いのアイテムも、まだ未鑑定品が残っているし」


 呪いが効かないだろう機械ドローンで、敵に呪いをお届け。


 地獄かな?


「盗賊ギルドに頼まなくとも、リディアさんの薬品でどうにかできません?」

「……できなくはないなぁ」


 本條さんとリディアさんまで!


 ……だけど、そこまで止める理由もなかったりするんだよなぁ。

 やり口が完全にテロリストで、イメージが悪いというだけで。


「くふふふふ。ついに、エクスにも物理的な攻撃手段が……。いえ、ネットワークに依存してる軍隊でしたら、いくらでもやりようはあるんですが」


 これ、もしかしたらなんですけど。


 戦国大名に火縄銃持たせるようなもんじゃない?

次回、呪いの品鑑定会in盗賊ギルド再び。


ポイント評価ありがとうございました。

システム改修されて分かりやすくなりましたので、ご用とお急ぎでない方はぽちっとお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >卵運搬クエストぐらい丁寧に扱ってね。 ペンネームがスペランカー先生だったら絶対繊細に扱われると思うの。 >固定値は正義。 期待値?知らない子ですね。7掛けくらいでちょうどいいんじゃないかな…
[気になる点] 「2D6の期待値は5」って、真に受ける人が出ないといいけど…
[一言] そのうち エクス「野郎、ぶっ殺してやる(キレて地球破壊爆弾を取り出すドラ◯もん風)」 とかありそう そして「ぶっ殺した、なら使ってもいいわよ」 と、冷静にバイオレンスなツッコミを入れるカイ…
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