死を待つ男
男は待っていた。
自分が死ぬのを。ただ座り続けていた。死ぬまで。
その男は生まれてこのかた一度も飯を口にせず、
ただの1度もその足を使い歩くことは無かった。
座ったまま寝て起き何もせず起き続け次第に寝る。
男はそんな生活を過ごしていた。
死ぬのは怖くなかった。ただ生きるのは怖かった。
辛く長い人生の中で死ぬことが報いであると信じ続けた。
生きることの苦しみを男は生きぬ中で感じていた。
男の生活は生活に非ず。ただ死ぬことを待つ。
言わば死活。男は死ぬために生きたのだ。
何度も思考を巡らせて思う。
なぜ生まれたのかと、なぜ死ねぬのかと。
とうとう男にその時は訪れた。
ようやく死ねる。ようやく男は報われる。
男の生が報われた時男は生活がしたくなっていた。