第2部
ふるさとになることが、こんなにも心落ち着くことだとは思わなかった。まるで仕事から疲れて帰って、適温の湯船につかったときのようだった。
ぼくのふるさとはQ県の北の端にあるZ村だった。鉄道はあるけど、一日に10本程度のローカル線。商店街はたったの数十メートル。ファミレスはなく、コンビニは1軒だけ。
子どもの頃の記憶が、だんだんと甦ってきた。川遊びや探検。夏休みに泊まりに来る親戚の子。秋祭りに、盛大な大晦日。クラスの子の名前や顔はパッと思い出せないけど、時間はたっぷりあるから、そのうち思い出すだろう。
とにかく、今は忙しい生活から解放されて、心からうれしい。なんで都会なんかに出て、あれほどあくせく働いたのか、今となってはとても不思議だ。入院中は痛みで苦しんで、後半は強い痛み止めを打たれて眠り続けの状態だった。そういったぼくの人生の諸々を考えると、もっと早くふるさとになってればよかったなぁと、少し残念な思いがわく。
ぼくの目の前に畑が広がる。いや、目の前ではなく、ぼく自身のなかに、ということだろう。この村全部がぼくなのだから。
このZ村の人たち全員が、穏やかに暮らしていければいいなぁ。ぼくは思う。そして、なにかできることがあるのであれば、ぜひともやりたいなぁと思う。