稀代の悪女まっしぐら
大陸の覇者である帝国と軍事大国の県境にぽつんと潜む小国・キャンピアン。
地図上で見れば豆粒程度の小国だが、緑に溢れ、民は豊かな心を持っている幸せに満ちた春の国である。
何処か平和惚けした国、それがキャンピアン。
その日は、キャンピアンが騒然とした。
キャンピアンのお城にて、今、火の手があがっている。
お城に勤める者達の悲鳴と騎士達の怒声。普段の楽しげに弾む声は恐怖に染まり、お城は『反逆者』との戦いに明け暮れた。
燃え盛る炎と青空を隠す火煙をただ呆然と野次馬は城下から眺めていた。
ーーまさかこんなことになるなんて。
それが此度の正直な気持ちだ。
事の始まりはクローディア・デネット伯爵令嬢がアーネスト殿下に近づいたことだ。
十二歳になると貴族は王都にある貴族院という学校に入ることを義務付けられている。
淑女科、魔術科、騎士科、医務科、文官科などがあり、学院で四年間学んだあと卒業を迎える。
そのなかで淑女科を専攻した私は文官科の殿下とは疎遠になってしまった。
だから知らなかったのだ。
文官科を選んだ伯爵令嬢が殿下に言い寄ってることを。
後に分かることだが、かの令嬢は上位貴族に近づくために上流階級の子息が多い文官科を選んだに過ぎないだろう。
クローディア嬢はデネット伯爵が愛人に生ませた子で、貴族院に入る前に引き取ったと聞く。
市井で育ったらしく、貴族らしさがない。
それを逆手に取り、伯爵令嬢らしからぬ仕草と愛嬌で学院の皆を翻弄させた。
殿下もそのうちの一人で、瞬く間にクローディア嬢に入れ揚げてしまった。
庶子だからとクローディア嬢を批判するわけではないが、彼女の身分を弁えない殿下への行動は目に余るものがある。
そして何より、私という婚約者がいながらクローディア嬢に入れ込む殿下は見てて良い気はしない。
毎日憂いを含んだ溜め息をつく私に心を痛めていたのは騎士科と魔術科のイケメン達だった。
彼等のような不細工はクローディア嬢の美学に反するらしく視界に入れることすらしないのだ。
それとは裏腹、目の保養になる彼等に愛想を振る舞く私は、ゴキブリ並みの不細工集団にも優しくすることから『慈愛の女神』なんて呼ばれている。ただのイケメン好きなだけなのに。ああ、心苦しい。
十六歳になり、私は予想通り絶世の美少女に育った。
腰まで伸びた桃花色の髪はウェーブを描き、焼けることを知らない真っ白な肌が眩しい。
ほっそりした華奢な身体だが、胸にはたわわなメロンが実っている。
嘗てお母様は私がお父様似だと仰っていたが、あながち間違ってはいなかった。
何故かいつも不安げに揺れている瞳なんてお父様にそっくりだ。
これっぽっちも不安なんて抱いてないのに、私は動揺が直ぐ目に出てしまう。
頼りなさげに潤む瞳が庇護欲を誘うがいくらキリッと目を吊り上げても全く迫力がなく、女王様みたいなお母様には程遠い。
お母様から受け継いだのは歩く度に揺れるこのメロンみたいなお胸だけ。
こんな頼りない顔だからきっとクローディア嬢にも嘗められるのだろう。
これ以上好き勝手させない!私はアーネスト殿下の婚約者なんだから!そうと決まれば、まずは殿下への説得からだ!よーし、頑張るぞー!
そう意気込む私の前に現れたのは、クローディア嬢を引き連れたアーネスト殿下だった。
何故クローディア嬢まで。
嫌な予感が過り、背筋がひやりとした。
「リザベティ」
「ごきげんよう、殿下。今日はクローディア嬢も一緒なのですね」
「あ、うん」
何処か気まずそうに目を逸らす殿下。
思わず『今日は一緒』なんて毒づいてしまった。婚約者である私の前に他の女を連れてくるなんて。でもそれを言うなら『今日も一緒』だった。
「少し話があるんだ」
「何でしょうか」
涼しげな表情を浮かべても瞳に滲む動揺は隠せてないかも。
「まずは彼女を、クローディアを、君に紹介しよう。彼女はクローディア・デネット、デネット伯爵の娘だ。学院では私と同じ文官科で、」
「存じ上げておりますわ。クローディア嬢は有名ですから」
「そうか、」
「殿下は私に"お話"があるのでは?そんな婉曲的に切り出さず、どうぞ御用件をお話ください」
遠慮がちな殿下の声を遮る。
もっと重要な話があるはずなのに、まるで機嫌を窺うかのような視線。
じっと殿下を見つめると、意を決したように再度その唇は動いた。
「では、はっきり言おう。私は何れ国王の座についたとき、クローディアには王妃として支えて貰いたいと思っている」
「…仰ってる意味がよくわかりませんわ。王妃となるのは、殿下の婚約者であるこの私なのでは?」
「婚約は解消したい」
ーーやっぱり。
薄々感じてはいた。
殿下がクローディア嬢に入れ揚げていると知ってから懸念はしていたから。
でもいざ十年間寄り添った婚約者からそう言われると結構胸に"くる"ものがある。
「私に何処か至らないところがおありでしたか?」
「違うっ。君に過失などなかった。君は今まで私の力になってくれた。何度だって私を助けてくれた。君以上に、王妃となるのに相応しい女性はいないだろう」
「なら、何故ですか」
「私が、ただ私が、彼女を愛してしまっただけなんだ」
眉間に皺を寄せ、目を伏せる殿下。
「確かにリザベティは最高の女性だ。父上が選んだだけはある。だが、心の癒しになるのは……クローディアなんだ」
「……」
「彼女を傍におきたい、これから先、ずっと。そのために、婚約は破棄したい。そしてクローディアを新しい婚約者として迎え入れたいと思っている」
「……」
「ごめん、リザベティ。君じゃダメなんだ」
横目でクローディア嬢を見たけど、睨まれたのは気のせいじゃないと思う。
目を逸らし、揺れる心を落ち着かすためにゆっくり息を吐く。
「そう、ですか」
殿下の言いたいことはよく分かったけどこれは政略結婚。
いきなり婚約破棄など言われても、困る。
私はずっと、クローディア嬢との恋を一時の気の迷いだと信じていた。
学院での多少の"お遊び"はゆるそうと。
ーーでもこうもはっきり『ダメだ』なんて言われた私はどうしたら良いんだろう。
妙な脱力感に襲われる。
別に、必死にしがみつきたいほど王妃の座に固執してるわけじゃない。
ただ、殿下を支えていく義務感があった。殿下の隣に寄り添う使命感があった。
だって"婚約者"だから。
「マリアベル様!アーネスト様はマリアベル様ではなく私と思いあっているんです!これ以上邪魔しないでください!」
「そうね」
「そうです!!ーーは?」
クローディア嬢だけではなく、殿下までぎょっとしてる。言い出したのは殿下なのに。
どうやら殿下にとって私は役不足だったみたい。
折角"婚約者"という"役目"を承ったのに。
ーーそういう意識だったから、殿下の心は離れてしまったのかな。
「婚約解消のお話はお受け致しますわ」
「良いの、か?」
「はい。お話はそれだけですか?」
「いや、」
「お気遣いなく。私に申したいことがあるのであれば、今仰ってください」
言いずらそうに口籠る殿下に目を眇める。
もう、気軽に話せる立場ではなくなるのだから。
「何も今すぐに婚約破棄をしようとは思ってない。出来れば学院卒業間近が好ましい。時期が来るまでは、これまで通り私の婚約者はリザベティということにしておきたい」
殿下の言いたいことを察して頭痛がした。
「私に隠れ蓑になれと。クローディア嬢を余計な誹謗中傷にあわせないために」
「…ごめん」
今まで私のしてきた努力は、クローディア・デネットのために使われるのか。
「君は誰もが認める最高の女性だ。そんな女性を差し置いてクローディアを婚約者にしてしまうと、周囲は黙っていないだろう。学院には多感な時期の子息子女も多い。クローディアが醜聞の的になる事だけは避けたいんだ」
心が締め付けられるような息苦しさを感じた。
でも、それでも聞き入れるようとしているのは相手がアーネスト殿下だからだ。
「…承知致しました」
少し頭を下げてから、殿下を見る。
悲愁の影が差した顔をしてまた謝ってくるから思わず困った様に微笑してしまった。
それからまた少しの時が過ぎた。
少し前から私の隣から殿下の姿が消えていたので、日常にさして変化はなかった。
変わったことと言えば私ではなく、殿下とクローディア嬢のほう。
今の仲睦まじい二人を見ると如何に私が邪魔者だったのか思い知る。まるで防波堤だ。
周囲の目に私達はどう映っているのだろう。
前より、殿下と寄り添うことが多くなったクローディア嬢。"婚約者"でありながら殿下と顔をあわすことがなくなった私。
貴族院の生徒が好き勝手囁いているのは知っている。
同じ淑女科の生徒がクローディア嬢のことを訊ねてきても、笑って誤魔化した。
クローディア嬢の事が耳に入ったのかお母様にお叱りを受けた。
『あんな小娘に奪われるなんて!』『殿下のお心を奪い返すのよ!』と何度も怒られた。
お父様には凄く心配された。そして殿下の浮気に珍しく怒っていた。
そして学院同様両親にもまた、笑って誤魔化した。
殿下はただ、普通に好きな人を見つけただけ。
長年婚約者であった私を捨てるほどに。
それがちょっと寂しかった。
そして厄介ごとは立て続けに起こる。
暫くして、塞ぎ込む私の前に現れたのは宮廷騎士団に所属するオスカー隊長だった。
紅蓮の髪と、切れ長の漆黒の瞳。
体格のがっしりとしたオスカー隊長は正しくイケメンそのものだった。
しかし幾ら武勲を立ててもこの世界では不細工だと罵られて世の女性達から避けられる可哀想な人だ。
そんなオスカー隊長は殿下ではないが何故か私に傾倒している。
貴学院に入学して間もないクローディア嬢が文官科で将来有望そうな男性を漁っている間、私は殿下のいる王宮を訪れては皆が避ける騎士様や魔術師様の顔を拝んでいた。
それなのに妙な噂が流れないのは彼等がひとえに不細工だからである。
この十年間で見事にぶくぶく肥えて横にも縦にも大きくなってしまわれた王太子殿下という美男子の婚約者がいるのに、不細工な彼等に目移りするはずがないという珍妙な理由だ。
無言で見下ろしてくるオスカー隊長に軽い挨拶を済ませ、殿下に御用があるのかと訊ねれば、彼は私に用事があると言った。
オスカー隊長は決意の籠った目を滾らせて、低く唸る。
「…哀れなリザベティ嬢。貴女の憂いはこの私が取り払ってさしあげましょう」
「はい?」
「…もう見ていられないのです。立場を弁えず殿下に言い寄り、貴女のように可憐な女性を傷付けるなんて。許されない大罪だ」
「あの、オスカー隊長?」
「ご安心ください。クローディア・デネットの首は必ずやこの私が取って参りましょう」
ちょっと待て!
何か物凄い勘違いをしている気がする!
「や、やめてください!」
剣を立てて跪かないで!それは神聖な騎士の誓いだって隊長本人から聞きましたけど!隊長の剣は陛下のためにあるんじゃないの!?
眉間に深い皺を作るオスカー隊長は唇を震わせた。
「…私は貴女をお慕いしております。ですから涙で瞳を潤ませながら殿下を見つめる貴女にもう、耐えられないのです。貴女を悩ますあの小娘が憎い。出来る事なら貴女の震える身体を抱き締めたい、しかしそれは殿下のお役目、私が出る幕ではございません。私に出来る事はリザベティ嬢のもとに殿下のお心を戻すことのみなのです」
必ずや、必ずや、クローディア・デネットを亡き者にしてみせましょう!
ーーそう言って宮廷騎士団の証である剣と盾の刺繍が入った紅いマントを翻し、オスカー隊長は去っていった。
「え」
えええええ!
ちょ、何しようとしてくれちゃってんの!隊長がそんなことしちゃダメでしょ!
荒ぶる私の目に映るオスカー隊長の背はもう遥か遠く。
憂いを払うとか言っていたけどそれなら普通に私を攫うとか考えて欲しい。
逞しい筋肉が素晴らしいオスカー隊長のような男前になら大人しく攫われてもいい。寧ろ結婚してほしい。
少し乙女心が疼いたけれど慌てて『ま、待ってー!』と手を伸ばす。
しかし空を切るだけでオスカー隊長は消えてしまった。
首を垂れながら、これからどうしようかと悩む。
暗殺予告をされてしまったが果たして"あの"オスカー隊長が陛下の御意志を無視して剣を振るうだろうか。
一時の気の迷いで口を滑らせただけで王宮に着くまでには冷静になってることを祈る。
それにオスカー隊長の元には優秀な部下である副隊長様もいるし、貴族院時代からのご学友である宮廷魔術師団の隊長様も在らせられる。
私が心配するまでもないだろう。うん、そうだ、きっと大丈夫に違いない。うん、帰ろ。
しかしその日、宮廷騎士団隊長であるオスカー・アイザック率いる騎士団が反乱をお越し、そのなかには宮廷魔術師団隊長の姿もあったという。
翌日まで続いた死闘は陛下直属の親衛隊の活躍により、幕を閉じる。
そして此度の首謀者であるリザベティ・マリアベルは身柄を拘束されて王宮へと連行されるのだった。
なぜこうなった。
◆
陛下は苦虫を噛み潰したような顔をして私、リザベティ・マリアベルを見下ろした。
異様な静けさを見せる謁見の場。
神妙な面持ちのアーネスト殿下の隣に寄り添うのは此度の被害者であるクローディア嬢。
悲しげに顔を歪めているが、口元に浮かぶ嗤笑は隠せていない。
「申し開きはあるか、リザベティ・マリアベル」
「ございません。全て事実にございます」
視界の端でお母様が泣き崩れるのが見えた。
それを支えるお父様も顔色が悪く、胸が痛くなる。
何も弁解しない私に額を押さえる陛下だけど、言ったところで何かが変わるとも思えない。
私がクローディア嬢の命を危ぶませたのは事実なのだから。
反逆者として捕らえられた騎士様と魔術師様達は口を揃えて『リザベティ様のために』と言ったとかなんとか。おい!と思ったが実際そうなんだろうと口を噤んだ。
あのときオスカー隊長を止めておけば良かったのに私はそれをしなかった。
此度の一件は私の過失によるものだろう。
好意を寄せられているとは知っていたけどまさか此処までするなんて。愛って怖い。
きっとクローディア嬢も同じ事を思っただろう。
精鋭とも謳われる宮廷騎士団の騎士様と魔術師様に命を狙われるなんて私なら寿命が縮む。
今回は数で押し切った国王軍が勝利をおさめたが念入りに計画して数を集わせていれば、その命は呆気なく狩られていたはずだ。
そもそも何故お城で騒動になったのかと言うと、何故かクローディア嬢がお城にいたからだ。
クローディア嬢が伯爵領にいたのならオスカー隊長は間違いなくそちらに赴き、伯爵邸を包囲したはず。
オスカー隊長が熱り立っているうちに情報が錯乱し、お城で暴れることになってしまったとか。
『クローディア・デネットの首を取る!』→『城に標的発見!いざ出陣!』→『あれ、殿下の姿もあるぞ?』『殿下も標的なのか?』『なるほど隊長はリザベティ様を苦しめる殿下を引っ捕らえてお仕置きするつもりか』『よし殿下は生け捕りだ!』→殿下とばっちり→『殿下のお命が危ない!』『反逆者だ!』→騎士団を反逆軍認定→乱闘→陛下が腰をあげる→親衛隊とぶつかる。
ーーこういう成り行きらしい。
猛烈に頭が痛い。
騎士団の彼等は今は罪を犯したものが収監される塔に入れられている。
主犯格であるオスカー隊長はと言うと。普通なら処刑も有り得るが、彼がこれまで立てた武勲も考慮して監獄に幽閉されて生涯を終えるのだろう。
果たしてこれから大人しく囚われているのかは知らないが。
それはさておき、リザベティ・マリアベルはと言うと、多数の者が此度の一件には無関係だと唱えてくれた。
お母様を筆頭に無罪を主張したが、クローディア嬢を王妃に添えたいデネット伯爵等が裏で糸を引き、リザベティ・マリアベルが此度の首謀者だと主張した。
どさくさ紛れ、国まで乗っ取ろうとしたことになっている。
処刑だなんだの言い募られてそれは流石に嫌だと思ったが、なんと私は贅沢しなければ数年間は生き延びられるお金とともに国外追放される身となった。
そして最後、陛下から申し開きはあるかと問われて目を伏せ、頭を下げる。
謁見の場の空気が重くなるのを尻目に、騎士様の処罰もそうだけど私にも処罰が甘いなー、なんて思ってしまうが国王陛下はお優しい人だった。そして息子である殿下もとてもお優しい人だ。
お優しくて、ホントに甘い人達。
クローディア嬢の妨害にあわなければきっと私はアーネスト殿下と結婚して、何れ国王陛下になられる殿下を支える王妃としてこの国で一生を終えただろう。
チラッとアーネスト殿下を盗み見ると、今にも何故クローディア嬢に危害を加えようとしたのかと詰め寄ってきそうな雰囲気を纏っていた。
愛しい彼女を暗殺しようとした私を見るのも嫌なのか、それとも私が企てたということが信じられないのか、それは殿下に聞かなければ分からない。
殿下に撓垂れて薄ら笑うクローディア嬢だが、きっとこのままいけば彼女が新たな婚約者に収まり、次期王妃となるだろう。
王妃教育に耐えられるかは兎も角、彼女はアーネスト殿下を本当に愛してるみたいなのでそこは安心だ。
例えどんな理由であれ、愛そうと思っても愛せない私よりもマシだ。
ーー殿下に愛をお返しできなかった。
それだけが心残りだ。
好きになろうとしたけど、好きになることはなかった。
クローディア嬢にはアーネスト殿下をずっと愛せる人であってほしいな、と視線を送ると訝しげに眉を顰めて鼻で笑われた。
しかし殿下の腕に引っ付いて離れないクローディア嬢にホッとした。
密かに思いあう男女を引き裂こうと暗殺を企てた挙げ句、国まで乗っ取ろうと城を混乱に陥れて国外追放となる、王子の元婚約者。
うん、我ながら稀代の悪女みたいな肩書き。
何の申し開きもせず罪を受け入れる私に陛下は告げる。
「リザベティ・マリアベルよ、そなたは公爵令嬢の名にあるまじき罪を犯し、国に刃を向けた。それは次期王妃と声望高くあったそなたでも見過ごす事のできぬ大罪。欲に溺れ、乱れし反逆者、リザベティよ、これより罪を改め、噛み締め、生きてゆけ。誇りあるマリアベルの名を捨て国外追放とする!」
そして私はただのリザベティとして国から追放された。
罪を背負い、ほんの僅かな荷物を持って、私は祖国を飛び出し、スキップしそうなほど身軽い足取りで国境を越えた。




