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ゼーン ~戦火に咲く灰色の花~  作者: ちゅーおー
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はじまり




この世界には天使と悪魔が存在する。と人間は口々に言った。


悪魔は人間の運命に幾度となく干渉し、弄んできた。


対して天使は人間の運命をただ傍観し、手を触れようとはしなかった。


なぜならば天使たちにとって人間に干渉することは忌まわしきことであったからだ。


たとえそれが、死の運命だったとしても。





―――少年は夢を見た


そこは荒れ果てた荒野であった


乾いた風が少年の頬をかすめる


曇った空はまるで少年にのしかかるように重々しく


果てしなく続く荒野は終わりが見えなかった


少年はそこに一人だった


不思議と少年はこの状態を寂しく思わなかった


それが当然かのように


果てのない荒野を歩こうとも


空を見渡そうとも思わなかった


ただ地平線を見つめていた


ふと、先程とは違った風が吹いたように感じた


振り返ると、そこには一人の少女がいた


少女は少年に優しく笑いかけ、一輪の花を差し出した


気がつくと、荒れ果てた荒野は一面美しい草原となっていた


少女が差し出す薄紅色の小さな花が咲き誇っていた


少年は驚きつつも、懐かしく感じた


まるでこの光景を、どこかで知っているかのように


「…忘れないで」


少女が少し首を傾けながら、優しく、少年に話しかけた


少年はその薄紅の花を見つめた


そしてその差し出された小さな花に手をのばした


次の瞬間、強く乾いた風が小さな花をバラバラにしながら持ち去った


少年が振り返ると、そこはまた一面の荒野であった


しかし少年は驚かなかった


それが当然だと思っていたのだから


少女のほうを再び向くと


少女は少し悲しそうな顔をして、口を動かした


ふと、少年の足場が揺らいだ


目の前が暗くなる


どんどん


どんどん


沈んでいく


少年は確かに聞いた


少女のか細く、それでいて透き通った声を


「約束を忘れないで」


少年はわからなかった


約束とはなんのことだろう


だけれども、必ず果たさなくてはならないと思った


少年はまた一人になった―――





翌朝、少年は目を覚ます。




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