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藤原ロングウェイの姉迷作劇場

異世界転生したらロリ姉に甘やかされまくる毎日が幸せすぎてヤバい

なんというか、タイトルの通りです。

書きたくなってしまったので書きました。後悔はしてません。

というわけで、姉の日記念の短編です。

「グスッ……」


 薄暗い部屋で蹲り泣いている子供がいる。

 ああ、あれはだ。幼い頃の俺。

 どれだけ鍛錬しても何のスキルも獲得できなくて、人生を悲観していた時の俺。

 なら、これはあの頃の夢か。

 だとしたら、この後は……


「やっぱりここにいた!」

「……あねうえ」


 小さい女の子が子供おれの前に立っていた。


「どうしたの? 誰かにいじめられたの?」

「……ちがうのです。みんなはスキルをおぼえているのに、ぼくだけなにもおぼえられない。ガーライル家のおとことしてはずかしいのです。きっととうさまもかあさまもぼくをできそこないだとおもっています」

「そんなことないわよ! 父様も母様もマリクのことを大好きよ! もちろん私も!」

「でも……」


 うじうじしてんなーこの頃の俺。


「そんなんじゃダメよ! 元気を出しなさい! 元気があればなんとかなるわ!」

「そうでしょうか……」

「そうよ!」


 今から思えば、どっかのテニスプレイヤー並みに無茶な精神論だった。

 それでも、感謝している。


「もしそれでもダメだったら、ぼくはどうすればいよいのでしょうか……?」

「……大丈夫よ、私がいるわ!」

「……え?」

「マリクが頑張って、頑張って頑張って頑張った結果がダメで。父様も母様もこの世界の人みんながマリクを見放したとしても。私はマリクを見捨てないわ! 絶対!」

「……あねうえ」


 見上げる女の子はとても大きかった。

 確かにあの頃の俺より背は大きかったが、それでももっと大きく見えたのだ。


「だから、一緒に頑張りましょ? お姉ちゃんもマリクと一緒に頑張るわ! 一緒だったら絶対なんとかなるわ!」

「…………ありがとうございます、あねうえ」


 感謝している。

 姉上の何の説得力もないその言葉やくそくに。

 俺は、確かに救われたのだから。






「おーいマリク起きろー。次の時間、外で訓練だぜー」

「……ふぁ~あ。せっかく良い夢見てたのに起こすなよ。あとで奢りな」

「お、起こしてやったのになんつー言い草だ……」

「わっはっは。冗談だよ。ありがとな。」


 俺はマリク・ガーライル。15歳。騎士学校の学生である。

 付け加えれば、この王国の騎士団長の息子にして金髪碧眼、高身長、笑顔の似合うイケメンでもある。

 どれくらいイケメンかというと、毎朝鏡で自分の姿を見て『やばい、俺、今日もイケメンだわ』と呟いてしまうほどのイケメンだ。

 ナルシスト乙、と思われるかもしれないが、仕方ないのだ。

 前世の記憶を持っている俺からすれば、今の俺は『どこの乙女ゲーのヒーローだろう?』ってくらいかっこいいのだから。

 そう、俺はラノベにありがちな転生者です。いぇい。

 まぁそのへんはどうでもいいんだわ。

 とりあえず今は学校で、訓練に参加しないと教官に怒られちゃうからそっちのが重要です。

 駆け足で校舎の外にある訓練場に集まる。


「全員、揃ったか!」

「「「「「はい!」」」」」

「声が小さい!」

「「「「「はい!!」」」」」

「よし、ではいつもどおり訓練を開始する。今日は一対一で模擬戦を行う。配置につけ!」

「「「「「はい!!」」」」」


 一斉に動き出す学友たち。

 お、これはいつものパターンですね。


「おーい、良かったら一緒に手合わせしない?」

「しない」スタスタ

「……」トボトボ


 俺、撃沈。


「あ、よければ一緒に――」

「もう組んでるから無理」スタスタ

「…………」トボトボ


 俺、再度撃沈。


「よけ――」

「あっちいけ。しっしっ!」スタスタ

「………………」トボトボ


(´・ω・`) しょぼーん。

 クソッ、友達がいのないやつらめ。


「教官殿! 余ってしまいました! どうすればよいでしょうか!」

「……また貴様か」


 すごい嫌そうな顔をされる。


「はっ! また自分であります! ボッチであります!」

「……はぁ。仕方ない、俺が相手してやる」

「ありがとうございます!」

「ただし!」

「ハッ! なんでしょうか教官殿!」

「貴様はスキル使用禁止・・・・・・・だ。いいな」

「ハッ! 教官殿は使われるのでありますか!」

「当然使う。文句はあるか?」

「いえ、ありません!」


 教官に向かい敬礼をする。

 すると、周りで剣戟を繰り広げていた学友たちが手を止める。


「きょうかーん! やっちゃってください!」

「ボッコボコにしてください!」

「骨の一本や二本なら全然問題ないです!」

「むしろ腕一本くらいならいっちゃってもいいんじゃないっすか!?」

「アリだとおもいまーす!」

「ねーよ! ふざけんな! ファーック! お前らファーック!」


 完全なるアウェーの中、教官との模擬戦が開始される。


「では、いくぞ!」

「はいっ!」

「食らえ、【中級・重撃】!」


 教官の一撃をかわすと、その剣は地面に叩きつけられる。

 すると、轟音とともに地面に大きな亀裂が生まれた。


「教官殿、殺す気満々でありますね!」

「うるせぇ! こちとら騎士やってんだよ! 学生に負けてたまるか!」


 さらに斬激を繰り返す怒れる教官。

 ちなみに、俺は普段はみんなと仲良くやっている。

 ほんとだ。そう思ってるのは俺だけ、とかのオチじゃない。みんな仲良しだ。

 だが、この時間だけは学友や教官の態度は一変する。

 なぜなら……


「マリク様ー! 負けないでー!」

「マリク様頑張ってくださーい!」

「マリク様ー! こっち向いてー! 手を振ってー!」


 これだ。

 この俺に対する黄色い声援が男連中の嫉妬心を刺激してしまうのだ。

 いつのまにか、訓練場の周囲には多くの女性が集まっていた。

 さきほど申し上げたとおり、俺は王国の騎士団長の息子にして金髪碧眼、高身長、笑顔の似合うイケメンである。

 にも関わらず身分関係無く誰とでも気軽に接する態度や穏やかな紳士っぷりのために女性人気もやばい。

 まぁ実際は転生者だからいまだに身分とかピンとこないし、紳士なのはぜんせのチキンっぷりが抜けきっていないだけだが。

 フツメン以下だと女性にニコッと笑いかけると『なんかこっち見てニヤニヤしてんだけど、ちょっとキモくね?』って感じだったのに、イケメンだと顔を赤く染め『ポッ……』だ。

 この世の不条理を感じたが、今は俺もイケメンなので大勝利。許す。


「よそ見すんなやぁ! 【初級・二連斬】!」


 教官の攻撃を剣でガードすると、一振りで二回斬りつけられたような衝撃を受ける。

 うーん、困った。

 スキルなしでも勝てるけど、そこまでやったら教官の面目丸つぶれだしな。

 かといってわざと負けるのも癪だ。

 いつもどおり引き分けでいきましょうか。

 俺がそう思った時、一際大きな声が響いた。


「マリク、しっかりしなさい! 大丈夫、私がついてるわ!」


 俺の愛しい女性の声が聞こえた。

 引き分けでいこうかと思ったけど、彼女が見ているなら話は別だ。


「……教官殿。申し訳ありません」

「な、なんだ?」

「全力でいかせていただきます」

「ちょ、貴様、待て! スキルは使用禁止と言ったはずだ!」

「はい。ですが、私があの人の前で『頑張らない』という選択肢はないのです……お覚悟を」

「お、落ち着け!」

「大丈夫です。殺しはしませんから。多分。メイビー」

「多分とか言ってんじゃねぇぞ!?」


「……【奥義・破城撃】!」

「【上級・剛盾】!」」


 教官は剣を盾に見立てて防御スキルを発動させるが、それでも後方へ大きく飛ばされ派手に地面に転がる。

 そして、少し遅れて教官の折れた剣が地面に突き刺さった。


「教官殿、ご安心を。みねうちであります。ご指導ありがとうございました!」

「「「「「キャー! マリク様ー!!」」」」」


 俺が地面に倒れ付してピクピクしている教官に頭を下げると、同時に多くの女生徒が俺の周りに群がる。

 大貴族の娘さんから騎士家の娘さん、莫大な富を築き上げる大商人の娘さんなど、権力も地位も金もある美少女たちだ。

 しかし、今の俺にはそんなものは目に入らない。


「よく頑張ったわねマリク!」

「姉上!」


 そこにいたのは、他の女性たちより頭一つ、いや、ひょっとしたら二つ分は低いかもしれない女の子。

 まるで高校生の集団の中に小学六年生の女の子が紛れ込んでいるかのような状況。

 だがしかし。彼女の放つ圧倒的な天使オーラがただの小学六年生でないことを証明している。

 何を隠そう、この女児こそ俺の愛しい姉上、エリスだった。


「やればできるじゃない! さすが私の弟よ! お姉ちゃんの自慢の弟なんだから!」

「姉上が声をかけてくれたおかげです! 姉上がいなければ勝てませんでした! 此度の勝利は姉上の勝利です!」

「そ、そぉ? やっぱり私のおかげかしら?」

「はい!」

「え、えへへ。やっぱりマリクには私がいないとダメね!」

「いつもありがとうございます姉上!」

「いいのよ、マリクのためだもの! 例え火の中水の中よ!」

「姉上ー!」


 姉上を抱きしめ頬ずりする俺。

 そしてその俺の頭をよしよしと撫で続ける姉上。

 客観的に見たら確実におまわりさんこいつです!な状況だが、俺たち姉弟はこれが平常運転だった。


「マ、マリク様! お弁当を作ってきたのです! よければご一緒に昼食でもどうですか?」


 唐突に美人さんが顔を真っ赤にして弁当を差し出す。

 この人、たしかパプテマス家の次女さんだったか。

 貴族なのにお手製の弁当とかすごいな。普通のお嬢様だったら絶対自分で作ったりしないのに。

 無碍にするのも悪いか。


「ありがとうございます。では――」

「ん、んん。マリク、私も一応お弁当作ってきたんだけど! もちろんタコさんウインナーも入ってるわ!」

「――姉上と一緒に昼食をとるので、ご一緒にいかがですか?」


 その一言に美人さんが『え、マジで言ってんのこの人』って顔してる。

 姉上は目を閉じて両手をひらひらと動かし美人さんになんらかの波動を送っている。

 耳を澄ますと微かな声で『あっちいけ~あっちいけ~』と呟いている。


「で、では別の機会で……」

「そう!? 悪いわねなんか私の!弟をとっちゃったみたいで! でもわ!た!し!の!弟だから仕方ないわよね!」


 美人さんの撤退宣言にめっちゃ笑顔の姉上。


「よーし、じゃあ中庭で一緒に食べましょ! ついてきなさい!」

「了解です姉上。といことで俺は姉上と一緒に昼食を食べてくる。邪魔すんなよ」

「しねーよ……邪魔したら激怒するくせに」

「激怒っていうか浄化の炎メギドだけどね」

「なおさらこえぇよ!」


 学友たちに一声かけてから場を後にする。

 学友たちの生暖かい視線と女生徒たちの『これがなければぁ……』という表情が印象的だった。

 でも姉上とご飯食べるのが嬉しかったのですぐ忘れた。全然印象的じゃない。




 学園の広い敷地内にある中庭へ移動する。

 ここは日当たりもよいし芝生も手入れされていてとてもきれいなため、俺たちの定番のお昼場所になっている。

 一般的な貴族は食堂や専用の部屋で食べるのが普通なので、人が少ないのもグッドだ。

 俺たちは貴族の中でも変わり者で有名なので、外で芝生の上に布をひいて座るのも特に問題ない。


「じゃじゃーん! 今日はマリクの好きなタコさんウインナーと卵焼きとから揚げよ! ご飯も用意したわ!」

「うわー! 俺の好物ばかりですね姉上! ありがとうございます!」

「えへへ、お姉ちゃんだからね! もっと褒めてもいいのよ!」

「姉上サイコー! 世界一かわいい! プリティオブプリティ!」

「えへへへへー、もっともーっと褒めてもいいのよ!」


 姉上の鼻がピノキオレベルで高くなっていく。

 褒めれば褒めるほどかわいい反応を見せるのが姉上のいいところだ。


「じゃあ最初は卵焼きね! 私があーんで食べさせてあげるわ! はい、あーん!」

「あーん!」


 客観的に見ると、高校生が小学生にあーんをしてもらってるの図。

 犯罪臭がすごい。

 でもいいの。後悔はない。


「じゃあ俺も姉上に食べさせてあげますよ」

「えー、でも私が食べさせてあげたいわ!」

「俺も姉上に食べさせてあげたいです!」

「まったくもー、しょうがないわねー! じゃあ、一回だけよ? あーん」

「あーん」


 からあげを箸でつまみ、姉上に食べさせてあげる。

 ・・・餌付けしてるみたいだな。


「もぐもぐもぐもぐ・・・ごっくん。え、えへへ。なんだかちょっと恥ずかしいわね! でも、さすが私の作ったからあげね! いい味出してるわ!」

「ええ、皇室料理人も真っ青です」

「これはね、私が考えた秘伝のスパイスに、お姉ちゃんの愛情をミックスしてあるからこんなに美味しいのよ!」

「こんなに美味しいご飯を毎日食べられて私は帝国一の幸せ者ですね!」

「そ、そーお? えへへ、マリクが喜んでくれてよかったわ! まだまだいーっぱいあるから、遠慮しないでいっぱい食べるのよ!」


 そんな感じで二人仲良く昼ごはんを食べる。

 実は周囲からけっこうな視線を集めているが、そんなものは気にしない。

 この幸せな時間、プライスレス。


「ごちそうさまでした。今日も美味しいご飯ありがとうございました」

「どーいたしまして! マリク、今日は頑張ったから疲れたでしょ? お姉ちゃんが膝枕してあげるわ!」


 そう言うと、姉上は地面に敷いた布の上に正座をして、両膝をパンパンと叩く。

 ポンポン、と優しく叩くのではなく、パンパン!と力強く叩くところが元気な姉上らしい。


「では、お言葉に甘えさせていただきます」

「私はお姉ちゃんなんだから、いっぱい甘えていいのよ!」


 姉上の膝に頭をのせて、シートの上に横たわり目を閉じる。


「…………はふぅ」

「ふふ。きもちいーい?」

「一言で言わせていただければ、最高です!」

「良かったわ!マリクがしてほしかったらいつでも言ってくれていいのよ!」


 そう言いながら姉上が俺の髪を撫でてくれる。

 癒される~……


「……マリク、髪伸びてきたんじゃない?」

「そうですか?」


 自分の前髪を触ってみる。

 サラサラヘアーなので、もったいないと思っちゃうんだよね。

 昔は形状記憶合金かと思うほど髪質固かったからな……


「お姉ちゃんが切ってあげるわ!」


 ポーチからハサミを取り出す姉上。


「え、今からですか!?普通お昼休み中に散髪はしないですよね!?」

「マリクが望むなら午後の講義はお休みしてもいいと思うの!」

「いえ、姉上をお休みさせることなどできません」

「私はかまわないわ!」


 いや、俺のために講義休ませたとかなったら、俺が父上と母上から怒られちゃうよ。

 ただでさえ同じ学年で授業を受けるために色々無茶したからな……


「では次のお休みの時にお願いできますか?」

「そーお?マリクがそれでいいんならいいけど……」


 残念そうにハサミをしまう姉上。


「あ、じゃあみみかきしてあげるわ!」

「姉上、みみかきは昨日していただいたと思うのですが……」

「掃除なんだから毎日やってもいいと思うわ?」

「いえ、やりすぎると逆に体に悪いと聞いたことがあります」

「そうなの!? じゃあやめておくわね。明日にしましょ!」

「えっと……はい」


 毎日も一日おきもあまり変わらないような気がするが、姉上がやってくれるというのであれば喜んで耳を提供しよう。

 その結果、中耳炎になったとしても後悔はない。


「相変わらずですわね、あなたたちは」


 そんなことを思いながら姉上のひざの上でゴロゴロしていると、上のほうから聞き覚えのある声が聞こえた。


「むっ、でたわね!」

「イテッ!」

「あ、だ、大丈夫マリク!?」


 姉上が急に立ち上がったので、俺の頭が地面に落下する。

 俺たちの目の前に立っていたのは見知った人物だった。

 スラッと高い背に腰まで届く長い金髪、一見して華やかな雰囲気を醸し出す美人。

 名門セイロン家の一員にして、俺や姉上の友人でもあるルキナ・セイロンである。

 さらに加えて……


「でたわねって失礼ですわね。未来の義妹に向かって」

「うるさいわね! 勝手に決めないで!」


 このルキナさん、俺の婚約者(仮)なのである。

 とはいっても。


「勝手に決めないでって、うちのお父様とあなたのお父様が決めた約束ですわよ?」

「そんなのお酒飲みながら適当に言ってただけじゃない! 無効よ無効!」

「約束は約束ですわ。ですので今後も仲良くお願いしますわね、お・ね・え・さ・ま!」

「キィー!」


 まぁこんな感じでグダグダというか、なぁなぁな関係が続いている。

 ルキナさんがこっちを向く。


「あなたの姉にも困ったものですわね、マリク」

「ははは。姉上はいつも私のことを大事に考えてくれているだけなので。困ったことなど今まで一度もありませんよ」

「……全く、この姉にしてこの弟、と言ったところかしら」


 頬に手を添えてため息をつくルキナさん。

 美人だからこういう仕草も似合うね。


「今はマリクを甘やかす時間なの! 何しにきたのよ!」

「甘やかしている自覚はあったのねこのチンチクリンは……」

「ちんちくりんって何よ、バーカバーカ!」

「はいはい、勝手に言ってなさいな。」

「アホ! マヌケ! ビッチ!」

「勝手に言っていいとは言いましたが、最後の言葉は聞き捨てなりませんわ!? 冤罪で訴えますわよ!?」


 二人でキーキー言いながらにらみ合う。

 ちなみに、この二人は子供のころからの付き合いでめちゃくちゃ仲良しである。

 なのでただじゃれあっているだけなので微笑ましく見守っている。

 もし他の人間が姉上のことをチンチクリン呼ばわりしたら、俺の光速剣で輪切りですよ。


「はぁ、はぁ……いいですこと? エリスももういい歳なんですから、そろそろ結婚も考えたほうがよいのではなくて?」


 姉上が結婚、だと……?

 姉上の結婚相手募集なんかかけたら国中から男どもが集まっちゃうから、弟が選別しなければ。

 書類選考→筆記試験→実技試験→集団面接→個人面接→筆記試験→実技試験→個人面接→個人面接→個人面接→個人面接→個人面接→個人面接→個人面接くらいはしないといけないね。


「私はマリクが結婚するまで結婚しないわ!」

「!? あ、姉上……」


 俺が今後の試験内容や選考の流れについて考えを巡らせていると、姉上が大きな声で『弟が結婚するまで結婚しない宣言』を出す。


「私も姉上が結婚するまで結婚するつもりはありません!」

「え……!? わ、私は別にいいけど、それじゃマリクはいつまで経っても結婚できないじゃない! ダメよ!」


 ダメよ!といいつつすごい笑顔を見せる姉上。


「姉上の幸せが私の幸せですので。少なくとも相手が姉上を任せるに足る人物であると見極めるまでは結婚できません」

「も、もう! マリクはお姉ちゃん大好きっ子なんだから!」


 姉上に抱きしめられたので、俺も抱きしめ返す。

 うちのお姉ちゃん、すげぇ柔らかいのね。

 そんな俺たちをルキナさんがうさんくさそうに見ながら問いかける。


「見極めって……一体どうするんですの?」

「顔、身長、体重、家柄、性格、強さ、賢さ、趣味、嗜好、資産、土地、地位、そして姉上への愛など、いろいろな物を総合的に見て判断します」

「……基準は?」

「最低限、私くらいはないと認められませんね。あくまで最低限ですが」


 自分でいうのもなんだが、多分国中探しても存在しないだろうけどね。

 特に姉上への愛。


「……エリス、もし私がマリクと結婚したら、たまには遊びにきてもよろしくてよ?」

「は? そんなの当たり前じゃない! というより一緒についていくわ! むしろ一緒に住むわ!」

「はぁ!? 頭おかしいんじゃありませんこと!?」

「ルキナみたいなビッチに言われたくありませーん!」

「一回マジでぶっ飛ばすぞてめぇ!」


 ルキナさん、地が出ちゃってるよ。

 名門貴族だからって普段は頑張ってですわ口調で話すけど、興奮すると口汚くなっちゃうルキナさんはかわいくてけっこう好き。

 正直な話、俺的にルキナさんは結婚相手として大いにアリだ。

 なぜなら姉上と仲がいいから。

 姉上が遊びにきても邪険に扱わないだろう。


「姉上、そろそろ次の講義の準備をしないといけないのでは?」

「えっ、もうそんな時間? ルキナのせいでマリクを甘やかす時間が減っちゃったわ!」

「私のせいかよ、ですの?」


 また出ちゃった。


「よーし、マリク! 教室まで競争よ!」

「了解です、姉上!」

「ちょ、ちょっと! 待ちなさい! 私も一緒にいきますわよ!」


 俺と姉上は手を繋いで走り出す。




 ……いつか別れの時が来るとしても。

 せめて、その時までは。

 姉上の一番でありたいと願う、俺のシスコン道なのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


……え? メインヒロインの姉が誰かに似てるって?

他人の空似と言って差し上げますわ!

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[良い点] 姉、、、欲しいです(切実)
[良い点] 大天使ロリ姉が最高すぎてやばいw 主人公の甘やかされても堕落しないところがまたイイ!
[気になる点] 続きは?
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