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掌編小説集7 (301話~350話)

森の怪物

作者: 蹴沢缶九郎

森の奥に怪物がいた。怪物は森に迷い込んだ人間を捕って食ってしまう恐ろしい怪物だった。怪物はいつも一人だった。人間を食ってしまう怪物なので、動物達は怖がって近づこうとはしない。


ある時、怪物が目を覚ますと、傍らに小鳥がいた。小鳥は恐れる様子を見せず、怪物の肩に留まり、美しい声で歌い始めた。

自分を怖がらない存在に生まれて初めて会った怪物は戸惑ったが、不思議と笑みがこぼれ、自分の心を冷たく覆った氷が、暖かい陽に照らされ溶けていくのを感じた。怪物は小鳥の奏でる歌声を黙って聴いていた。この幸せな時間がいつまでも続けばと思った…。


怪物は歌い終わった小鳥を、その大きな手で優しく包むと、自分の口の中に放り食べた。食べなからも怪物の頬を大粒の涙が伝っていたのは、再び自身の心が冷たい氷に覆われていくのを実感したせいだが、小鳥を失った事からくる苦しみや悲しみや寂しさも、小鳥の唄を聴いて味わった楽しさも、自分への怒りも、そのいずれもが、翌日になれば怪物にとってはただの過去の出来事である…。

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