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Hacking・to・the・world  作者: 阿多田佐助
It is easy to attach a clor to colorlessness.
3/12

色無き学校生活

色の無い学校生活…。さびしいな。

 


 授業が始まるっても少年は本を読み続けていた。HRの時間は言うまでもない。



 教材すら出さずに、黙々と本を読み続ける少年に教師は嫌悪の目を向けたが、それも最初だけで暫くすると、まるで少年がいないように扱った。



 そうすると、生徒もそれにならい誰も少年を気にすることはなくなった。

偶に教師からの質問すら投げかけられない少年に羨ましげな目を向ける者もいたが、すぐに少年の周りの環境を思い出し、その目を汚物を見るような目に変える。そして自分の境遇をありがたく思った。



 そのまま何も変わることはなく、一限目が終わり休み時間に入る。周りの生徒たちは思い思いに自分の友達と話したりしているが、少年だけは本を読み続けていた。



 一つの女子のグループが少年を指さし、その顔を嘲笑に変えていたりしたが、それすらもいつものことだった。




 やがて、十分の休み時間が終わり二限目が始まった。二限目も一限目と何も変わることはない。少年は本を読み続け、教師は少年を嫌悪し、生徒たちはただ真面目に授業を受けた。



 二度目の休み時間。少年は本を閉じ、おもむろに立ち上がる。そして、そのまま教室から出る。なんてことはない。トイレに向かったのだ。その様子を見ていた男子生徒グループがニヤリと笑った。




 用を足し、少年が教室に戻ってくると少年の机の上に花瓶が置かれていた。



 周りを見ると、数名の男子のグループがニヤニヤ顔で少年を見ていた。そして、他のクラスメイト達もこちらを見ていることが分かった。その顔にあるのは、これからどうするのかという好奇心だった。だが、一様にニヤニヤとした気持ちの悪い笑みだった。




 少年は表情一つ変えず、そのまま机の傍まで行き、おもむろに花瓶を持つと、窓際に近づき、




 ――――外に放り投げた。




 その行動に男子グループは絶句する。

一階とはいえ、花瓶が受けた衝撃は花瓶を割るのに十分だったらしく、赤い花の活けられた花瓶は、割れたことにより零れた水と共に地面に落ちた。



 花瓶の割れる音に教室の全員が音源である窓の方向を見る。

 先ほどまで少年を見ていなかった生徒も含めて、だ。

 その顔にあるのは一様に、僅かな驚きと疑問の表情だった。音からして何かが割れたのは分かったのだろうが、何が割れたかまでは分からないようだった。



 少年はそれを無視して、椅子に座り何事も無かったかのように本を広げた。



 教室にいた生徒たちは皆、窓の傍までいき何が割れたのかを確認しようとする。ただ、教室の隅、少年の席の近くの窓際には誰も行かなかった。



 そして、花瓶が割れたのを確認すると生徒たちはざわざわと騒ぎ、花瓶と少年の顔を交互に見る。どうしようか悩んでいる、というわけではないようだ。

 都合よく教師が入ってきて、何事かと聞く。薄毛の小太り中年教師だった。その嫌味な性格と容姿から生徒たちからの評判は悪かったが、教師は教師。生徒たちが事態を伝えるには十分だった。



 その教師は、少年の方を見て嫌悪感を隠しもせず、後で生徒指導部に来なさい、と言った。



 その瞬間チャイムがなり、生徒たちが席に着く。中年教師は、本を読み続ける少年に嫌悪の目を送ったが、それだけだった。

 最初の頃こそ少年に難問をだし、嫌がらせを続けてきたが、少年が東大入試レベルの問題を解いた時から何も言わなくなった。目に見える形では、だが。

 少年の数学の成績が悪いのはこの教師の目が多分に入っているせいだろう。

 

 最も、もともと不良まがいの少年にこの評価は妥当と言えるのかもしれない。



 結局そのまま何も変化はなく、三限目も――――



 四限目も――――




 同じように変わらず過ぎていった。



 何も変わらない。友人との話に花を咲かせたりも――――恋人との愛を深めたりも――――何も色がつかない。透明な、無色の、色無き生活。





 昼休みとなって、他クラスの生徒も増え、同級生達が思い思いに昼食を広げている中で、少年は鞄からカロリーメイトを取りだそうとし、






「ショウ君」



 



 一言。色無き学校生活に色が垂らされた。





『Hacking・to・the・world』episode2:色無き学校生活スクールライフウィズアウトノーカラーschool life without no color.





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