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じゅんけつのえろふちゃん

お気に入り30!ヽ('∀')メ('∀')メ('∀')ノ

「ここが、ヴァニル・クランの本拠か…でけえ」

「だろう?ほんとはお前みたいなひよっこじゃ門をくぐることすら許されねえんだぜ?」

「じゃあ破壊して進むわー」

「やめろ!おまえは本気でやりかねん」

「おい、ゾネは俺をどんな目で見ているんだよ。べつにやらないよ?やったとしても入り口にトラップ作っとくくらいだよ?」

「そっちの方がたち悪いわ」


二人が建物の前でギャーギャーやっていると扉が開いて、中からひげを生やしたおっさんが出てきた。


「おめーら、店の前でいちゃこらしてんな、カマほるぞ!」

「あ、おやっさん、ちーす。こっちが、新入りのカーマってんだ。よろしくやってくれ。で、このナイスミドルが、うちの本拠で、宿と食堂を経営してくれている責任者だ。正真正銘のガチホモだから気を付けろ」

「いや…おかしいだろ!絶対ダメだろ!ガチとか冗談だよな!な!な!」

「ああ、残念ながらほんとだ」

「安心しろ坊主。ワシは一般人には手を出さん。やっても奴隷までだ」

「あ、奴隷に落ちないように気を付けます…」


(あー、この世界奴隷いるのか。まあ元の世界だって、国連による奴隷制度撤廃は1950年ごろだしねえ。それより宿屋の亭主がホモってどうなのよ…)


おやっさんにつれられて、中に入るとそこは酒場だった。

2階以上が宿になっており、最上階が大きな会議室やPT向けの小会議室となっているらしい。

宿もいろいろなレベル帯の人間がいるために、部屋の質もピンきりらしい。それでも上位クランだけあって、最低の質の部屋でもそこら辺の宿よりは高い。

銅貨1枚しか持っていない徹には、速攻でピンチだった。


徹は中に入ると、案内されるがままにカウンターについた。

ゾネはなぜか隣に立ったままだった。

なんでも、酒場のルールとして、座るところはクラン内で組んだPTごとで決まった位置。PTに所属していない人間はカウンターという決まりらしい。

カウンターについた徹は、喉の渇きをいやすためになけなしの銅貨1枚をおやっさんに渡して、飲み物をもらった。出てきたのはただの水だったけど。


「おい、それじゃあ静かにしろ、新入りを紹介する」


ゾネが徹の肩に手を置きながら、酒場全体に聞こえるように言った。

すると、やかましかった酒場が、いきなり静まり返った。


「うちはすでに30人を超える大所帯だがな。今日また仲間が増えた!名前はカーマ・トールだ!それでは新しい仲間の前途を祝福して、乾杯!!」

「「「「かんぱーい」」」」


カンと木製のコップを打ち鳴らし、一気にあおる。

するとおやっさんが奥から1枚の紙を出してきた。


「ほれ、ここに自己紹介を書いておけ。まだ訪問者(ヴィジター)になったばっかりだから、ジョブはないだろうが、自分のステータスと志望職業くらいは書いておけ。あとスリーサイズもな」

「いや、スリーサイズとか把握している人間とかいないっすよ?女の子だって普通にわからんでしょうに」

「そおか?ワシは把握しているぞぃ?上から98の80の85だ。いい体だろうよ」

「やだー、ムッキムキじゃないっすかー。汗臭いから近づかないでくださいよ」

「おい、坊主。そんなこと言っているとホモだらけの楽園(パーティ)にいれるぞ!」

「それだけはやめて!そんなとこはいるくらいならソロするから!」

「はあー最近のガキは、かわいげってもんがないんじゃ。お前のちょっと前に入った新人だって、人の忠告を素直に聞かないわなんだのって…」


おやっさんが愚痴りだしたときにちょうどドアが開く音がした。

長そうな愚痴だったのでその闖入者にやや感謝する徹だった。


「ちっ。噂のガキが帰ってきやがったぜ。たっく、課題はクリアしてきたじゃろうな?」


珍しく毒づくおっさんを無視して入ってきた新人さんをみる。

それは小柄な美少女だった。だいたい15~6歳くらいだろう。

ほっそりとした体、金髪を長く伸ばした髪、まるで透き通る空のようにきれいな碧眼。

そして、吊り上った目はやや勝気な感じを醸し出している。しかしその人形のように整った顔は愛らしさを失ってはいない。

なにより徹の気を引いたのは…

「ながみみ?えるふ?」

「ああそうだ、あそこまで純血のエルフはめずらしいな。というか、純血自体が珍しいんだがな」

「純潔?処女?」

「ちがうわ、お前の頭は万年常春かよ。ほら、最近は混血が進んでいるだろ?俺だって結構オオカミ系の血は強いんだがな。でも結構混ざっているから、ほれこれくらいだわ」


ゾネさんはそういって髪の毛で隠れていた耳を取り出して見せてくれた。

そこにはややとんがった耳に体毛が生えていた。


「おっさんに…ケモミミだ…とう…。いや、そんなことはない。これはちがう。これはちがう。これはちがう。これはちがう………」


徹が現実と戦っている間に、エルフの少女はカウンターまで来て袋を置いた。


「これ、注文どおり、小玉鼠100匹分の魔石」


小玉鼠とはハツカネズミ、またはヤマネに似た獣で、体形は球形に近い。まれに自爆して内臓を巻き散らかす、割と嫌な迷宮の浅い階層によくいるモンスターだ。

また、魔石は迷宮にいるモンスターの頸部にあるモンスターの核のようなもので、純粋なエネルギーの塊である。

ただ、小玉鼠は安全に狩れる反面、小玉鼠の魔石は屑魔石と呼ばれあまり価値がない。

魔石は、電池のような使われ方をしていて、この世界における機械類は魔石なしには動くことはできない。

このため、魔石は生活必需品として広く需要がある。

つまりこの世界の文明は迷宮に完全に依存しているいびつな形をとっているといえる。


「これで文句はないでしょう?私は魔剣士をめざすわ」

「魔剣士?何その『私、歌って踊れるアイドルなの☆ミ』みたいなのは」

「お前のたとえは分かりづらいんじゃ…まあ、魔術と剣を両方使う職のことになるな。たしかに極めれば強いんじゃがな。どうしても中途半端になりやすいから、最初から目指すのではなくてどちらかを極めてからもう片方に手を出すってのがセオリーなんじゃがこの嬢ちゃんはあ」

「嬢ちゃんじゃないわ!私には、リン。リン・クライスよ!それくらい覚えておきなさい」

「なんでそんな怒っているんじゃ?今日、排卵日か?」


おやっさんの質問にリンは顔を真っ赤にしてなお声を荒げた。


「っっっ最低ね!ちがうわ!なんなのよ。このクランはもう上位クランなんて言われてきてみれば最低な奴しかいないじゃない!」

「まあ、そんなに怒らないで、リン。おやっさんもお前のことを心配して言ってくれているのよ。気をかけてくれることをありがたく思わなければいけないわ。だが、そんな心配も杞憂だったようだね」

「はい、アニタお姉さま」


リンはその言葉に今まで激昂していたのが嘘のように笑顔になる。


(変わり身はええ。しかも、この子かわいいのにビッチ臭え)


リンはそのままアニタと呼ばれた女性に飛びついた。

アニタは、昨日ゾネと一緒に神輿を担いでいた筋肉女だ。

徹は、ゾネに目配せして事情を聴いてみるとアニタはゾネと同じPTの女性で、リンはその知り合いだったらしい。

リンはアニタの紹介で、ヴァニル・クランに昨日はいった。

しかし魔剣士になるのを止められ、言い合いの結果、今日中に迷宮に生息している小玉鼠を100匹狩ってくれば今後何も言わないと結論が出たらしい。

このクエストを見事果たして帰ってきたところだという。

そして徹は一番気になることを聞いた。


「んで、あの二人は、どっちが攻めでどっちが受けなんだ?」


もちろん、徹の脳みそが腐っているが故の質問である。


「ち、ちがうわよ!そんな関係じゃないわ!私たちは同郷なだけ!それになんなのよ。この煮ても焼いても使えなさそうな、男は!うちは上位クランのヴァニル・クランなのよ!あんたみたいな無能はお呼びじゃないの!」


耳ざとく聞いていたようで、つっこみは本人から帰ってきた。

しかし、なるほどアニタの耳も気持ちとんがっている。リンより混血が進んでいるのだろう。


「いや、こいつはヴァニル・クラン(うち)に新しく入った魔術師だ。これでも結構優秀なんだぞ、多分」


ゾネがなんとかフォローを入れてくれるが、リンの弾丸トークは絶好調だった。


「へー優秀ねえ?全然魔力を感じないんだけど?どれ?ステータス見せてみなさいよ」


そういって、俺の書きかけの自己紹介の紙をひったくる。


「はあ?なにMP8って、魔術師バカにしているんじゃないの?それにしてもひどいステータスね平均ステータス7ってどこの農民よ。ていうか農民以下じゃない。こんなのでよく魔術師名乗れるわね」


(おいおい、ビッチ臭どころじゃなくて普通に馬鹿女じゃねーか。エルフに対するイメージがた落ちだぞ?)


「いい?いっぱしの魔術師名乗りたかったらこれくらいのステータスになってから言いなさい」


そういって、リンは左手を壁に向けると、そこから光が漏れて、壁にステータスを書いた。



――――――――――――――――――――――

Name リン・クライス

Level 1

Age 15

Job none

HP 250

MP 890

Str 32

Vit 25

Int 89

Dex 24

Agi 28

Mnd 19

Luck 20


Skill  天賦の才 武人 エルフの子孫


装備 鉄の剣

   皮の鎧

   皮のブーツ

   皮の小手

――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――

天賦の才(Passive)

スキル習得条件緩和

ステータス上昇率上昇

レベル上昇必要経験値減少

――――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――――

武人(Passive)

HP上昇

近接系ダメージ上昇

近接系スキル習得条件緩和

Str・Dex・Agi中上昇

近接系スキルダメージ上昇

――――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――――

エルフの子孫(Passive)

魔術系ダメージ上昇

魔力上昇

Int中上昇

魔術習得条件緩和

消費魔力減少

保有魔力量上昇

――――――――――――――――――――――




徹はステータスを見るとゾネの袖を引っ張ってささやく。


「なあ、あれだけInt高いのにあの幼い言動ってどうなのよ。実際問題、ステータス詐欺にもほどがあるだろう」

「まあ、Intは知恵っていうよりは知識っていうからな」

「えー?それだとダンジョンで経験値ためて知識を伸ばすのか?それだとモンスターの昨日のご飯とか交尾とかそういうことばっかり増える気がするぞ?」

「んなこと言われても俺には分からんよ」

「それが正しいとするといまのリンの頭の中は小玉鼠の交尾だらけだな」

「だな」


二人が内緒話をしていると、リンはお勝ち誇った顔で徹たちの方を向いた。


「どう?身の程というものがわかったかしら?」

「あー、はいはい。自慢おつおつ」

「なっ、なによそれ!私はあんたのためを思って言ってるのよ!そんな変な格好して訪問者(ヴィジター)なめてんじゃないの!?」


そのリンの一言は、見事に徹の地雷を踏みこんでいた。


「ああ゛?このコートを馬鹿にするな!たかだか15年しか生きてないジャリが生言ってんじゃねえよ!」


その怒声に酒場が静まり返った。

小娘が感情のままにきゃんきゃん吠えるのではなく、大の大人が腹の底から怒りを持ってあらわした言葉に全員息をのんだのだ。

しかしリンには、人生経験が足りなかったせいか、もしくは徹のことを格下とみていたせいなのか不明だが、徹の怒りを理解できなかった。


「なによ!無能のくせにその言いぐさは!迷宮は遊びじゃないって言ってんでしょ!金持ちの道楽ならどっか別のとこでやんなさいよ!」


そんな殺気立つ二人に見かねたおやっさんが苦々しげに仲裁に入ってくれた。


「おまえら…せっかくヴァニル・クランに入ったってのにケンカするんじゃない。それにカーマはマスターが直々にスカウトしてきたんじゃ。新入りのお前がどうこう言っていいことじゃない。」


(やっばい。おやっさんホモなのにまともなこと言ってる…)


「そんなこと言ったって、あのステータスはひどすぎない?」

「まあ、そうじゃな。そこで、お前達で勝負してみればいい」

「勝負?」

「ああ、どうせカーマはこれから迷宮に行って一稼ぎしないと金がないんじゃろ?今から3時間迷宮に潜ってどちらが多く稼げるかというものじゃ。監視と監督のためにそれぞれに一人案内人を付けること。これが条件でどうじゃ?」

「いいじゃない。受けて立つわ!その代り、あんたが私に負けたら一生下僕ね。これから稼ぎの半分を渡しに上納しなさい」

「おお、いいねえ。それなら一晩かしてくれや」


なぜか、リンによる下僕宣言で盛り上がりを見せる店内。

おやっさんにいたっては一晩いくらで徹を貸し出せるか交渉までしている。


「いいだろう!俺が勝ったら、てめえは雌豚にしてやんよ!」


こうして、リンと徹のガチバトルは、異様な盛り上がりの中はじまったのだった。




一方その頃訪問者(ヴィジター)ギルドではカミラがゲオルグに疑問の声を上げていた。


「ギルド長…カーマさんの出身地のニポンてどこなんですかね…?」

「さー、なんか誘拐されてこのあたりに来たらしいから本人もどこかわかんないんじゃないか?」

「そ…それは壮絶な迷子ですね…」

「あいつらしいけどな、気になるか?」

「そうですね。ギルド長がわざわざお時間を割くようですからどんな人かと思ったら、ステータスは低いですし…」

「んー、そういう意味じゃないんだけどな。まいっか、後はカーマ次第だしな」

「なっ。私はカーマさんのことをそんな目で見てはいません!」


やっとゲオルグの言わんとしていることを理解したカミラは顔を赤らめて言った。


「見てもいいんだぜ?ただ、カーマが誰かと結婚したらこの街に居ずくんじゃないかと思ってね…」

「え?訪問者(ヴィジター)になったのですから、めったなことではこの都市は出ないと思いますけど?」


ゲオルグはその疑問には答えず、ただ笑っているだけだった。


第一のヒロイン登場!と、思うしょ?そうしょ?

残念ながら雌豚なんですねー

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