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焦る乞食はもらいが少ないらしい

次の日、二日酔いでガンガン響く頭を押さえながら訪問者(ヴィジター)ギルドにやってきていた。

昨日の祭りは、商店街の親父たちの暴れっぷりから『反撃の親父たち』と名付けられ、商店街は恐れられることになっているのだが、そのことを知るのは当分後のことだった。


昨日は祭りがひと段落してからがやばかった。

神輿を担いでいた面々は、軽い打撲程度で大したけがをしていなかった。

商店街の神輿が迷宮前まで行けたということが、この祭り始まって以来の快挙なうえに、優勝候補者のヴァニル・クランと引き分けたことにより後夜祭の盛り上がりは半端なかった。

当然のように主役の徹は、ひっきりなしに酒を飲まされて、何度か吐いた。

それでも飲めないとわかっていても、無理やりつがされ、頭から振り掛けられの大騒ぎだった。

昼前に目を覚ましてみると、そこは死屍累々なんてことはなく、ちゃんとかたづけられて外の商店街は活気に満ちていた。

オヤジたちのバイタリティはすごい。

徹が起きだしたのを目ざとく見つけたおばちゃんは、酔い覚ましにと熱いお茶を入れてくれる。

お茶を片手に体の中にいまだ燃える祭りの残り香を感じていた。


訪問者(ヴィジター)ギルドに着くまでに散々商店街の人間に声をかけられ、いろいろなお土産を持たされた。

徹の両手にはなぜか、肉だの野菜だのの袋が6個もぶら下がっている。

祭りのおかげで、商店街で俺の顔を知らないものはいなかった。

ちょっと歩くだけで必ず声をかけられる。

見知らぬ土地で、地元の人間とこれほど親密になれたのは、すべて祭りのおかげだ。


(やはり、祭りはいい)


そう思いながら、訪問者(ヴィジター)ギルドの入り口を開けるとそこにはゲオルグさんがいた。


「おそよう。なんだその恰好は、買い物帰りのおばちゃんか。ここは宿はやってないぞ?」

「あー、なんか商店街を抜けたらこんな格好になっていた。というか、俺いまだに一文無しなんだけど?それ以前に、この国の通貨を触ったことも見たこともないんだが」

「そうなのか?それじゃあその荷物を俺が買い取ってやるよ。俺のカミさんに渡せば喜んでくれるさ」

「な…に…?結婚していたのか!?」

「おい…食いつくとこそこかよ。まあいい。どうせ訪問者(ヴィジター)登録しに来たんだろ?ちょっと、カミラを呼んできてくれ」


ゲオルグはそういうと、俺から受け取った荷物を下働きしている子供に渡し、別の子供に人を呼びに行かせた。

ギルドでは先ほどから子供が出たり入ったりしている。

この世界では下働きとして子供をよく使っているのだろう。

特に、暗い顔をせずそれなりに身なりの整った服を着て元気に働いている。

ところどころで、お駄賃を渡している姿も見受けられる。

この国に来て思うのだが、四季があり、穏やかな気候の国では、自然と住んでいる人間の気風も穏やかになる。

これだけで、徹はこの国が好きになっていた。


「お呼びしましたか?ギルド長」


澄んだ声色で、そういって現れたのは、歳にして17~8歳くらいの女の子だった。

ショートカットにそろえた亜麻色の髪の毛は光沢に富み、エンジェルリングを作っている。

顔つきは、かわいいというよりは美しい、美しいというよりは凛々しい。まだ色事を知らないであろう幼い顔つきに、持ち前の意志の強さも相まって不思議な雰囲気を漂わせていた。

ほっそりとした体つきには、やや控えめな胸が付き腰はきゅっとくびれていた。


「カミラか。カーマが訪問者(ヴィジター)登録に来たからちょっと登録の担当をやってほしい」

「わかりました。ではカーマさんこちらへどうぞ」

「えっ?」


俺が疑問の声を上げると、カミラは不安の表情を作った。


「あの…なにか、至らない点があったでしょうか?」

「いや、ゲオルグさんて、ギルド長だったの?てっきり、中間管理職で下からせっつかれて、上から抑え込まれていたストレスで毛根が死滅したのかと思っていたよ」

「おい、俺の毛根は死んでねえ!これは毎朝そっているだけだ!スキンヘッドっていかすだろ?」

「ゲオルグ…残念ながらスキンヘッドが似合うのはイケメン限定なんだ…残念だったな」

「だろ?俺に似合うだろ?ほらな」


おっさんになると自分の都合のいいことしか聞かないという特殊スキルが習得できるらしい。

話を振られたカミラは困り顔だった。


「わかった、わかった。ゲオルグの毛根は残念なことになっているのは理解したから、訪問者(ヴィジター)登録頼むよ」

「あ、はい。ではこちらにどうぞ」


まだ何か言っているゲオルグを無視して、カミラの後についてカウンターに向かった。

カミラの尻は前からはわからなかったが、小ぶりできゅっとしまっていて素晴らしいものだった。


(ふぅ…素人DTの目には毒だぜ)


そう思いながら尻を見ているとふと視線に気づき振り返る。

そこにはニヤニヤした顔のゲオルグさんがいた。親指を立ててぐっと突き出している。

俺はその意味を理解して、サムズアップで返してやる。

ゲオルグさんは徹のためにギルドでのかわいい所をわざわざ呼んでくれたのだ。

この瞬間からゲオルグさんと徹は、心の友とかいて親友と読むそんな間柄になった気がした。


「それでは、こちらの用紙に必要事項を明記してください」


そういって渡された紙には、氏名、年齢、出身地、特技を書く欄があった。


「えっと、カーマ・トールっと」


こちらの発音や筆記ではどうしても、香山や徹はかくことができない。

一番近いのが、カーマでありトールになってしまう。


「んで30歳。日本出身っと」


その内容に、隣からのぞきこんでいたゲオルグが驚愕の表情を表す。


「は?お前俺と5つしか違わなかったのか!?はあああ?うそだろう?」

「うっせえ暇人。ていうか、ゲオルグ35だったのか。35でそれって、老け顔すぎんだろ」

「ほざいてろ。カーマがわかすぎんだろ。その(ツラ)で30とか詐欺もいいところだ」

「いいだろう。うらやましいんじゃろう。うりうり」

「仲がいいのはいいことですが、早く書かないと日が落ちてしまいますよ?」


中年が二人、歳も忘れてじゃれているのをカミラはニコニコ顔で眺めていてくれたが、やんわりと早く書くように催促してきた。

特技に魔術と書いて、カミラに提出すると一通りチェックして奥へ案内された。

後ろで、ゲオルグががんばれーと声をかけているがスルーしておく。



通された部屋は、4畳あるだろうかといった風の狭い部屋だった。


(なんだこの狭いや部屋!あれか?あれなのか!?登録には、ギルド員との性行が必要ですとかなんとかあったりしてえ。うへへへへ)


そんなDT全開の俺を後目にカミラは戸棚を漁り、やや青みがかった直径3㎝ほどの丸い宝石を取り出してきた。


「それでは、カーマさん。聞き手はどちらですか?」

「ん?右手だけど?」

「では左手を出してください。この宝石を埋め込みます。これが訪問者(ヴィジター)の身分証明書やステータスなどになるので大切にしてくださいね」


言われた通り素直に左手を差し出すが、ふと疑問がわいた。


「でもそれだけだったら、さっきのカウンターでもよかったんじゃない?」

「えっと、それだと、恥ずかしいと思いますので…こちらの方がよろしいと思いますよ」


カミラは少し顔を赤らめながらいう。


(個室の方がいい…だとう!?もしかしてホントに(これ)(これ)にこうしてドーンてことか!?よしこーい!ばっちこーい!)


カミラがそんな徹には気づかず、徹の左手の上でその青い宝石を宙にほおった。

宝石は自然落下に逆らってゆっくりと徹の手の甲におちる。

いや、そのまま手の甲に融合を果たす。


「あれ?これで終わり?へー、なんか特殊な魔術ギ…ギ…ぐあああああああああああ」


不意にまるで全身の神経をたたき切られているかのような感覚が全身をおそい。

へタレな徹は我慢どころか全身で痛みを表現してのた打ち回った。

10秒後、やっと痛みの引いた体を大の字にさせて肩で息をしていた。


「大丈夫ですか?」


カミラが心配そうに声をかけてくれる。

徹は、返事もせずに寝ながらカミラのスカートの中をのぞいていた。


(うっし!パンもろ!あー…ドロワーズなんだ…この国はそういう文化なんだ…チッ江戸時代の日本なら国民全員ノーパン健康法なのによお!)


「ちょっと…カーマさん…?」


カミラがばっとスカートを押さえて一歩後ろに下がる。

顔が耳まで真っ赤になっている。

どうやらのぞいていたのがばれたようだ。


「あー、ひどい目にあった。こんなに痛いなら最初から言ってくれよ」


すくっと立ち上がって、強引に話題を振る。


「あれ?ギルド長からきいてないんですか?説明はしたとうかがっていたものですから」

「いつの間に?俺なにも聞いてないんですけど。ちぃ、あのはげええ」


部屋を飛び出すと、ゲオルグさんに文句を言いにかかった。


「おい、ハゲ!何も説明しないであの激痛とかなんだよ!」

「ハゲじゃねえスキンヘッドだ。まあ、いい声聞かせてもらったわ」

「ふじゃけんなあ…あれ?なんでこんなに人いんの?」


きづくとそこには人だかりができていた。

さっき部屋に入るまでは5~6人くらいしかいなかったから間違っていないはず。


「ああ?こいつらか、こいつらはカーマが訪問者(ヴィジター)になるっていうから見物に来たやつらだ。ほら、昨日の祭りで目つけられたんだよ」


言われてみれば、昨日神輿をぶっ壊したクランの人たちの顔もちらほらある。

中にはヴァニル・クランのゾネって人までいる。


「なに言っているのだよ、ギルド長。俺は、そのボーズを勧誘しに来たんだぜ」


ゾネさんがゲオルグさんの肩に手を置いて観衆の中から出てくる。


「良いのかよそんなこと言って、まだこいつは自分のステータスすら見てないんだぞ?」

「はあ…ギルド長さまともあろうものがわかってないな。あんなもんはな、数値化した俺たちの能力の一部分にしか過ぎないんだぜ?昨日俺と互角の勝負をした。これだけで将来有望な戦士(・・)ってわかるってもんだぜ?」


ゲオルグさんは明らかに笑いをかみ殺すように顔をゆがめている。

後ろに立っているゾネさんからはちょうど見えない位置なので気づかない。


(このハゲは俺が魔術師だって言わない気だな…最悪だろ。まあそれはいいとして…)


「あっと、ゲオルグ()(ね)、ゲオルグ()(ね)。ステータスってなんぞや?」

「おい。なんか今の呼び方に悪意を感じたんだが気のせいか?」

「まじで?被害妄想なんじゃね?働きすぎってやばいぜ?そんなことより、ステータスを詳しく!」

「カミラが説明しなかったのか?」

「あー、説明とか受ける前に出てきちゃったわ」


ちょうどそこでカミラが部屋から出てくる。徹が散らかした部屋を片付けていてくれたらしい。若干髪がよれている。


「すいません。説明しなければいけないところを…」

「いい、いい。このあほが勝手に説明を聞かなかっただけだろう。カーマ、さっき宝石を埋め込んだ方の手を出してみろ」

「こうか?」


言われた通りに左手を突き出す。


「その手にはまっている宝石に魔力を通してみろ。魔術師ならできるだろ?まあ戦士っていうならそこの補助器具使うがな」


ニヤニヤが止まらないゲオルグさんが指示を出す。隣でゾネが変な顔をしているが気にしない。

徹は言われた通り、左手の甲に魔力を流した。

すると宝石は一段と輝きをまし、輝きは一筋の光となって壁にあたった。

そこには文字が浮かび上がる。


「おう、成功したみたいだな。それがステータスだ」


徹のステータスを覗き込み一様に皆息をのんだ。


カミラが心配そうに声をかけてくれる。

徹は、返事もせずに寝ながらカミラのスカートの中をのぞいていた。


(うっし!パンもろ!…えっ?はいてない…だとう!?く…暗がりの奥に茂みが見えるぞおおおお!いやっはああああああ!大サービスじゃないか!)


「ちょっと…カーマさん…?」


カミラがばっとスカートを押さえて一歩後ろに下がる。

顔を見れば耳まで真っ赤になっている。

どうやらのぞいていたのがばれたようだ。


「あー、ひどい目にあった。こんなに痛いなら最初から言ってくれよ」


すくっと立ち上がって、強引に話題を振る。


(ふぅ…いいもん見せてもらったぜ。まったくノーパン健康法は最高だぜ!)


という妄想をした…

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