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人間って何考えているのかわからないよね

迷宮に入ると一気に8Fまで進んだ。

コンラドの攻撃力を考えるとこの程度の敵でないと一人で無双モードに入ると予想したためだ。

迷宮を探索するときは、先頭をカシアにやってもらい。

索敵や罠の探知、マッピングをしてもらっている。

その後ろを、コンラド、徹、フィーネ、エッカルトの順番で歩いている。


「それにしても敵が少ないわね」


カシアがそうぼやくが、先ほどから一応エンカウントはしていた。

だが、1匹のはぐれカク猿で、コンラドが大槌で簡単に倒してしまっていた。

コンラドの大槌は力任せに振るわれるのではなく、その一撃一撃に全体重を乗せ、恐ろしいまでの速さで繰り出されていた。

だが、それが逆に細かい動きを不可能にする結果となっていた。


「すごい破壊力だなそれ。連続でどれくらい動けるんだ?あんま長いことは無理だろ?」


確かに、コンラドの攻撃はすさまじい。

しかし、その一撃一撃がすべて全力なため、常に全力疾走しているようなものだ。

緩急を付けずにそんなことをしていればすぐにばてるだろう。


おで()には、ごれっきゃ(これしか)ないがんなー。だけんど、1時間ぐらいばいげるべ」


訂正。普通ではありませんでした。


「おお、そりゃ頼もしいな。ま、今はそのままでも問題ないさ。全力でそのスタイルで行けば、俺かエッカルト君がフォローする。いつか気が向いたら、小技ってものを覚えてみるのも悪くないさ」


徹が、自分のセリフに酔いしれていると後ろからエッカルト君の『ふざけんな。そんなの死ぬわ』という幻聴(叫び)が聞こえる。


「ぞおかー?わるいなー。おで()もなんだかやれるぎがしでぎだだー」

「あ、それは気のせいだから。とりあえずは大ぶりな攻撃でよろしく」

「そ、そうだが(そうなのか)…」


徹の言葉に、しょんぼり肩を落とす姿が、パンダが笹を食べている感じでかわいらしい。

そして、後ろではエッカルトとフィーネがいい雰囲気を醸し出している。

後ろでは、愛を育み、中列では友情をたしかめあって、唯一働いているのが、先頭のカシアというカオスな空間だった。

そのとき、カシアから低い小声で『静かに』という注意が出た。

一同に一気に緊張が走る。


「ここに隠し扉がある」

「「「「隠し扉??」」」」


見事にはもった。

迷宮とはいっても、さすがに一本道問い訳ではなく迷路のようになっているが、扉などなく、小部屋は存在しないと考えられている。

隠し部屋の存在など、4人とも初耳だった。


「ええ、ここだけじゃなくて、隠し部屋は迷宮の至る所にあるわ。でもそのほとんどが、こちら側から開けられないために一般的に知られていないの。その中でもここは例外的に外側から開けられる扉よ」

「へー。ああ、確かに言われてみれば、構造上、この向こう側は道じゃないな…柱的なものかと思っていたけど」

「そうそう、それでこの向こう側に、モンスターの気配がする」


言われて耳を澄ませてみれば、壁の向こう側からかすかに息遣いや足音が聞こえる。

そして、よくよく計測してみれば、そこの部分だけ0.015度ほど壁に傾きがあった。

ここまで、完璧な整合性を見せていた壁を考えれば明らかに怪しい。


(この扉は、引き戸か…)


傾きから扉の開け方を推察するが、肝心のとってはなかった。


「ぞれで、どうずるだ?」


みんなの意見を代表してコンラドがいった。

4対合計8つの目が徹に向けられる。


(えええ!?普段リーダー扱いしてくれないエッカルト君までその眼するの…まあ、作戦なんてガンガン行こうだけどね!)


「それじゃあ、フィーネの合図で飛び込もう」

「えっ…私…ですか?」

「まずは、扉を開けるとともにフィーネが魔術をぶち込む。フィーネは中級魔法使えるっていったけど、範囲攻撃は行ける?」

「あ…はい。いけます」

「それじゃあ、フィーネが呪文の最後の文節を唱えたら左手を上げて、そしたら扉を開ける」

「わ…わかりました」

「魔術の勢いが収まったら、そこに俺とコンラドで乗り込む。この扉は狭いから、コンラドが先に次に俺が入る。コンラドは何も考えずにいつも道理暴れてくれて構わない。細かいところは俺に任せろ」

「わがっだ」

「カシアとエッカルト君は、扉から逃げたり、フィーネを狙ってきたりする個体の排除を頼む」

「はい」「わかったよお」

「それじゃ、配置につけ。それとコンラド、扉は俺が開ける。構えといてくれ」

「「「「了解」」」」


それぞれ自分の役割にふさわしい場所に散っていく。

カシアとエッカルトは、フィーネを援護しやすい位置に。

コンラドは扉の内側へ突入しやすい位置に。

徹は扉を開けやすい位置について、身体強化の魔術を自分にかける。

フィーネが、魔術を打つ場所に移ったのを見てから、徹は始めるように合図を送った。


「世界に普く在る風よ

 普遍ゆえに全知なるものよ

そは不義不貞を知る

 断罪の風よ

 世界に満ちたる故に死角なく

 故に逃亡は能わ…」


普段の喋りよりもトーンを一つ落とした声、朗々と響くその(うた)にフィーネの周りに強い力の地場は形成されるのを感じた。

フィーネは風邪の中級魔法を使うようだ。

わずかにだが、フィーネの周りには風が吹いている。


「ちょ!ちょっと待とうか!ふぃ、フィーネさん(・・)?そ、その呪文は…?」


徹があわてて、フィーネの呪文を中断させる。


「ど…どうかしましたか…?私…変ですか…?」


フィーネは、徹の態度になにか失敗をしたのかと心配げな表情を上げる。


「いや、うん。いや、別に間違っちゃいないんだけどね。その呪文…誰かに教わったの?」


徹がすがる気持ちで聞く。


「これ…ですか…あの本を読んで…自分なりにアレンジしてみました…」


(はい!あうとおおおおおお!)


「そ、そっか。ちょ、ちょい二人ともこっち、こっち。集合」


徹は、カシアとコンラドの二人を呼び寄せて顔を突き合わせて話を始める。









「ちょっと、いきなりなんなのよ。私は魔術なんて使えないから、フィーネちゃんの呪文なんてわかんないわよ」

おで()もだよ。なにが、おがじんだ(おかしいんだ)?」

「いや、おかしいだろ!落ち着いて考えてみろ。

普遍ゆえに全知なるものよ→私はすべてを知っているわ

そは不義不貞を知る→浮気したのも知っているわ

 断罪の風よ→浮気したものは殺すわ

 世界に満ちたる故に死角なく→どこに行ってもわかるの

 故に逃亡は能わず→逃げるなんて考えないことね

ってなるぞ!」


ぼそぼそと話しているため、フィーネやエッカルトには声が届かない。


「なにそれこわ。…でもさすがに考えすぎでしょ。ただの詠唱じゃないの?」

「違うんだ!風系統の魔術はこんなに毒々しくないんだ。もともと光系統の分岐だから、もっと明るいんだよ!」

「う゛ー?ごめんカーマ、おで()にはよぐわがんねー」

「よし、んじゃ。俺の同じ魔術の詠唱を教えよう。

 世界に普く流れる風よ

 そは流転のものなり

 故に穢れることを知らず

 されど時に猛き風

 怒涛のごとく流れるものなり

 だぞ?」

「なんか前半はだいぶやさしい感じね」

「んだんだ。風系統っていうのは、突き詰めれば浄化や解毒といったものになるんだ。まだ、風系統が状態異常回復に使えるってことは知られてないけどね」

「え゛、でごどは…」

「うん、しかもたちが悪いことに、自分に合った詠唱っていうのは、若干説明省くけど、その人間の深層意識に影響されるんだ」

「つまり、フィーネちゃんは心の闇を抱えているってこと?」

「多分…」

「よくそれで、エッカルトは何ともないのね」

「多分気づいていないんじゃないか?」

「ぞんなごとねえべ。エッガルドがフィーネのごと、ずき(好き)なのがづだ()わってんべ」

「それはないな!俺の幼馴染理論からいえば、それは結構レアなケースだ!」

「まあ…フィーネちゃんは気があるだろうけど、エッカルト君は別の方向いているわね…」

「つうか、エッカルト君そろそろ後ろから刺されるんじゃね?誰か止めろよ」

「えっと…トオル…がんばってね!」

「なにカシアは他人事みたいに言っているの!エッカルト君の浮気相手はカシアでしょ!さっき見とれられていたじゃないか」

「ちょっと、やめてよね。あんな子供に興味なんかないわよ!」

「そんなこと言ったって、ついでに刺される候補は俺じゃなくてカシアだぞ?」


(うわあ…エッカルト君。告白前に振られとる…)










フィーネはいきなり、徹とカシア、コンラドの3人で集まってしまい、完全に取り残されてしまった。

隣では、エッカルトが面白くなさそうにしているが、何も言う気配がない。

残されたフィーネは仕方なく声をかけることにした。


「あ…あの…なにを話して…」

「は!はい!」


声をかけられた3人はフィーネが驚くくらい驚いていた。


「あ、いや。うん。き、気にしないで!こっちの話だから!それじゃ気を取り直してテイク2いこう」


(おいいいい。怒ってらっしゃるよ!これからフィーネちゃんとエッカルト君の扱いには注意ね!ね!あと最優先目標として、あの二人をくっつけること!)

(わかったわ。さすがにフィーネちゃんが暗黒面に落ちて笑っているとこは見たくないわ)

(おでは、二人にじあわぜ(幸せ)になってほじいだ)


3人の心は一つに、パーティーの心はそれとなくギクシャクしている状態で、改めて隠し扉への突入が始まった。



やや、やんでれ?

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