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No more 冤罪

今回は短めです。

徹は、にこやかなゲオルグさんの顔をぶん殴りたい衝動に駆られた。

パーティメンバーがおっさんだらけならまだいい。

だが、前衛が多くバランスもめちゃくちゃとなっては、黙っていられない。


「わかった、いい。ハゲの奥さんと娘さんに、『お父ちゃんがかわいいギルド員にセクハラしすぎて、腹上死しそうになっているから助けてあげて』っていってくるわ」


徹は、書類を無言で突っ返す。


「おい、まてって。リアルに誤解解くのが難しそうな噂流そうとしてんじゃねーよ。ちょっ、カミラに金渡して買収するな!」


ゲオルグさんの目の前でカミラの手に金貨が2枚ほど握らされていた。


「ギルド長はひどい人です。毎日毎日セクハラばっかりして、仕事をちゃんとしてください。今朝だって、マリアさんのお尻を触って!」

「ふざけんなああ!あんな行き遅れの尻触るわけねーだろうが!触るんならうちの嫁の尻撫でまわすわ!」

「うわあ、この人いきなりのろけたよ。結婚してから15年以上経っているのに惚気られたよ」

「まあ、ギルド長と奥さんが仲いいのは有名ですからね」

「そんなおしどり夫婦の隠された真実!夫の浮気!そして結婚15年目にして訪れる離婚の危機」

「浮気なんて最低ですね!どうして男の人って、若い人好きなんでしょうか?」

「別に男・女に関係なく若い人好きではあるな。そこは本能だから仕方ない。ゲオルグも本能には勝てなかったってことか…」

「それにしてもひどいです。奥さんがかわいそうですよ」

「おいいい、俺はやってねえ!ふざけんなお前ら!」

「と、本人は言っていますが、どうしましょうか」

「ほとんど浮気した人間はやってないっていうからな。有罪だな」

「有罪ですね。私は奥さんと一緒に慰謝料を勝ち取るまでがんばります」

「俺が悪かった。カーマのパーティも別にちゃんと用意してあるからそろそろ勘弁してくれ」


割と目が本気な徹に恐怖したゲオルグさんはおとなしく用意してあった別のパーティメンバーの書類を取り出した。

徹が、書類に一通り目を通すと、カミラに合図を送った。


「OK。問題ない。カミラちゃんありがとう」

「いえいえ、報酬分働いただけであります」

「なんでそんなに息ぴったりなんだよ…」


ため息をつくゲオルグさんだったが、先ほどよりもだいぶ顔色がよくなっていた。







徹は、ゲオルグさんに明日の昼、パーティメンバーがギルドに集まることを聞いて宿に戻った。

ゲオルグさんの用意したメンバーは、癖が強そうだがそれなりだった。最初に渡された犯罪者名簿(中年尽くし)を考えると天国なんじゃないかと感じる。

それが、ゲオルグさんの狙いではあったのだが。

それでも、徹は改めて、書類にじっくりと目を通した。




コンラド・リラ

28歳 独身 戦士 レベル45


付属された写真には、小太りの男がうつっている。

注:グラムと呼ばれる全長2.5m重さ300㎏の大槌を振り回す戦闘スタイルのため、パーティプレイにはなじめず、クラン内で孤立する。


(むーん、性格は問題じゃないのか。要は彼をどうやって使うかって話になるんだろうね…まあ、なんとかなるか)




カシア・ラレナ

26歳 独身 狩人 レベル33


写真には目つきの悪い女がうつっていた。特筆すべき点はなんといってもとんがった耳!その耳に生えたフサフサな毛!

漆黒の髪の間から見えるそのケモミミはすでに至高のレベルといっても差し支えない。


(じゅ…純血のケモ耳キタコレ!おおう、素晴らしい。ハァハァ。性格きつそうだけどたまんねえな!)


注:ハーフだ、バーカ。


(馬鹿はお前だ。ハゲめ…ハーフとかそうじゃないとか些細な問題なんだよ!用はケモ耳であること!尻尾が生えているかどうか!そこだろうに…これだから毛が薄い人種はいかん)


注:普段から奇抜な言動が目立つ。そのせいか何度となくパーティ内でトラブルを起こす。奴隷として売られそうになったこともあり、ギルドに保護された経歴を持つ。


(むーん。奇抜な言動ねえ…サイコさんでないことだけを祈ろう…)




エッカルト・エーレンフリート

17歳 独身 剣士 レベル21


そこには、細面の少年がうつっている。いわゆるイケメン。そして年相応の雰囲気を持っている。

いまだ成長を残したその面影は、若さという青い果実の存在を示していた。


(きぃぃぃぃいいい。その若さが憎らしい!というほどでもないか。いいなー、若いっていいなー)


注:シャバリンクランに所属。クラン員2名。


(弱小クランかー。あのおっさん俺に押し付けたな…2名ってことは最後の一人も?)




フィーネ・キースリング

16歳 独身 弓師 レベル20


(ここまで来て素朴な疑問なんだけど、なんでゲオルグはこんなに独身押しているの?そんなに結婚しているのが偉いっていうのかよ!ああ゛ん!どうせ俺は独身さ!甲斐性もないさ!ちくしょう)


写真には地味ながらもかわいい女の子がうつっていた。その透明感を持つ女の子をみて、処女だと断じたあとは興味がなくなった。

注釈に『シャバリンクランに所属。クラン員2名。』とあったからではない。

どうせ、さっきのイケメンとそういう世界を作っているんだろうなどと思ったわけではない。絶対にだ!







書類を適当に放って、考える。

ゲオルグさんが用意したメンバーは、問題児2名に駆け出し2名。

最初に出された、犯罪者リストよりはよっぽどましだと思う。

パーティバランスも悪くはない。欲を言えば、もう一人魔術師がほしかったというぐらいだ。

そうしたら、自分が遊撃に回って、パーティの欠点を補うことができただろう。

だが、このパーティでは固定砲台になった方がよさそうである。


「とりあえず、簡単にルールでもきめとくかね。最低でも報酬の山分けで問題が起きないように」


そういって秘密基地(セーフハウス)に向かっていった。






最近、徹は日が出る前に起きだして、工房の方で、魔術の特訓をするようになっている。

工房は、さすがに神崎さんが、魔術研究や魔道具、ポーション類を制作するために作られた空間だけあって、魔術を勉強するにはもってこいの環境であった。

特に秘密基地(セーフハウス)とは違った、ピリッとした緊張をはらむ空気が充満された空間では、集中力が増し効率が上がるのだ。


徹は、詠唱魔術にそろそろ見切りをつけてきていた。

今まで徹が使っていた詠唱魔術の特徴は、なんといっても汎用性の高さだ。

同じ詠唱を唱えることができれば、誰でも同じ現象を引き起こすことができる。

しかも、魔術においては、下級、中級、上級、と別れており、下級に限ってしまえば魔力の低いものでも簡単に詠唱できる。

何ともお手軽魔術なのだ。

逆に言えば、潰しが効かない。

詠唱魔術は、詠唱により世界の法則に干渉する。聞こえはいいが、世界の法則はそう簡単には干渉できない。

やっていることは、詐欺のように世界の法則の穴をついて現象を顕現させること。

やれることに限りがあるのだ。

そのために、治癒魔法なんて便利なものはないし、属性分けされている魔術だができることは似たり寄ったりだ。

中級魔術までなら、銃火器と比べてどちらが強いのと聞かれれば、首をひねらざるを得ない。

そして、上級魔法にいたっては、迷宮で使うには効果範囲が広すぎる。

パーティで使えば確実にフレンドファイアが起こる。


それに代わる新しい魔術として徹が考えているものが、紋章魔術だ。

これは、魔術指とよばれる魔力を込めた指で文字を書くことによって現象を発現させる魔術に相当する。

この魔術はなかなか特徴的なもので、文字の意味がそのまま発現する魔術になる。

たとえば『水』とか『water』とか書けばそのまま水が出てくる。

注意点としては、『水』を草書体で書いたり、『water』を筆記体で書いたりなど崩した形で書いてはいけない。

文字が持つ本来の形を書かなければならない。そのために、字の下手な人間はこの魔術を習得するのが難しいという微妙なデメリットがある。

メリットは、その多様性、柔軟性、発展性の高さにある。

言葉がそのまま魔術として発現するのだ。可能性は無限に近い。その分、魔力消費などの問題が出てくるが、そこは頭の使い所だろう。





朝食をとりに酒場に行くと、ゾネのパーティは迷宮に潜っているといわれた。

ゾネのオフな時に鍛えてもらう約束をしていたが、とことん予定が合わない二人だった。

徹は仕方がないので、忘れていたレベル上げを終えて、買い物に行くことにした。


――――――――――――――――――――――

Name カーマ・トール

Level 27

Age 30

Job none

HP 210

MP 8

Str 46

Vit 21

Int 1

Dex 28

Agi 58(4↑)

Mnd 25

Luck 35


Skill 持たざる者【上位】


装備 ????

   ?????????

   ????????

――――――――――――――――――――――


(むぅ、さすがにあんまり上がらないし、だいぶAgiにふっているからAgiもあんまり上がんなくなってきたなあ…)


前回の戦闘で、Agi(素早さ)の恩恵を大きく感じた徹は、Agi(素早さ)を4上げたてみた。

そのところ、4振っただけでレベルが上がってしまったのだ。


(まあ、いいか。それより、印章魔術を使いこなさないとな…こんなことなら習字やっておけばよかったな)


徹はぼやきながらも商店街を冷やかし、ギルドに向かうのだった。

ギルドに着くころには、やはり両手に野菜やら肉やら大量に荷物を抱え込むことになっていた。


痴漢とか怖いよね…何がとは言わないけど



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