ユウと聡 「俺はシオンだって……」
仕事だとは言っても、空を歩くのは気分が良かった。
見上げれば故郷の記憶が蘇り、下を覗けば光り輝く街。
明かりが見渡す限り一面に広がる景色は心地がいい。
そして、あの〔光〕の数はこれからの仕事の数。
人の願いの数。
「ユウ、ぼーっとしてないで、ちゃんと見とけよな。」
「ああ、うん。わかってるよ。」
パートナーの注意を受けて気を取り直す。ふと視界の端に一際輝く〔光〕を見つけた。
「あ……聡、あそこにいるよ。〔願い人〕。」
そうか、と返事をした後、言っても意味がないと分かっている顔で聡は抗議した。
「その呼び名はやめろって言ってるだろ。星界にいた頃みたいにシオンと呼んでくれって何度も……、」
聡の言い分は聞かずに、ユウは〔光〕にむかって下りていく。
「あ、ちょ……。ったく、待てってば!」
聞く耳を持たないユウに、聡は仕方なくついていった。
地上に落ちていくのが苦手な聡にとって、〔願い人〕を見つけた時のユウが繰り出す降下速度はひどく速い。
〔配達人〕としての使命感が彼を見境なくさせるのだろう。
――まぁ、あれは単に届けるのが好きなだけだよな……〔スターダスト〕を。
それはそのまま自分にも言えることだったので、聡は何も言わず必死にユウを追いかける。
星と〔願い〕の光が混ざった。