三分ヒーロー
人気のない夜道を歩いていると、突然、空からの光に包まれ、俺は宇宙船に連れてこられた。
宇宙人にあれこれ実験されたり、改造されたりしちゃうんだろうかとドキドキしていたら、案外友好的だった。
「突然連れてきて、すまない。
じつは、私は今までひそかにヒーローとして、人助けをしていた。
しかし故郷に帰らなくてはならなくなった。
後任のヒーローをやってくれる人を探していたのだ。
よかったら君がやってくれないか?」
大変なことを意外と軽いノリで言うな。
「なんで、俺に?」
「君は、格闘技をやっているだろう?
それにこの前、ひったくりを捕まえて、警察署から表彰された。
それでちょうどいいと思って。」
わりと、いい加減?
それに俺の個人情報、ダダ漏れだ。
「これが、ヒーロースーツだ。
これを着ると、結構無敵になる。
打撃による痛みも感じないし、相手のナイフや銃などの攻撃も効かない。
こちらの攻撃は、キックやパンチだけだ。
残念だが、ビームやミサイルなどは出ない。
一応三分以内なら空も飛べる。」
それ、十分強くない?
「くれぐれも悪用はしないでほしい。
犯罪などに使用した場合、着用者ごと爆発する仕様だから。」
なに、それ!危ないじゃん。
「あと、言い忘れたけど、そのスーツ効果が三分しか持続しないから、三分で片づけられる案件にしてね。
使用期限は、十年。使えなくなった時点で、引退ね。
それじゃあ、よろしく~。」
言いたいことだけ言って、宇宙人は俺を元の地点に戻した。
まだやるともやらないとも言ってないのに。
仕方ないな、やるか。
こういう俺の性格も踏まえて選んだんだろうな。
さて、どんな人助けをしたものか。
三分しか持たないんだったら、人質立てこもり事件なんてのは、無理だな。
三分で片付く気がしない。
強盗犯の追跡とかも無理だ。
三分じゃ捕まえられない。
途中で帰るわけにもいかないし。
俺は、ない頭で一生懸命考えた。
そうだ、近頃問題になっている熊を撃退するってのは、どうだ?
熊の生息するあたりまで行って、人間は強いんだぞー、と熊にちょこっと攻撃を加えて、山に帰ってもらう。
二度と人里に下りないよう、きつめにお仕置きして。
なんか、いい案のような気がしてきた。
それでいこう。
ニュースで熊の目撃情報があった場所に行ってみた。
車で目撃情報のあった地点まで行き、地上で熊を見つけてからスーツを着用した。
いた、いた、人里に下りて、ごみをあさっている熊が。
早くしないと、三分経っちゃうな。
最初は、金太郎よろしく相撲の技で投げてみた。
あんまりダメージを受けてないな。
がっぷり四つに組んでどうすんだ、俺。
投げはだめ。
次は、柔道の締め技。
効いてはいるんだけど、時間がかかりそう。
これも没。
結局、キックボクシングにした。
何発か、キックやパンチをお見舞いすると、熊は山へ逃げ帰った。
よし、成功。
しばらく俺は、熊のお仕置きに専念した。
人を襲っていた熊だけは、仕方なく成仏してもらった。
さえないヒーローだけど、誰かの役に立っていると信じたい。
十年、これを続けるかはわからないけど、当分熊撃退ヒーローだ。
なにか別の名案が閃くまでは。




