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三分ヒーロー

作者: 山田裕子
掲載日:2026/08/02

人気のない夜道を歩いていると、突然、空からの光に包まれ、俺は宇宙船に連れてこられた。

宇宙人にあれこれ実験されたり、改造されたりしちゃうんだろうかとドキドキしていたら、案外友好的だった。


「突然連れてきて、すまない。

じつは、私は今までひそかにヒーローとして、人助けをしていた。

しかし故郷に帰らなくてはならなくなった。

後任のヒーローをやってくれる人を探していたのだ。

よかったら君がやってくれないか?」


大変なことを意外と軽いノリで言うな。


「なんで、俺に?」


「君は、格闘技をやっているだろう?

それにこの前、ひったくりを捕まえて、警察署から表彰された。

それでちょうどいいと思って。」


わりと、いい加減?

それに俺の個人情報、ダダ漏れだ。


「これが、ヒーロースーツだ。

これを着ると、結構無敵になる。

打撃による痛みも感じないし、相手のナイフや銃などの攻撃も効かない。

こちらの攻撃は、キックやパンチだけだ。

残念だが、ビームやミサイルなどは出ない。

一応三分以内なら空も飛べる。」


それ、十分強くない?


「くれぐれも悪用はしないでほしい。

犯罪などに使用した場合、着用者ごと爆発する仕様だから。」


なに、それ!危ないじゃん。


「あと、言い忘れたけど、そのスーツ効果が三分しか持続しないから、三分で片づけられる案件にしてね。

使用期限は、十年。使えなくなった時点で、引退ね。

それじゃあ、よろしく~。」


言いたいことだけ言って、宇宙人は俺を元の地点に戻した。

まだやるともやらないとも言ってないのに。

仕方ないな、やるか。

こういう俺の性格も踏まえて選んだんだろうな。


さて、どんな人助けをしたものか。

三分しか持たないんだったら、人質立てこもり事件なんてのは、無理だな。

三分で片付く気がしない。

強盗犯の追跡とかも無理だ。

三分じゃ捕まえられない。

途中で帰るわけにもいかないし。


俺は、ない頭で一生懸命考えた。

そうだ、近頃問題になっている熊を撃退するってのは、どうだ?

熊の生息するあたりまで行って、人間は強いんだぞー、と熊にちょこっと攻撃を加えて、山に帰ってもらう。

二度と人里に下りないよう、きつめにお仕置きして。

なんか、いい案のような気がしてきた。

それでいこう。


ニュースで熊の目撃情報があった場所に行ってみた。

車で目撃情報のあった地点まで行き、地上で熊を見つけてからスーツを着用した。

いた、いた、人里に下りて、ごみをあさっている熊が。

早くしないと、三分経っちゃうな。


最初は、金太郎よろしく相撲の技で投げてみた。

あんまりダメージを受けてないな。

がっぷり四つに組んでどうすんだ、俺。

投げはだめ。


次は、柔道の締め技。

効いてはいるんだけど、時間がかかりそう。

これも没。


結局、キックボクシングにした。

何発か、キックやパンチをお見舞いすると、熊は山へ逃げ帰った。

よし、成功。


しばらく俺は、熊のお仕置きに専念した。

人を襲っていた熊だけは、仕方なく成仏してもらった。

さえないヒーローだけど、誰かの役に立っていると信じたい。

十年、これを続けるかはわからないけど、当分熊撃退ヒーローだ。

なにか別の名案が閃くまでは。

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