第55話 フェルトハイム会談
フェルトハイムの町は、騒然としていた。
「三国会談!?」
「王様の国の偉い人たちが来るって!?」
市場も酒場も、その話でもちきり。
◇ ◇ ◇
金獅子亭。
ガレスが頭を抱えていた。
「なんでこの町なんだよ!」
ミレイは苦笑する。
「すみません……」
「私たちも、こんな大事になるとは」
◇ ◇ ◇
だが町の人々は、次第に笑い始めた。
「レオが決めたんだろ?」
「だったら文句ねえ」
ガレスが肩を叩く。
「お前は、ここ出身だ」
「この町の誇りだ」
レオは少し照れくさそうに笑った。
◇ ◇ ◇
会談準備は急ピッチで進む。
臨時の警備。
外交宿舎の確保。
街道の整備。
◇ ◇ ◇
エドワードが地図を広げる。
「公国使節は南門」
「北方連邦は港側から」
「衝突を避ける導線を作る」
フェルトハイムは小さな町。
外交都市ではない。
だからこそ――
軍事威圧が難しい。
◇ ◇ ◇
ミレイは町を歩きながら思う。
この場所が、世界の中心になるなんて。
◇ ◇ ◇
ルナが言う。
「なんでえらいひとたち、ここにくるの?」
ミレイはしゃがんで答える。
「みんな、けんかしないように話すためよ」
ルナは考えて言った。
「じゃあ、このまち、へいわのまちだね」
ミレイは笑う。
「そうね」
◇ ◇ ◇
数日後。
まず到着したのは北方連邦。
巨大な外交船団。
整然とした軍服。
冷たい規律。
◇ ◇ ◇
続いて。
南方公国の馬車隊。
華やかな装飾。
重騎士の護衛。
威厳の行進。
◇ ◇ ◇
小さな町の広場。
三つの旗が並ぶ。
王国。
公国。
北方連邦。
◇ ◇ ◇
会談前夜。
レオはフェルトハイムの泉へ向かう。
始まりの場所。
そこにミレイが来る。
「緊張してます?」
レオは少し笑う。
「かなり」
◇ ◇ ◇
ミレイは手を握る。
「でも大丈夫」
「ここは、あなたが一番強い場所です」
レオは静かに頷く。
◇ ◇ ◇
同じ頃。
北方連邦使節団の宿舎。
連邦代表が言う。
「王国は均衡を作るつもりだ」
部下が答える。
「崩しますか?」
代表は静かに笑う。
「均衡は――」
「崩れた瞬間が一番儲かる」
◇ ◇ ◇
南方公国宿舎。
アシュレイが窓の外を見る。
「小さな町だ」
だがその目は鋭い。
「だがここで、王国の真価が見える」
◇ ◇ ◇
そして翌朝。
フェルトハイム広場。
三国代表が集まる。
王国代表。
レオ・アシュトン。
◇ ◇ ◇
世界の均衡が。
小さな町で動き始める。




