表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/71

第53話 見えない手

王国へ帰還したレオ。


外交は成功。


条約は保たれた。


だが――


王都の空気が、どこか違う。


   ◇ ◇ ◇


屋敷。


ミレイは静かに報告を受ける。


「最近、見慣れない女が市場にいます」


侍女の声は低い。


「子どもをじっと見ていたと」


ミレイの背筋に冷たいものが走る。


   ◇ ◇ ◇


数日後。


ルナとソラを連れて庭へ出たとき。


遠くの石柱陰に、一瞬だけ人影。


見たことのない紋様のブローチ。


王国でも公国でもない。


   ◇ ◇ ◇


その夜。


レオに報告する。


「第三国の可能性がある」


北方連邦。


公国を牽制していた国。


彼らは外交均衡を歓迎しない。


均衡は“安定”を生む。


不安定な国の方が扱いやすい。


   ◇ ◇ ◇


エドワードが低く言う。


「王位を揺さぶるには、家族が最短だ」


殺さない。


奪わない。


ただ不安を植え付ける。


レオの理性を鈍らせる。


政治判断を狂わせる。


   ◇ ◇ ◇


翌日。


ルナが言う。


「ねえまま」


「こないだ、おねえさんが“おうじさまのおひめさま?”ってきいた」


ミレイの手が止まる。


甘い声。


優しい笑顔。


毒は、いつも柔らかい。


   ◇ ◇ ◇


王宮警備を強化。


移動経路を変更。


だが。


“姿が掴めない”。


これは挑発ではない。


観察。


   ◇ ◇ ◇


その夜。


ソラの寝室の窓に。


小さな石。


封蝋付きの紙片。


レオが開く。


短い一文。


「王位は血でなく揺らぎで倒れる」


署名なし。


だが封蝋は北方連邦商館の蝋質。


薄く混ぜられた特殊樹脂。


決定打にならない灰色。


それが一番厄介。

   ◇ ◇ ◇

石に巻かれていた紙片は、ただの脅しではない。


「王位は血でなく揺らぎで倒れる」


血統問題を再燃させ、

内部に不信を生む。


だがそれだけではない。


北方連邦は理解している。


王国の政治を動かすのは――今、レオだ。


その判断力を狂わせる最短距離は、


家族を揺らすこと。


   ◇ ◇ ◇


エドワードが報告する。


「北方連邦は、近年“保護外交”を多用している」


「不安定国の王族に“安全保障提案”を持ちかける」


つまり。


不安を煽り、

その解決策として“連邦依存”を差し出す。


   ◇ ◇ ◇


レオは静かに言う。


「こちらから揺らがない」


「恐怖を表に出さない」


北方の狙いは不安拡散。


ならば。


不安を見せない。


   ◇ ◇ ◇


ミレイはレオを見つめる。


「私も、動きます」


レオが眉を上げる。


「何を?」


「北方商館へ行きます」


「公式ではなく、社交の形で」


レオは一瞬、止めかける。


だが。


彼女の目は揺れていない。


   ◇ ◇ ◇


翌日。


ミレイはあえて表へ出る。


ルナの手を引き、

ソラを抱き、


市場を歩く。


護衛は見える範囲に。


堂々と。


噂を消す最短手は、


“怯えていない姿”を見せること。


   ◇ ◇ ◇


北方商館。


応接室。


ミレイは柔らかく微笑む。


「最近、我が家の庭に石が飛んできまして」


商館長の顔が固まる。


「子どもが驚きました」


静かだが重い一言。


「偶然でしょうか?」


   ◇ ◇ ◇


それは脅しではない。


宣言。


こちらも見ている。


北方は理解する。


この家族は、揺れない。


   ◇ ◇ ◇


夜。


屋敷。


レオが静かに言う。


「君は、本当に強い」


ミレイは微笑む。


「家族ですから」


ルナが眠りながら呟く。


「まま、かっこいい」


ソラが小さく笑う。


   ◇ ◇ ◇


北方連邦商館。


商館長が報告書を書く。


「対象は心理的動揺を見せず」

「揺さぶり戦術、効果薄」


それでも。


完全に手を引くわけではない。


国際均衡は続く。


   ◇ ◇ ◇


レオは窓の外を見る。


外交戦とは、見えない力比べ。


だが。


家族が揺らがなければ、国も揺らがない。


政治は拡張した。


国内 → 公国 → 第三国。


王国は、今や三方向から試されている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ