表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/70

第52話 海を越える誓約

公国訪問が正式に決まった。


「王族補佐位として、レオ殿に同行していただく」


エドワードが言う。


「条約再確認は対等であるべきだ」


つまり。


公国側の“確認要求”を逆手に取り、

こちらも精査に赴く。


   ◇ ◇ ◇


屋敷。


ミレイは静かに話を聞いていた。


「公国へ……ですか?」


「うん」


レオは頷く。


「僕が行く」


短い沈黙。


「危険は?」


「公的訪問だ。露骨なことはできない」


だが。


油断はできない。


   ◇ ◇ ◇


ルナが首を傾げる。


「ぱぱ、どこいくの?」


「遠い国だよ」


「おみやげある?」


レオは笑う。


「ある」


その笑顔の裏で、緊張が走る。


   ◇ ◇ ◇


数日後。


王国の船団は南方へ向かった。


蒼い海。


強い風。


公国の港は、王国よりも巨大だった。


要塞のような波止場。


軍艦の多さ。


明確な軍事国家。


   ◇ ◇ ◇


出迎えたのはアシュレイ。


完璧な礼。


「ようこそ、補佐位殿」


言葉は丁寧。


だが目は測っている。


   ◇ ◇ ◇


公国王都は、華やかで冷たい。


規律が強い。


笑顔は少ない。


「歓迎晩餐を用意しました」


条約再確認の前に、心理戦。


   ◇ ◇ ◇


晩餐の席。


公国王が座す。


壮年の男。


強い視線。


「王族補佐位か」


一言。


値踏み。


レオは一歩も引かない。


「条約は両国の未来を守るもの」


「その再確認に来ました」


空気が凍る。


公国王は静かに笑う。


「若いな」

   ◇ ◇ ◇

翌日。


公国王城、条約精査会議。


重厚な石造りの円卓。


両国の法務官、軍務官、書記官が並ぶ。


空気は冷たい。


   ◇ ◇ ◇


アシュレイが条約原本を開く。


「第七条、統治正統性に基づく同盟継続」


「貴国は“法的承認”を正統性と解釈する」


レオが頷く。


「公国は血統を重視する、と主張された」


公国側法務官が答える。


「血統は安定の基盤だ」


   ◇ ◇ ◇


レオは静かに紙を差し出す。


「では問います」


「公国の第四王子の王位放棄宣言は、法的整合性が保たれていますか?」


一瞬。


会議室が止まる。


アシュレイの視線が鋭くなる。


   ◇ ◇ ◇


公国では最近――


第四王子が突如、宗教修道院へ入った。


王位継承順位三位。


“自主的退位”とされている。


だが。


文書は曖昧だった。


   ◇ ◇ ◇


「それは内政です」


公国法務官が言う。


レオは静かに返す。


「我が国の王族承認も内政です」


沈黙。


対等の刃。


   ◇ ◇ ◇


さらに。


レオは続ける。


「また、公国港湾の関税変更は、条約第五条の“自由通商維持”に抵触する可能性がある」


公国側書記官の顔色が変わる。


王国は事前調査を済ませていた。


公国も内部で揺れている。


   ◇ ◇ ◇


その夜。


晩餐後。


アシュレイが低く言う。


「よく調べたな」


「お互い様です」


レオは微笑む。


「疑念は双方にある」


アシュレイは一瞬だけ本音を見せる。


「我が国も安定しているわけではない」


それは事実。


公国内では王位継承問題が燻っている。


   ◇ ◇ ◇


その時。


第三国の小国使節が姿を見せる。


北方連邦の紋章。


静かな観察者。


レオは理解する。


これは二国問題ではない。


三国構図。


公国を牽制するために、

北方連邦が動き始めている。


   ◇ ◇ ◇


翌日。


最終協議。


両国は合意に至る。


・条約第七条は“法的継承”と明文化

・港管理は現行維持

・関税は三ヶ月以内に再検討


表面上は平和。


しかし。


互いに弱点を掴み合った。


   ◇ ◇ ◇


港に戻る帰路。


アシュレイが最後に言う。


「今日のところは引き分けだ」


「だが覚えておけ」


「血統問題は、貴国の永遠の火種だ」


レオは答える。


「公国の継承も同じです」


視線が交わる。


敵意ではない。


理解。


   ◇ ◇ ◇


船が出航する。


海風の中。


レオは思う。


外交とは勝敗ではない。


均衡だ。


そして。


この均衡は、いつでも崩れる。


物語は、国際舞台へ本格拡張された。


次の一手は――どこから来る?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ