第39話 真実の公表
王宮大広間。
いつもより重い空気が漂っていた。
貴族たち、大臣、近衛騎士団長、そして——王。
レオとエドワードは、壇上に立っている。
ざわめき。
「何の緊急招集だ?」
「まさか、外交問題か?」
エドワードが、一歩前に出た。
「本日は、五年前に関わる重大な件について報告いたします」
空気が凍る。
五年前。
それは——レオン王子の死。
そして、影武者の誕生。
◇ ◇ ◇
レオが前に出る。
静寂。
彼は深呼吸した。
「私は、レオ・アシュトン」
堂々と。
「かつて、レオン王子の影武者でした」
ざわつきが走る。
だが誰も否定しない。
今やそれは、公然の事実だ。
レオは、革手帳を掲げる。
「これは、本物のレオン王子の遺品です」
ざわめきが止まる。
エドワードが続ける。
「保管庫の再整理の際、発見されました」
レオは、ゆっくり開く。
「王子は、死の直前——異変に気づいていました」
そして、紙片を掲げた。
「『Gに気をつけろ。薬は偽物だ』」
空気が、完全に止まる。
◇ ◇ ◇
「G……とは誰だ?」
ざわめき。
レオは迷わない。
「グレゴリー前宰相」
何人かが息を呑む。
王の顔が厳しくなる。
「続けろ」
レオはまっすぐ見つめた。
「王子は、改革を考えていた。透明性と対話を」
「強権体制は、脅威だった」
「そして王子は、毒殺された可能性があります」
衝撃。
会場が騒然となる。
「証拠はあるのか!?」
レオは冷静だった。
「当時の検死記録。薬の管理記録。
検査の省略命令の署名」
エドワードが別の書類を掲げる。
「署名者は——グレゴリー」
一気に空気が変わる。
◇ ◇ ◇
一人の老貴族が叫ぶ。
「そんな話、今さら蒸し返して何になる!」
レオの声は静かだった。
「真実が、国を強くする」
「隠蔽は、国を弱くする」
その言葉は、広間に深く落ちた。
「私は影武者でした」
「ですが、彼の死を利用したくはありません」
「彼の意思を、正しく継ぎたい」
王が、ゆっくり立ち上がる。
全員が膝を折る。
王の声は低く重い。
「再調査を命じる」
大広間が震える。
「グレゴリーの関係者、当時の医官、記録係をすべて拘束」
衝撃。
完全に引き返せない。
王はレオを見た。
「レオ・アシュトン」
「はい」
「お前は覚悟の上で、この件を開いたな」
レオは迷わず答える。
「はい」
「ならば最後まで責任を持て」
「承知しました」
◇ ◇ ◇
会議解散後。
回廊。
エドワードが低く言う。
「あなたは、標的になります」
「分かっています」
「後悔は?」
レオは微笑む。
「ありません」
ただ一つ。
「家族は守ります」
エドワードが強く頷く。
「こちらも全力で」
◇ ◇ ◇
その頃。
屋敷。
ミレイは落ち着かない。
何かが動いている。
胸騒ぎ。
ルナが不安そうに言う。
「まま、なんかこわい」
その瞬間。
屋敷の外で、金属の音。
ミレイの心臓が跳ねる。
近衛騎士の声。
「警備強化!持ち場につけ!」
ミレイはソラを抱き、ルナを引き寄せた。
(始まった……)
◇ ◇ ◇
王都の片隅。
黒衣の男が報告を聞いていた。
「公表された?」
「はい」
男の唇が歪む。
「愚かだな、レオ顧問」
「英雄気取りか」
ゆっくりと立ち上がる。
「ならば、見せてやろう」
「真実の代償を」
◇ ◇ ◇
夜。
レオが帰宅。
ミレイは駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
レオは抱きしめる。
「大丈夫。でも——」
屋敷の外は、武装兵が配置されている。
完全に“戦時態勢”。
ルナが震える。
「ぱぱ……?」
レオはしゃがむ。
「怖くないよ」
「お父さんが守る」
その声は優しい。
けれど、その目は——戦場のそれだった。
◇ ◇ ◇
王宮は激震。
隠されていた傷が、開いた。
今、王国は選択の岐路に立っている。
真実を貫くか。
闇に屈するか。
そして。
レオとミレイの家族は。
初めて、“本当の敵”に名前を与えた。
物語は次章へ。




