第34話 ルナのしってる、さいきんのぱぱとまま。
ルナはね、しってるんだ。
ぱぱとままは、なかよしだけど、
ときどき、ちょっとちがう。
むかしのぱぱはね、
おうちにかえると、すぐルナをだっこして、
ぐるーってまわしてくれた。
ままはね、
それをみて、わらってた。
でも、さいきんのぱぱは——
「ただいま」
っていって、にこってするけど。
そのにこって、
ちょっとだけ、ゆっくり。
ルナは、それ、わかるんだ。
◇ ◇ ◇
きのうもね、
ぱぱ、ちょっとつかれてた。
ルナが「あそぼ!」っていったら、
「うん、あとでね」
って、やさしいこえでいった。
やさしいけど。
ほんとに、やさしいけど。
でも、ルナは、しってる。
「あとでね」は、
ほんとは「いまはむり」なんだ。
◇ ◇ ◇
でもね、よるになると——
ぱぱは、ちょっとちがう。
ままが、ソラをねかせたあと。
ルナは、ねたふりをする。
ほんとは、ねむくないときもある。
ベッドのすきまから、ちょっとだけみるんだ。
ままとぱぱ、くっついてる。
ぎゅーって。
ぱぱが、ままをだきしめる。
ちょっとだけ、つよい。
ままは、やさしく、ぱぱのせなかをなでる。
「だいじょうぶですよ」
っていう、ままのこえ。
ぱぱはね、
そのとき、ちょっとこどもみたい。
ルナより、ちょっとだけちいさくみえる。
◇ ◇ ◇
あるよる。
ルナは、ソラがなくから、おきちゃった。
ままは、ソラをだいてる。
ぱぱは、ルナのところにきた。
「どうした?」
「こわいゆめ、みた」
っていったら、
ぱぱは、すぐルナをだきしめた。
いつもより、つよく。
「大丈夫だよ」
そのこえはね、
ルナにいってるのに、
ちょっとだけ——ちがう。
なんだろう。
ままにいってるみたいな。
◇ ◇ ◇
あさ。
ソラがねむってるとき。
ままは、ちょっとだけつかれてる。
でも、ぱぱのまえでは、わらう。
ぱぱも、ままのまえでは、わらう。
ルナは、しってる。
ふたりは、ちょっとだけがんばってる。
でもね。
ルナ、こまってないよ。
だって。
ぱぱは、ルナとおさんぽいくもん。
「最近、ルナえらいね」
って、いうもん。
そのときはね、
ちゃんと、ほんとのこえ。
ちゃんと、ほんとのぱぱ。
◇ ◇ ◇
ルナはね。
ぱぱが、ままのこと、だいすきなの、しってる。
ときどき、ソラより、ルナより、
ままのこと、いちばんみてる。
それ、わかる。
でも、イヤじゃない。
ちょっとだけ、くすぐったい。
◇ ◇ ◇
きょうね、
ぱぱが、ままをみて、
「……はなれないで」
っていってた。
ルナ、きいちゃった。
まま、わらってた。
「はなれませんよ」
って。
そのときのぱぱ。
すっごく、うれしそうだった。
ルナ、ちょっとだけおもった。
ぱぱは、つよいけど。
ままがいないと、だめなんだ。
ソラは、ままがいないとないちゃう。
ぱぱはね、
ままがいないと、ちょっとだけ、さみしい。
◇ ◇ ◇
でもね。
ルナが「ぱぱー!」っていうと。
ぱぱ、ちゃんとくる。
すぐ、くる。
それが、ルナのぱぱ。
だから——
ルナは、しってる。
おうちは、だいじょうぶ。
ちょっとちがっても。
ちょっとつかれてても。
ぎゅーって、すれば、なおる。
◇ ◇ ◇
ルナは、ひみつをきめた。
ぱぱが、ちょっとだけつかれてるなら。
ままが、ちょっとだけがんばってるなら。
ルナが、がんばればいい。
おねえちゃんだもん。
◇ ◇ ◇
つぎのひ。
ぱぱが、しごとからかえってきた。
「ただいま」
いつものこえ。
でも、ルナは、みのがさない。
ちょっとだけ、つかれてる。
だから、ルナは、いわなかった。
「あそぼ!」
かわりに。
「ぱぱ、おつかれさま」
って、いった。
ぱぱ、びっくりした。
「……ありがとう」
そのこえは、ちょっとやわらかい。
ルナ、うれしい。
◇ ◇ ◇
よる。
ソラがなく。
ままが、だっこ。
ルナは、そっとベッドからおりた。
「ルナ、どうしたの?」
ままがきく。
「ルナが、うたう」
ルナは、ソラのまえにすわった。
「ねんね、ねんね、ソラ」
へたっぴなうた。
でも、いっしょうけんめい。
ソラ、ちょっとだけ、なきやんだ。
ぱぱが、ルナをみてる。
なんだか、まぶしそうなかお。
「……ありがとう、ルナ」
そのときのぱぱのこえは。
ぜんぶ、ほんものだった。
◇ ◇ ◇
あるひのあさ。
ままが、ちょっとだけ、ないてた。
ソラをだいて、しずかに。
ルナ、みちゃった。
でも、しらんぷりしなかった。
そっと、ままのすそをつかんだ。
「まま」
「どうしたの?」
まま、すぐ、わらう。
そのわらいかた、ちょっとだけ、ちがう。
「ルナね」
「うん?」
「ぱぱも、ままも、だいすき」
ままのめが、まるくなる。
「ソラも、だいすき」
「……ありがとう」
まま、ぎゅーってしてくれた。
ちょっとだけ、つよい。
◇ ◇ ◇
そのひのよる。
ぱぱとままが、はなしてた。
「最近、ルナ頑張ってるね」
「ええ……」
「気を遣わせちゃったかな」
ルナ、ドアのところで、きいちゃった。
でも、ルナ、おこらない。
ぱぱとままが、そうやって、かんがえてくれるの、
うれしいから。
◇ ◇ ◇
つぎのひ。
ぱぱがおやすみだった。
「ルナ、今日は二人で出かけようか」
「ほんと!?」
ソラとままは、おうち。
ルナとぱぱは、おさんぽ。
てをつないで、あるく。
「ルナ」
ぱぱが、しゃがんだ。
「最近、無理してない?」
ルナ、かんがえた。
ちょっとだけ、ほんとのこと、いう。
「ちょっとだけ」
ぱぱのめが、ちょっとだけ、いたそう。
「でもね」
ルナ、ぱぱのほっぺさわる。
「ルナ、おねえちゃんだもん」
「……そっか」
ぱぱが、ぎゅってだきしめる。
「でもね、ルナ」
まじめなこえ。
「お姉ちゃんだけど、まだ子どもなんだよ」
「……うん」
「甘えてもいい」
「……ほんと?」
「本当」
ルナ、ちょっとだけ、ほっとした。
◇ ◇ ◇
そのよる。
ベッドで、四人でねた。
ソラは、ままのうで。
ルナは、ぱぱのうで。
でも、ねむるまえ。
ルナ、ぱぱのほうをむいた。
「ぱぱ」
「うん?」
「ぱぱも、さみしかったら、いって」
「……」
「ルナ、ぎゅーする」
しずかなへや。
ぱぱのこえが、すこしだけ、あったかい。
「……ありがとう、ルナ」
ままが、やさしくわらう。
「家族ですね」
「うん」
ぱぱがいう。
「家族だ」
◇ ◇ ◇
ルナは、ねむるまえにおもう。
ぱぱは、つよい。
でも、ときどき、ままにぎゅーってする。
ままは、やさしい。
でも、ときどき、ちょっとだけ、ないちゃう。
ソラは、ちいさい。
でも、すごく、みんなをつなぐ。
そして。
ルナは、おねえちゃん。
でも、こども。
それで、いい。
ぎゅーってすれば、
おうちは、だいじょうぶ。




