第29話 四人家族の、賑やかな日々。
息子が生まれて、一週間が経った。
レオとミレイは、名前を考えていた。
「何がいいかな」
レオが、赤ちゃんを抱きながら呟いた。
「ルナは、月でしたね」
ミレイが、思い出すように言った。
「うん。じゃあ、この子も——天に関係する名前がいいかな」
「天……」
ミレイは、少し考えた。
「ソラ、とか?」
「ソラ……」
レオは、赤ちゃんを見つめた。
「空のように、広く大きく育ってほしい——」
赤ちゃんが、小さく笑った気がした。
「ソラ、いいね」
レオは、微笑んだ。
「ソラ。僕たちの息子」
「はい……」
ミレイも、涙を浮かべて微笑んだ。
「ルナとソラ。素敵な名前ですね」
二人は、赤ちゃん——ソラを見つめた。
家族が、また増えた。
◇ ◇ ◇
ソラが生まれてから、家の中は——賑やかになった。
「ぱぱ! ソラが、ないてる!」
ルナが、慌てて呼びに来る。
「オギャー! オギャー!」
ソラの泣き声が、響く。
「はいはい、今行くよ」
レオは、急いでソラのところへ。
「どうした、ソラ。お腹空いた?」
でも、ソラは泣き止まない。
「おむつかな……」
レオは、おむつを確認した。
「あ、濡れてる」
素早く、おむつを替える。
一人目の経験が、活きている。
「よし、これで大丈夫」
ソラは、ようやく落ち着いた。
「ぱぱ、すごい!」
ルナが、目を輝かせた。
「ルナも、できるようになりたい!」
「そっか。じゃあ、教えてあげようか」
「ほんと!?」
レオは、ルナに——赤ちゃんの世話の仕方を教え始めた。
◇ ◇ ◇
ある日の午後。
ミレイは、ソラに授乳していた。
ルナは、隣で絵本を読んでいる。
レオは、仕事から早めに帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
ミレイが、微笑んだ。
「ぱぱ、おかえり!」
ルナが、駆け寄ってきた。
「ただいま、ルナ」
レオは、ルナを抱き上げた。
「今日は、どうだった?」
「ソラのおせわ、した!」
ルナは、誇らしげに言った。
「おむつ、かえるのてつだった!」
「すごいじゃないか!」
レオは、ルナの頭を撫でた。
「ルナ、いいお姉ちゃんだね」
「えへへ」
ルナは、嬉しそうに笑った。
平和な日常。
幸せな日常。
◇ ◇ ◇
でも、二人の子育ては——やはり大変だった。
夜中、ソラが泣く。
ルナも、寂しくなって起きてくる。
「ままー……」
「どうしたの、ルナ?」
ミレイは、ソラを抱きながら聞いた。
「ソラばっかり、みてる……」
ルナは、涙を浮かべた。
「ルナのこと、すき?」
ミレイの胸が、痛んだ。
「もちろん、好きよ」
ミレイは、片手でルナを抱き寄せた。
「ルナは、大切な娘よ」
「ほんと……?」
「本当よ」
その時、レオが起きてきた。
「どうしたの?」
「ルナが……」
「そっか」
レオは、ルナを抱き上げた。
「ルナ、お父さんと一緒に寝よう」
「うん……」
ルナは、レオにしがみついた。
「お母さんは、ソラの世話で忙しいから——お父さんが、ルナと一緒にいるよ」
「……ありがと」
レオは、ルナを寝室に連れて行った。
ミレイは、涙を拭った。
ルナに、寂しい思いをさせてしまった……。
◇ ◇ ◇
翌朝、ミレイはレオに相談した。
「ルナに、もっと時間を作ってあげないと……」
「うん」
レオは、頷いた。
「僕も、そう思う」
「でも、ソラの世話もあるし……」
「大丈夫」
レオは、ミレイの手を握った。
「二人で、協力しよう」
「はい……」
「それに」
レオは、微笑んだ。
「ルナは、いい子だ。きっと、分かってくれる」
ミレイは、レオの胸に顔を埋めた。
「ありがとうございます……レオさんがいてくれて……」
「当然だよ。僕たちの子どもだから」
◇ ◇ ◇
それから、レオとミレイは——意識的に、ルナとの時間を作った。
「ルナ、お父さんと散歩に行こうか」
「うん!」
レオとルナは、二人で町を歩く。
「ルナ、最近——お姉ちゃん、頑張ってるね」
「えへへ」
ルナは、照れくさそうに笑った。
「ソラ、かわいいから」
「そっか」
レオは、ルナの手を握った。
「でもね、ルナ」
「うん?」
「お父さんとお母さんは——ルナのことも、ソラと同じくらい愛してるよ」
「ほんと?」
「本当」
レオは、しゃがんでルナと目線を合わせた。
「ルナは、僕たちの大切な娘だ。それは、ずっと変わらない」
ルナの目から、涙が溢れた。
「ぱぱ……」
「どうした?」
「うれしい……」
ルナは、レオに抱きついた。
「ぱぱ、だいすき……」
「お父さんも、ルナが大好きだよ」
レオは、ルナを強く抱きしめた。
◇ ◇ ◇
一方、ミレイは——ソラと二人きりの時間を過ごしていた。
「ソラ、お母さんだよ」
優しく、語りかける。
ソラは、ミレイを見つめている。
まだ、焦点は定まらないけれど——。
確かに、見ている。
「あなたも、大切な子よ」
ミレイは、ソラの頬に触れた。
「お姉ちゃんがいて、お父さんがいて——みんな、あなたを愛してる」
ソラは、小さく微笑んだ。
ミレイは、涙を流した。
ああ、二人とも——。
こんなに愛おしい。
◇ ◇ ◇
ソラが生まれて、三ヶ月が経った。
ルナは、すっかり——いいお姉ちゃんになっていた。
「ソラ、これがすき?」
ルナが、おもちゃを見せる。
ソラは、手を伸ばした。
「あ、てがうごいた!」
ルナは、嬉しそうに笑った。
「ままー! ソラが、てをうごかした!」
「本当? すごいわね」
ミレイも、微笑んだ。
レオは、その様子を見ながら——。
幸せだな、と思った。
こんな日常が、何よりも——。
◇ ◇ ◇
ある日、エドワードが家族を食事に招待した。
「レオ殿、ご家族で——ぜひ、私の屋敷に」
「本当ですか?」
「ええ。お子様たちにも、会いたいのです」
レオは、ミレイに相談した。
「どうする?」
「行きましょう」
ミレイは、微笑んだ。
「エドワード様には、お世話になっていますから」
◇ ◇ ◇
エドワードの屋敷。
広い庭。立派な建物。
「まあ、素敵……」
ミレイは、目を輝かせた。
「いらっしゃい」
エドワードが、温かく迎えた。
「これが、ソラ君ですね」
「はい」
レオは、ソラを抱いて見せた。
「可愛らしい」
エドワードは、微笑んだ。
それから、ルナを見た。
「ルナちゃん、大きくなりましたね」
「こんにちは!」
ルナは、元気に挨拶した。
「まあ、元気なこと」
エドワードは、笑った。
「さあ、どうぞ。食事の準備ができています」
◇ ◇ ◇
食事の席で、エドワードは言った。
「レオ殿、あなたは——本当に、素晴らしい」
「え?」
「仕事も、家庭も——両立されている」
エドワードは、真剣な顔で言った。
「それは、簡単なことではありません」
「いえ……これは、ミレイのおかげです」
レオは、ミレイを見た。
「彼女が、支えてくれるから」
「ミレイ様も、素晴らしい」
エドワードは、ミレイに頭を下げた。
「お二人とも、私の——お手本です」
レオとミレイは、顔を見合わせた。
お手本、だなんて——。
僕たちは、ただ——。
家族を愛しているだけなのに。
◇ ◇ ◇
帰り道。
馬車の中で、ルナは眠っていた。
ソラも、すやすやと。
「いい日だったね」
レオが、呟いた。
「はい」
ミレイも、微笑んだ。
「エドワード様、優しい方ですね」
「うん」
レオは、窓の外を見た。
「僕たち、恵まれてるな」
「はい……」
「いい仕事。いい仲間。そして——」
レオは、ミレイとルナとソラを見た。
「何より、素晴らしい家族」
ミレイは、レオの手を握った。
「私も……レオさんと家族になれて、幸せです」
「ありがとう、ミレイ」
レオは、ミレイの額にキスをした。
「これからも、ずっと——一緒だよ」
「はい……ずっと……」
四人は、静かに——家路についた。
幸せな家族。
それが、何よりも——尊いもの。
◇ ◇ ◇
こうして、レオとミレイの家族は——日々を重ねていく。
笑いあり、涙あり。
大変なこともあるけれど——。
でも、愛し合う家族だから。
きっと、どんなことも——乗り越えられる。
物語は、さらに続いていく——。




