第28話 新しい命と、深まる絆。
フェルトハイムから戻って、二ヶ月が経った。
レオは、リフレッシュして——また精力的に働いていた。
でも、以前のように無理はしない。
きちんと休息を取る。
家族との時間を、大切にする。
「レオさん、今日は早いんですね」
ミレイが、嬉しそうに言った。
「うん。今日の仕事は、終わったから」
レオは、ルナを抱き上げた。
「ルナ、お父さんと遊ぼうか」
「やった! あそぼー!」
平和な日々。
幸せな日々。
◇ ◇ ◇
ある朝。
ミレイは、体調が優れなかった。
「うっ……」
朝食の準備をしていると、吐き気が——。
「ミレイ!?」
レオが、駆け寄った。
「大丈夫?」
「はい……ちょっと、気持ち悪くて……」
「横になって。僕が朝食、作るから」
「すみません……」
ミレイは、ベッドに横になった。
レオは、心配だった。
風邪だろうか……?
◇ ◇ ◇
数日後。
ミレイの体調不良は、続いていた。
「やっぱり、医者に診てもらおう」
レオが、提案した。
「でも……」
「ダメ。君の体が心配なんだ」
レオは、真剣な顔で言った。
「お願い、診てもらって」
「……分かりました」
その日の午後、ミレイは王宮の医者に診てもらった。
診察室で、待つこと数分——。
医者が、微笑んで出てきた。
「おめでとうございます、ミレイ様」
「え……?」
「ご懐妊です」
ミレイは、目を見開いた。
「懐妊……!?」
「はい。おそらく、二ヶ月ほどかと」
医者は、優しく言った。
「おめでとうございます」
ミレイは、涙が溢れた。
「赤ちゃん……また……」
◇ ◇ ◇
部屋に戻ると、レオが心配そうに待っていた。
「どうだった? 何か病気……?」
「レオさん」
ミレイは、涙を流しながら微笑んだ。
「赤ちゃん……できました」
レオは、一瞬——固まった。
「え……?」
「赤ちゃん、です」
ミレイは、お腹に手を当てた。
「私たちの、二人目……」
レオの目から、涙が溢れた。
「本当に……!?」
「はい……!」
「ミレイ……!」
レオは、ミレイを抱きしめた。
「嬉しい……! すごく、嬉しい……!」
「私も……です……!」
二人は、涙を流しながら——抱き合った。
◇ ◇ ◇
その夜。
ルナに、報告した。
「ルナ」
レオが、ルナを膝に乗せた。
「お話があるんだ」
「なあに?」
「ルナにね——弟か妹が、できるんだよ」
「え?」
ルナは、きょとんとした顔をした。
「お母さんのお腹に、赤ちゃんがいるの」
ミレイが、優しく説明した。
「もうすぐ、生まれてくるわ」
「あかちゃん……?」
ルナは、ミレイのお腹を見た。
「うん」
「ルナの、いもうとか、おとうと?」
「そうだよ」
レオは、ルナの頭を撫でた。
「ルナ、お姉ちゃんになるんだよ」
ルナの顔が、ぱあっと輝いた。
「おねえちゃん!?」
「うん」
「やった!」
ルナは、飛び跳ねた。
「ルナ、おねえちゃんになる!」
レオとミレイは、微笑み合った。
家族が、また増える——。
◇ ◇ ◇
それから、日々はまた忙しくなった。
ミレイの体調を気遣いながら。
ルナの世話をしながら。
レオは、仕事も続けた。
「レオさん、無理しないでくださいね」
ミレイが、心配そうに言った。
「大丈夫」
レオは、微笑んだ。
「前回の経験があるから」
「でも……」
「それに」
レオは、ミレイのお腹に手を当てた。
「この子のためにも——頑張らないと」
ミレイは、涙を浮かべて微笑んだ。
「ありがとうございます……」
◇ ◇ ◇
妊娠三ヶ月。
ミレイのつわりは、ひどかった。
「うっ……」
朝から、何度も吐き気が——。
「ミレイ……」
レオは、ミレイの背中を撫でた。
「辛いね……」
「大丈夫……です……」
ミレイは、弱々しく微笑んだ。
「これも……赤ちゃんのため……」
「無理しないで」
レオは、ミレイを抱きしめた。
「君が倒れたら、僕——」
「大丈夫ですよ」
ミレイは、レオの頬に手を添えた。
「レオさんが、いてくれますから」
レオは、涙が出そうになった。
この人は、いつも——。
こんなに強くて、優しい。
◇ ◇ ◇
妊娠五ヶ月。
お腹が、少しずつ大きくなってきた。
「まま、おなか、おおきい!」
ルナが、ミレイのお腹を触った。
「うん。赤ちゃんが、大きくなってるのよ」
「すごい!」
ルナは、目を輝かせた。
「あかちゃん、いつでてくるの?」
「あと、四ヶ月くらいかな」
「よんかげつ……ながい……」
ルナは、少ししょんぼりした。
「でも、待っててね」
ミレイは、ルナの頭を撫でた。
「絶対、可愛い赤ちゃんよ」
「うん! まってる!」
レオは、二人を見ながら——微笑んでいた。
幸せだ……。
こんなにも、幸せだ……。
◇ ◇ ◇
ある日、エドワードが声をかけてきた。
「レオ殿、奥様——ご懐妊されたとか」
「はい」
レオは、嬉しそうに頷いた。
「二人目です」
「おめでとうございます」
エドワードは、心から祝福した。
「ただ……」
「はい?」
「無理はなさらないでください」
エドワードは、真剣な顔で言った。
「仕事は、私たちがフォローします」
「でも……」
「レオ殿」
エドワードは、レオの肩に手を置いた。
「家族が、一番大切です。それを忘れないでください」
レオは、胸が熱くなった。
「……ありがとうございます」
◇ ◇ ◇
妊娠七ヶ月。
お腹は、だいぶ大きくなっていた。
「ミレイ、大丈夫?」
レオが、心配そうに聞く。
「はい……ちょっと、重いですけど……」
ミレイは、苦笑した。
「前回より、大きい気がします」
「そうなの?」
「ええ……もしかしたら、男の子かも」
「男の子!」
レオの顔が、輝いた。
「それなら、嬉しいな」
「どっちでも、嬉しいですよ」
ミレイは、微笑んだ。
「元気に生まれてきてくれれば」
「そうだね」
レオは、ミレイのお腹に手を当てた。
ポコッ。
赤ちゃんが、動いた。
「動いた!」
「はい……よく動く子です」
「元気だね」
レオは、嬉しそうに笑った。
「早く、会いたいな」
「私も……です」
◇ ◇ ◇
妊娠九ヶ月。
もう、出産は間近だった。
ミレイは、ほとんど外出しなくなった。
部屋で、ゆっくり過ごす。
レオは、できるだけ早く帰宅するようにした。
「ただいま」
「おかえりなさい」
ミレイが、ベッドから微笑んだ。
「今日は、どうだった?」
「うん。順調だよ」
レオは、ミレイの隣に座った。
「君は?」
「大丈夫です。ちょっと、腰が痛いくらい」
「マッサージする?」
「お願いします……」
レオは、優しくミレイの腰を揉んだ。
「ああ……気持ちいい……」
「よかった」
二人は、穏やかな時間を過ごした。
もうすぐ、家族が増える——。
◇ ◇ ◇
そして、ある夜——。
陣痛が、始まった。
「レオさん……! 来ました……!」
ミレイが、苦しそうに呼んだ。
「分かった! すぐに助産師を!」
レオは、慌てて部屋を飛び出した。
ルナは、隣の部屋で寝ている。
起こさないように——。
助産師が到着し、出産の準備が始まった。
「頑張って、ミレイ!」
レオは、ミレイの手を握った。
「君なら、できる!」
「はい……! はい……!」
ミレイは、必死に力んだ。
そして——。
「オギャア! オギャア!」
赤ちゃんの泣き声が、響いた。
「生まれました! 元気な男の子です!」
助産師が、嬉しそうに言った。
「男の子……!」
レオは、涙を流した。
「ミレイ……! 男の子だって……!」
「男の子……」
ミレイも、涙を流しながら微笑んだ。
「会いたい……です……」
助産師は、赤ちゃんをミレイに渡した。
小さな、小さな——。
男の子。
「可愛い……」
ミレイは、赤ちゃんを抱いた。
「こんなに、可愛い……」
レオも、赤ちゃんを見つめた。
小さな手。
小さな足。
ルナとは、また違う顔。
「ミレイ、ありがとう……」
レオは、ミレイの額にキスをした。
「また、こんな素晴らしい命を……」
「二人の、赤ちゃんです……」
ミレイは、レオを見た。
「会えて、嬉しいですね……」
「ああ……」
レオは、ミレイと赤ちゃんを——抱きしめた。
家族が、また増えた。
四人家族——。
◇ ◇ ◇
翌朝。
ルナが、部屋に入ってきた。
「まま! ぱぱ!」
「おはよう、ルナ」
レオが、ルナを抱き上げた。
「見て。弟だよ」
ミレイが、赤ちゃんを見せた。
ルナは、目を丸くした。
「ちいさい……」
「うん。生まれたばかりだから」
「かわいい……」
ルナは、そっと赤ちゃんに触れた。
「ルナの、おとうと?」
「そうだよ」
「やった!」
ルナは、嬉しそうに笑った。
「ルナ、おねえちゃんだ!」
レオとミレイは、涙を浮かべて微笑んだ。
四人家族。
新しい家族の、始まり——。
◇ ◇ ◇
こうして、レオとミレイの家族は——また、大きくなった。
ルナと、新しい弟。
賑やかで、幸せな日々が——これから、始まる。
困難もあるだろう。
大変なこともあるだろう。
でも、家族で一緒なら——。
きっと、乗り越えられる。
物語は、さらに続いていく——。




