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第22話 小さな家族と、新しい日々。

娘が生まれて、三日が経った。


ミレイは、ベッドで赤ちゃんを抱いていた。


小さな顔。


すやすやと眠っている。


「可愛い……」


何度見ても、飽きない。


この小さな命が——自分とレオの子どもだなんて。


信じられないけど、本当。


「ミレイ、起きてる?」


扉が開いて、レオが入ってきた。


手には、朝食のトレイ。


「レオさん……ありがとうございます」


「ううん。当然だよ」


レオは、ミレイの隣に座った。


「赤ちゃん、寝てる?」


「はい……ずっと、寝てます」


「そっか」


レオは、赤ちゃんの顔を覗き込んだ。


小さな鼻。


小さな唇。


「本当に、小さいね……」


「はい……」


「壊れちゃいそう」


「大丈夫ですよ。赤ちゃんは、思ったより丈夫だって——助産師さんが」


「そっか」


レオは、そっと赤ちゃんの手に触れた。


小さな手が、レオの指を握った。


「あ……」


レオの目が、潤んだ。


「握ってる……僕の指、握ってる……」


「はい……」


ミレイは、微笑んだ。


「レオさんのこと、分かってるんですよ。お父さんだって」


レオは、涙を流した。


「お父さん、か……」


「はい」


「僕、父親なんだね」


「はい」


「……ちゃんと、できるかな」


レオは、不安そうに呟いた。


「大丈夫ですよ」


ミレイは、レオの手を握った。


「一緒に、頑張りましょう」


「……うん」


レオは、ミレイと赤ちゃんを見つめた。


この二人を、守る。


絶対に、幸せにする。


   ◇ ◇ ◇


その日の午後。


町の人々が、お祝いに来てくれた。


「ミラ! おめでとう!」


エルザが、花束を持ってきた。


「ありがとうございます……!」


「赤ちゃん、見せて!」


「はい……」


ミレイは、赤ちゃんを抱いて見せた。


「まあ! 可愛い!」


エルザは、目を輝かせた。


「女の子ね! ミラに、そっくり!」


「そうですか……?」


「ええ! 目元が、特に」


「ガハハ! 可愛いじゃねえか!」


ガレスも、豪快に笑った。


「リオ、いや——レオ! お前、父親になったんだな!」


「はい……」


レオは、照れくさそうに笑った。


「まだ、実感が湧きませんが」


「そのうち、嫌でも実感するさ!」


ガレスは、レオの肩を叩いた。


「子育ては、大変だぞ! 覚悟しとけよ!」


「はい……」


町の人々が、次々と祝福してくれた。


みんな、温かい笑顔で。


レオとミレイは——涙が出るほど、嬉しかった。


ここが、僕たちの——。


本当の、居場所なんだ。


   ◇ ◇ ◇


その夜。


二人は、赤ちゃんの名前を考えていた。


「何がいいかな」


レオが、悩んだ顔をしている。


「女の子だし……可愛い名前がいいよね」


「はい……」


ミレイも、考え込んだ。


「レオさん、何か——思い入れのある名前は、ありますか?」


「思い入れのある名前……」


レオは、少し考えた。


それから——。


「ルナ、とか?」


「ルナ……?」


「うん。月の、という意味」


レオは、窓の外を見た。


月が、輝いている。


「あの夜——君と初めて会った夜も、月が綺麗だった」


「ああ……」


ミレイは、思い出した。


森の泉で、レオと出会った夜。


月明かりの下で——。


「それから、何度も——月を見ながら、君のことを想った」


レオは、ミレイを見た。


「だから、ルナ。月のように、優しく輝く子に——なってほしい」


ミレイの目から、涙が溢れた。


「素敵な名前……です……」


「気に入ってくれた?」


「はい……! とても……!」


ミレイは、赤ちゃんを見た。


「ルナちゃん……私たちの、ルナちゃん……」


赤ちゃんが、小さく微笑んだ気がした。


「ルナ、か」


レオも、赤ちゃんを見つめた。


「よろしくね、ルナ」


そっと、頬に触れる。


「君のお父さんと、お母さんだよ」


赤ちゃん——ルナは、すやすやと眠っていた。


   ◇ ◇ ◇


それから、日々は——慌ただしくなった。


夜中の授乳。


おむつ替え。


泣き止まないルナをあやす。


初めてのことばかりで、二人とも手探りだった。


「ミレイ、ルナが泣いてる……!」


夜中、レオが慌てて起きた。


「はい……おむつ、替えますね……」


ミレイは、眠い目をこすりながら起き上がった。


「僕がやるよ」


「でも……」


「いいから。君、疲れてるでしょ」


レオは、ルナを抱き上げた。


「よしよし……大丈夫だよ……」


でも、ルナは泣き止まない。


「うーん……おむつは、濡れてないな……」


「お腹が、空いてるのかもしれません」


「そっか。じゃあ、授乳?」


「はい……」


ミレイは、ルナを抱いて授乳した。


ルナは、ようやく落ち着いた。


「ふう……」


ミレイは、ほっとした顔をした。


「大変ですね……」


「うん……」


レオも、疲れた顔をした。


「でも、可愛いね」


「はい……」


二人は、ルナを見つめた。


満足そうに、ミルクを飲んでいる。


大変だけど——。


幸せだ。


   ◇ ◇ ◇


ある日。


レオが仕事から帰ると、ミレイが泣いていた。


「ミレイ!? どうしたの!?」


「レオさん……!」


ミレイは、レオに抱きついた。


「私……ダメな母親です……!」


「え? どうして?」


「だって……ルナが、全然泣き止まなくて……!」


ミレイは、涙を流した。


「何をやっても、ダメで……私、母親失格です……!」


「そんなことないよ」


レオは、ミレイを抱きしめた。


「君は、すごく頑張ってる」


「でも……!」


「ルナも、まだ生まれたばかりだ。慣れるのに、時間がかかるんだよ」


レオは、優しく言った。


「それに、僕たちも初めての子育てだ。失敗して、当然じゃないか」


「レオさん……」


「大丈夫。一緒に、頑張ろう」


レオは、ミレイの涙を拭った。


「君は、素晴らしい母親だよ」


「……ありがとうございます」


ミレイは、レオの胸に顔を埋めた。


この人がいてくれて、よかった。


一人じゃ、きっと——耐えられなかった。


   ◇ ◇ ◇


ルナが生まれて、一ヶ月が経った。


少しずつ、生活のリズムができてきた。


ルナも、よく笑うようになった。


「ほら、ルナ——」


レオが、顔を近づけると——。


ルナが、にこっと笑った。


「笑った! ミレイ、見て! 笑ったよ!」


「本当ですね……!」


ミレイも、嬉しそうに笑った。


「可愛い……」


「うん。めちゃくちゃ可愛い」


レオは、ルナを抱き上げた。


「ルナ、お父さんだよ」


ルナは、レオの顔をじっと見つめた。


それから——また、笑った。


「ああ……もう……可愛すぎる……」


レオは、涙ぐんだ。


「僕、この子のためなら——何でもできる気がする」


「私も……です」


ミレイは、レオとルナを見つめた。


この二人が、私の全て。


この二人を、守りたい。


幸せにしたい。


   ◇ ◇ ◇


ある日の夕方。


三人で、町を散歩していた。


ルナを、ミレイが抱いている。


「いい天気ですね」


「うん」


レオは、空を見上げた。


青い空。


白い雲。


穏やかな風。


「平和だね」


「はい……」


ミレイも、微笑んだ。


「こんな日々が、ずっと続けばいいのに」


「続くよ」


レオは、ミレイの手を握った。


「僕が、守るから」


「レオさん……」


「ミレイと、ルナを——絶対に、幸せにする」


レオの目が、真剣だった。


「約束する」


ミレイは、涙を浮かべて微笑んだ。


「はい……信じてます」


三人は、手を繋いで——歩いた。


小さな家族。


でも、確かな絆で結ばれた——。


幸せな家族。


   ◇ ◇ ◇


その夜。


ルナを寝かしつけた後。


レオとミレイは、二人きりの時間を過ごしていた。


「ねえ、ミレイ」


「はい?」


「僕、思うんだ」


レオは、窓の外を見た。


「こうして、家族と一緒に暮らせることが——どれだけ幸せか」


「レオさん……」


「王宮にいた頃は、想像もできなかった」


レオは、ミレイを見た。


「こんな、温かい日々があるなんて」


「私も……です」


ミレイは、レオの手を握った。


「ノルン村にいた頃——私、毎日が辛かったです」


「うん……」


「でも、レオさんと出会って——全部、変わりました」


ミレイは、涙を浮かべた。


「今は、毎日が——幸せです」


レオは、ミレイを抱きしめた。


「ありがとう、ミレイ」


「こちらこそ……」


「君と出会えて、本当によかった」


「私も……レオさんと出会えて、よかったです」


二人は、キスをした。


優しく。


愛おしく。


これが、僕たちの——。


本当の、幸せ。


   ◇ ◇ ◇


こうして、小さな家族の日々は——穏やかに流れていった。


笑いあり、涙あり。


大変なこともあるけれど——。


でも、三人で一緒なら——。


どんな困難も、乗り越えられる。


レオとミレイ、そしてルナ。


三人の物語は——これからも、続いていく。


愛し合う家族として——。


   ◇ ◇ ◇


でも、平和な日々の中で——。


二人はまだ知らなかった。


遠く、セントラル王国では——。


新たな動きが、始まっていることを。


グレゴリーは、失脚した。


そして、新しい宰相が——。


レオに、ある提案を持ちかけようとしていた。


それは、二人の人生を——再び、大きく変えることになる。


でも、それは——また、別の物語。

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