表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

第16話 幸せな日々と、永遠の誓い。

フェルトハイムに来て、三ヶ月が経った。


季節は秋から冬へと移り変わろうとしていた。


レオとミレイの生活は、すっかり安定していた。


「リオ、今日も頼むぜ!」


ガレスが、威勢よく声をかける。


「はい!」


レオは、笑顔で応えた。


『金獅子亭』は、いつも賑わっている。


酒を飲む客たち。


食事を楽しむ旅人たち。


レオは、テーブルからテーブルへと動き回る。


「お待たせしました!」


料理を運び、空いた皿を下げる。


「おう、リオ! いつもありがとうな!」


「いえいえ」


レオは、客と気さくに話す。


こんな風に、人と接するのが——楽しい。


王宮では、常に距離があった。


でも、ここでは——みんな、対等だ。


「リオ、ちょっと休憩しな」


ガレスが、声をかけてきた。


「ほら、これ食え」


暖かいスープとパン。


「ありがとうございます」


レオは、裏の席で食事を取った。


温かい。


美味しい。


こんな些細なことが——幸せだ。


「なあ、リオ」


ガレスが、隣に座った。


「お前、もうすぐ冬だろう? 寒くなるぞ」


「はい……」


「宿代、大丈夫か?」


「え……?」


「冬は宿代が上がるからな。心配でさ」


ガレスは、少し気まずそうに言った。


「あのな……もしよかったら、うちの二階に部屋がある。使ってないんだ。そこ、使わないか?」


レオは、目を見開いた。


「え……いいんですか!?」


「ああ。家賃は——まあ、少しだけもらうけど、宿より安くする」


ガレスは、照れくさそうに頭を掻いた。


「お前、よく働いてくれるからな。これくらいは、させてくれ」


「ガレスさん……!」


レオは、胸が熱くなった。


「ありがとうございます……!」


「礼はいいって」


ガレスは、立ち上がった。


「ミラとも、相談してみろ。良かったら、今週末にでも引っ越せばいい」


   ◇ ◇ ◇


その夜。


レオは、宿に戻ってミレイに報告した。


「本当ですか!?」


ミレイの顔が、輝いた。


「ガレスさんが、そんなことを……!」


「うん。優しい人だよ」


レオは、嬉しそうに笑った。


「どうする? 引っ越す?」


「はい! もちろんです!」


ミレイは、強く頷いた。


「宿代、ずっと気になってたんです……」


「そっか」


レオは、ミレイの手を握った。


「じゃあ、週末に引っ越そう」


「はい!」


二人は、抱き合った。


また一歩——。


この町に、根を下ろしていく。


   ◇ ◇ ◇


週末。


二人は、『金獅子亭』の二階に引っ越した。


部屋は、宿の部屋より少し広い。


窓からは、町の景色が見える。


「わあ……」


ミレイは、部屋を見回した。


「素敵な部屋ですね……」


「うん」


レオも、満足そうに頷いた。


「ここが、僕たちの——新しい家だ」


「家……」


ミレイは、その言葉を繰り返した。


家。


私たちの、家。


涙が、溢れそうになった。


「ミレイ?」


「……嬉しいんです」


ミレイは、涙を拭った。


「こんな風に、レオさんと——ちゃんと、家を持てるなんて」


「ミレイ……」


レオは、ミレイを抱きしめた。


「これからも、ずっと——一緒だよ」


「はい……!」


二人は、新しい部屋で——抱き合った。


ここから、また——。


新しい生活が始まる。


   ◇ ◇ ◇


それから、日々は穏やかに過ぎていった。


朝、レオは酒場の準備を手伝う。


ミレイは、薬草店に向かう。


昼は、それぞれの仕事に専念。


夜、二人は部屋で一緒に夕食を取る。


ささやかだけど、幸せな日々。


「ただいま」


レオが、部屋に戻ってくる。


「おかえりなさい」


ミレイが、微笑んで迎える。


「今日は、シチューを作りました」


「わあ、美味しそう!」


二人は、テーブルに向かい合って座る。


「いただきます」


温かいシチュー。


焼きたてのパン。


「美味しい……」


レオは、幸せそうに食べる。


「ミレイの料理、本当に上手になったね」


「ありがとうございます」


ミレイは、少し照れくさそうに笑った。


「エルザさんに、色々教わったんです」


「そっか」


レオは、ミレイを見つめた。


こんな風に、二人で食事をする。


何でもない日常。


でも——これが、何よりも尊い。


「ねえ、ミレイ」


「はい?」


「君、幸せ?」


ミレイは、少し驚いた顔をした。


それから——。


「はい」


満面の笑みで、頷いた。


「とても、幸せです」


「よかった……」


レオは、ほっとした顔をした。


「僕も、幸せだよ」


「レオさん……」


「君と一緒にいられて——本当に、よかった」

レオは、ミレイの手を握った。

「ありがとう、ミレイ」

「こちらこそ……」

二人は、手を繋いだまま——微笑み合った。


ある日。

レオが仕事から帰ると、ミレイが何かを縫っていた。

「何作ってるの?」

「あ……えっと……」

ミレイは、慌てて布を隠した。

「内緒です!」

「え? 何で?」

「後で、見せますから!」

ミレイは、顔を赤くした。

レオは、不思議そうに首を傾げた。


数日後。

ミレイが、小さな包みを差し出した。

「レオさん、これ——」

「何?」

「開けてください」

レオは、包みを開けた。

中には——手袋が入っていた。

暖かそうな、毛糸の手袋。

「これ……」

「もうすぐ冬ですから」

ミレイは、恥ずかしそうに言った。

「レオさん、酒場で樽を運んだりして——手が冷たいだろうなって」

「ミレイ……」

「下手ですけど……私、初めて編んだんです……」

レオは、手袋を見つめた。

少し歪んでいる。

でも、一針一針——丁寧に編まれている。

「ありがとう……」

レオの目から、涙が溢れた。

「嬉しい……すごく、嬉しい……」

「よかった……」

ミレイも、涙を浮かべた。

「喜んでもらえて……」

レオは、手袋をはめた。

少し大きいけど——温かい。

ミレイの、愛情が詰まっている。

「大切にするよ。ずっと」

「はい……」

二人は、抱き合った。

小さな贈り物。

でも、それは——。

何よりも、かけがえのないもの。


冬が、訪れた。

町は、雪に覆われた。

寒い日が続く。

でも、レオとミレイの部屋は——いつも、温かかった。

「寒いね」

レオが、暖炉に薪をくべる。

「はい……」

ミレイは、毛布にくるまっている。

「ミレイ、こっちおいで」

レオが、手を伸ばす。

ミレイは、レオの隣に座った。

レオは、ミレイを抱き寄せる。

「温かい……」

「うん」

二人は、寄り添って——暖炉の火を見つめた。

静かな夜。

雪の音。

パチパチと燃える薪の音。

「ねえ、ミレイ」

レオが、小さく呟いた。

「はい?」

「僕ね——」

レオは、ミレイを見た。

「君と、結婚したい」

ミレイの心臓が、跳ねた。

「え……?」

「ちゃんと、式を挙げて」

レオは、真剣な顔で言った。

「君を、正式に——僕の妻にしたい」

「レオさん……」

「ダメ、かな?」

「ダメなわけ、ないです……!」

ミレイの目から、涙が溢れた。

「私、嬉しいです……! とても……!」

「本当?」

「本当です……! 私も、レオさんと——結婚したいです……!」

レオは、ミレイを強く抱きしめた。

「ありがとう……ありがとう……」

「こちらこそ……」

「春になったら——式を挙げよう」

レオは、ミレイの顔を両手で包んだ。

「小さくてもいい。この町の人たちに、祝福してもらって」

「はい……!」

「そして——」

レオは、ミレイの唇にキスをした。

「正式に、夫婦になろう」

「はい……! お願いします……!」

二人は、キスをした。

深く。

愛おしく。

これが、二人の——。

永遠の誓い。


その夜、二人は抱き合ったまま眠った。

幸せに満ちた顔で。

春が来たら、結婚する。

その約束が——二人の心を、さらに深く繋いだ。


でも、二人はまだ知らなかった。

遠く、セントラル王国では——。

グレゴリーが、ついに動き始めていることを。

アルディア王国に、密偵を送り込んだのだ。

レオの居場所を、突き止めるために——。

平和な日々は——。

もうすぐ、終わりを告げる。

でも、今は——。

二人は、ただ——。

幸せを、噛みしめていた。


その頃、セントラル王国。

「見つけたぞ」

密偵が、グレゴリーに報告していた。

「フェルトハイムの町に、それらしき男女が」

「確かか?」

「ええ。金髪の青年と、茶髪の娘。リオとミラという名で暮らしているようです」

グレゴリーの口元が、冷たく歪んだ。

「……ふふ。ついに、見つけたか」

「いかがなさいますか?」

「準備を進めろ」

グレゴリーは、立ち上がった。

「春になったら——連れ戻す」

「承知しました」

密偵が去った後。

グレゴリーは、窓の外を見た。

「レオン殿下……いや、レオ」

冷たい笑みを浮かべる。

「お前の、平和な日々は——もうすぐ終わる」


こうして、嵐の予兆が——忍び寄っていた。

でも、レオとミレイは——まだ、それを知らない。

二人は、ただ——。

春を、待っていた。

結婚式を、夢見て——。

幸せな未来を、信じて——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ