表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/21

第15話 新天地での生活と、見つけた居場所。

アルディア王国、フェルトハイムの町。


レオとミレイが到着してから、一週間が経った。


二人は、『白鳥亭』という小さな宿に滞在していた。


「リオさん、今日も仕事探しに行くんですか?」


宿の娘、エミリアが声をかけてきた。


「ああ、うん」


レオ——リオは、頷いた。


「何か、いい仕事はないかなと思って」


「大変ですね……」


エミリアは、同情的に言った。


「でも、頑張ってください! 応援してます!」


「ありがとう」


レオは、微笑んだ。


この一週間、レオは仕事を探し続けていた。


でも、なかなか見つからない。


経験も、推薦状もない。


身分を証明するものも、ない。


「難しいな……」


レオは、町を歩きながら呟いた。


王宮にいた頃は、何不自由なく暮らしていた。


でも、今は——全て、自分の力で手に入れなければならない。


それが、こんなにも大変だとは。


「どこか、雇ってくれるところは……」


そう考えながら歩いていると——。


「おい、そこの若いの!」


声がした。


振り返ると、がっしりとした体格の中年男性が立っていた。


「仕事、探してるんだって?」


「え……はい」


「なら、うちで働かないか?」


男性は、親指で後ろを指した。


「酒場をやってるんだ。雑用係が欲しくてな」


「酒場……?」


「ああ。『金獅子亭』って店だ」


男性——店主のガレスは、にかっと笑った。


「給料は安いが、飯付きだ。どうだ?」


レオは、迷わず頷いた。


「お願いします!」


   ◇ ◇ ◇


その夜。


レオは、宿に戻ってミレイに報告した。


「仕事、見つかったよ!」


「本当ですか!?」


ミレイの顔が、ぱあっと輝いた。


「よかった……!」


「うん。酒場で、雑用の仕事」


レオは、嬉しそうに話した。


「明日から、働けるんだ」


「よかったです……本当に……」


ミレイは、涙ぐんでいた。


「これで、ちゃんと生活できますね……」


「ああ」


レオは、ミレイの手を握った。


「二人で、頑張ろう」


「はい!」


二人は、抱き合った。


小さな一歩。


でも、確かな一歩。


新しい人生が——動き始めた。


   ◇ ◇ ◇


翌日から、レオは『金獅子亭』で働き始めた。


仕事内容は、掃除、皿洗い、樽運び——。


肉体労働が中心だった。


「おい、リオ! その樽を地下室に運んでくれ!」


「はい!」


レオは、重い酒樽を抱えた。


重い。


でも、ノルン村での畑仕事を経験していたから——何とか、持ち上げられた。


「よし……!」


地下室に運ぶ。


階段を降りて、慎重に。


「ふう……」


樽を置いて、額の汗を拭う。


大変だけど——。


自分の力で、働いている。


それが、嬉しかった。


「リオ、休憩にしな」


ガレスが、声をかけてきた。


「ほら、水だ」


「ありがとうございます」


レオは、水を飲んだ。


「お前、よく働くな」


ガレスは、満足そうに頷いた。


「最初はどうかと思ったが——なかなか、筋がいい」


「ありがとうございます」


「ところで」


ガレスは、レオを見た。


「お前、どっから来たんだ?」


「え……」


レオは、少し躊躇した。


「セントラル王国の……小さな村です」


「そうか。何か、訳ありか?」


「……少し」


「まあ、聞かんよ」


ガレスは、肩をすくめた。


「この町には、訳ありの奴が多いからな。お前だけじゃない」


「……ありがとうございます」


「ただし」


ガレスの目が、真剣になった。


「ちゃんと働くなら、面倒は見る。だが、問題を起こしたら——即クビだ」


「はい。肝に銘じます」


レオは、深々と頭を下げた。


   ◇ ◇ ◇


その頃、ミレイも——動いていた。


宿の近くにある、薬草店を訪れたのだ。


「あの……すみません」


小さな店に入ると、老齢の女性が振り返った。


「はい、いらっしゃい」


「あの……こちらで、働かせていただけないでしょうか?」


ミレイは、緊張しながら言った。


「私、薬草の知識が——少しだけ、あります」


「薬草の知識?」


女性——店主のエルザは、興味深そうに眉を上げた。


「どこで学んだの?」


「セントラル王国の村で、薬師見習いをしていました」


「へえ……」


エルザは、ミレイをじっと見た。


それから——。


「じゃあ、この薬草の名前、言ってみて」


エルザは、棚から薬草を取り出した。


「これは……セージです」


「これは?」


「タイムです」


「これは?」


「ローズマリーです」


ミレイは、次々と答えていった。


ノルン村で、マリアおばあさんに教わった知識。


何度も失敗しながら、覚えた知識。


「……合格ね」


エルザは、満足そうに頷いた。


「明日から、来てちょうだい。給料は安いけど」


「本当ですか!?」


ミレイの顔が、輝いた。


「ありがとうございます!」


「礼はいいわ。ちゃんと働いてくれれば、それでいい」


エルザは、優しく微笑んだ。


   ◇ ◇ ◇


その夜。


宿の部屋で、二人は報告し合った。


「私も、仕事が見つかりました!」


ミレイが、嬉しそうに言った。


「本当!?」


「はい! 薬草店で、働けることになったんです!」


「よかった……!」


レオは、ミレイを抱きしめた。


「これで、二人とも——」


「はい……!」


二人は、涙を流しながら笑った。


よかった。


本当に、よかった。


二人とも、仕事が見つかった。


これで、ちゃんと生活していける。


「ねえ、ミレイ」


レオが、顔を上げた。


「僕たち、やっていけるね」


「はい」


ミレイは、強く頷いた。


「二人で、頑張りましょう」


「うん」


レオは、ミレイの唇にキスをした。


優しく。


愛おしく。


「ありがとう、ミレイ」


「こちらこそ……」


「君がいてくれて——本当に、よかった」


「私も……レオさんがいてくれて、幸せです……」


二人は、また抱き合った。


小さな部屋。


質素な暮らし。


でも——。


こんなにも、温かくて。


こんなにも、幸せ。


   ◇ ◇ ◇


それから、一ヶ月が経った。


レオは『金獅子亭』で、すっかり信頼される存在になっていた。


「リオ、お前——本当によく働くな」


ガレスが、感心したように言った。


「ありがとうございます」


「客からの評判もいいぞ。愛想がいいってな」


「そうですか?」


レオは、少し照れくさそうに笑った。

王宮では、完璧な笑顔を作っていた。

でも、今の笑顔は——本物だ。

心から、笑っている。

「なあ、リオ」

ガレスが、真剣な顔で言った。

「このまま、うちで正式に働かないか?」

「え……?」

「給料も、少し上げる。どうだ?」

レオは、目を見開いた。

「本当ですか!?」

「ああ。お前なら、信用できる」

ガレスは、レオの肩を叩いた。

「これからも、よろしく頼むぜ」

「はい……! ありがとうございます……!」

レオは、胸が熱くなった。

認められた。

自分の力で、評価された。

これが——こんなにも、嬉しいなんて。


ミレイも、薬草店で順調に働いていた。

「ミラ、この調合——完璧よ」

エルザが、満足そうに頷いた。

「ありがとうございます」

「あなた、本当に才能があるわ」

エルザは、ミレイの頭を撫でた。

「もっと勉強すれば、立派な薬師になれるわよ」

「本当ですか……?」

「ええ」

エルザは、優しく微笑んだ。

「あなたなら、できる」

ミレイの目から、涙が溢れた。

認められた。

『落ちこぼれ』じゃない、私。

ちゃんと、評価してもらえた。

「ありがとうございます……!」

ミレイは、深々と頭を下げた。


その夜。

二人は、宿の部屋で夕食を取っていた。

「今日ね、ガレスさんに——正式雇用してもらえることになったんだ」

レオが、嬉しそうに報告した。

「本当ですか!?」

「うん。給料も、上がるって」

「よかった……!」

ミレイも、嬉しそうに笑った。

「私も、エルザさんに褒められたんです。才能があるって」

「すごいじゃないか!」

レオは、ミレイの手を握った。

「僕たち、本当に——やっていけるんだね」

「はい……!」

二人は、手を繋いだ。

一ヶ月前は、逃げ回っていた。

でも、今は——。

ちゃんと、生活している。

仕事があって、居場所があって。

認めてくれる人たちがいて。

「ねえ、ミレイ」

「はい?」

「僕、思うんだ」

レオは、窓の外を見た。

「王宮にいた頃より——今の方が、ずっと幸せだって」

「レオさん……」

「あの頃は、毎日が息苦しかった。完璧でいなきゃいけなくて、本当の自分を隠して——」

レオは、ミレイを見た。

「でも、今は違う。自分らしく、生きられる」

「はい……」

「それも、全部——君のおかげだ」

レオは、ミレイの頬に手を添えた。

「君が、一緒にいてくれたから」

「レオさん……」

ミレイの目から、涙が溢れた。

「私も……レオさんのおかげです……」

「ミレイ……」

二人は、キスをした。

深く。

愛おしく。

これが、本当の幸せ。

地位も、名誉も、財産もない。

でも——。

愛する人がいて。

認めてくれる人たちがいて。

自分らしく、生きられる。

それが——何よりも、尊い。


それから、さらに週間が経った。

レオとミレイは、フェルトハイムの町で——すっかり馴染んでいた。

「リオ! ミラ! おはよう!」

町の人々が、気さくに声をかけてくる。

「おはようございます!」

二人は、笑顔で返す。

ここが、僕たちの——。

新しい、居場所。

レオは、ミレイの手を握った。

ミレイも、握り返す。

二人は、前を向いた。

これから、どんな未来が待っていても——。

一緒なら、大丈夫。

そう、信じて——。


でも、二人はまだ知らなかった。

遠く、セントラル王国では——。

新たな動きが、始まっていることを。

グレゴリーは、まだ諦めていなかった。

いつか、必ず——。

レオを、連れ戻すと。

そのために、策を練っていた。

平和な日々は——いつまで続くのか。

それは、まだ——誰にも分からない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ