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第111話 崩れる場所

街の動きを見て、レオはすぐに一つの結論に達していた。


 この街は壊れる。


 問題は“どこで壊れるか”だけだ。


   ◇ ◇ ◇


 拠点として用意された建物の中で、レオは簡単な図を描いていた。


 街の流れは複雑ではない。むしろ単純だ。だからこそ、詰まりやすく、崩れやすい。特定の地点に負荷が集中し、そのまま連鎖していく。


「自然に任せれば、全体が崩れる」


 エドワードが頷く。


「はい。既にいくつかの経路で兆候があります」


   ◇ ◇ ◇


 レオは線を一本引いた。


   ◇ ◇ ◇


「なら、ここに集める」


   ◇ ◇ ◇


 街の中心ではない。


 外れでもない。


 流れが必ず通る“中間点”。


   ◇ ◇ ◇


「……わざと詰まらせるのですか」


   ◇ ◇ ◇


 エドワードの問いに、レオは首を振る。


   ◇ ◇ ◇


「詰まる場所を固定する」


   ◇ ◇ ◇


 それが違いだった。


   ◇ ◇ ◇


「崩れるのを止めるんじゃない」


   ◇ ◇ ◇


「崩れる場所を決める」


   ◇ ◇ ◇


 制御する。


   ◇ ◇ ◇


 それが、この街での最初の一手だった。


   ◇ ◇ ◇


 その日の午後。


 街の一角で、小さな変化が起きた。


 特定の倉庫に、荷が集中し始める。流れを調整し、あえてそこへ通すようにする。


 最初は気づかれない。


 だが徐々に、負荷がかかる。


   ◇ ◇ ◇


「……なんだ、ここ」


 運搬人が顔をしかめる。


 荷が多い。


 処理が追いつかない。


   ◇ ◇ ◇


 だが——。


   ◇ ◇ ◇


 他は、流れる。


   ◇ ◇ ◇


 街全体では、むしろ動きが良くなる。


   ◇ ◇ ◇


 歪みが、一箇所に集まる。


   ◇ ◇ ◇


 その変化はすぐに広がる。


「最近、あそこだけおかしくないか」


「他は楽になったがな」


   ◇ ◇ ◇


 違和感。


   ◇ ◇ ◇


 だが同時に——。


   ◇ ◇ ◇


 利便性。


   ◇ ◇ ◇


 否定しきれない。


   ◇ ◇ ◇


 使者がレオのもとへ来る。


「報告が上がっている」


   ◇ ◇ ◇


「一部で不満が出ている」


   ◇ ◇ ◇


 当然だった。


   ◇ ◇ ◇


 レオは頷く。


   ◇ ◇ ◇


「そこは崩れる」


   ◇ ◇ ◇


 あっさりと言う。


   ◇ ◇ ◇


 使者の表情が固まる。


「……いいのか」


   ◇ ◇ ◇


 レオは視線を外さない。


   ◇ ◇ ◇


「いい」


   ◇ ◇ ◇


「そこが壊れれば、他は守られる」


   ◇ ◇ ◇


 冷静な判断だった。


   ◇ ◇ ◇


 使者は何も言えない。


   ◇ ◇ ◇


 だが——。


   ◇ ◇ ◇


 理解はしている。


   ◇ ◇ ◇


 全体を守るための犠牲。


   ◇ ◇ ◇


 それを選ぶしかない。


   ◇ ◇ ◇


 一方、裏側。


 この動きはすぐに察知されていた。


   ◇ ◇ ◇


「……集めているな」


   ◇ ◇ ◇


 暗がりの中で、男が呟く。


   ◇ ◇ ◇


 分散していた歪み。


   ◇ ◇ ◇


 それを、一点に。


   ◇ ◇ ◇


「面白い」


   ◇ ◇ ◇


 小さく笑う。


   ◇ ◇ ◇


「なら——」


   ◇ ◇ ◇


 視線が鋭くなる。


   ◇ ◇ ◇


「そこを壊すだけだ」


   ◇ ◇ ◇


 当然の帰結だった。


   ◇ ◇ ◇


 一方、街の倉庫。


 負荷はさらに増えていた。


 荷が溜まり、処理が遅れ、人の動きが荒くなる。


   ◇ ◇ ◇


 限界が近い。


   ◇ ◇ ◇


 だが——。


   ◇ ◇ ◇


 それが狙いだった。


   ◇ ◇ ◇


 レオはその様子を見ていた。


   ◇ ◇ ◇


「……ここで来る」


   ◇ ◇ ◇


 小さく呟く。


   ◇ ◇ ◇


 崩壊は避けられない。


   ◇ ◇ ◇


 だが——。


   ◇ ◇ ◇


 制御できる。


   ◇ ◇ ◇


 それが、この街での最初の均衡だった。


   ◇ ◇ ◇


 歪みは集められた。


 そして次に来るのは——。


 “意図された崩壊”だった。

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