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私たちはアイドル  作者: 柿井優嬉


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8/22

「さっきのコ、ああ言ってましたけど、ほんとはライバルをつぶしたかったんじゃないですかね」

 路上ライブをやっていたところから離れて歩いている最中に、理恵ちゃんがそう口にした。

「え? ライバルって、私たちのこと?」

 歌っているとき、あんなに道行く人から相手にされなかったのに。

「そうです。だって、アイドルなんて、例えば歌やダンスが誰もかなわないくらい上手なら成功するってものじゃないじゃないですか。ものすごく美人で高根の花って感じよりも、クラスの隣の席のちょっと可愛いコみたいな、庶民的なほうが人気になったり、もしかしたら今の私たちのような、服装とか、全然アイドルらしくないのが、何かのきっかけで受けるかもしれない。それを察知したから、いなくなってもらいたかったけれど、そのことを私たちに気づかせたくなかったので、『レベルが低いのがいると迷惑』なんて理由をあてがったのかも」

「本当に? だったら、私たち、見込みがあるってことなの?」

「いえ、あのコがそういう気持ちだったのか定かじゃないですし、アイドルは何が成功につながるかわからないって話ですから、運が良ければ大成功する一方で、やっぱり端にも棒にもかからない可能性も大きい。よっぽど駄目なのが続くようだったら、奇をてらうのもありかもしれないですが、とりあえずは一般的な基準の優れたアイドルを目指して頑張るのが無難じゃないでしょうか」

「そっか。やっぱり甘くはないよね」

 あ。

「そういえば、さっきのところを去るときに私をリーダーって呼んだけど、私がやるので決まりなの?」

 前に嫌がったはずだけど。

 理恵ちゃんと葵ちゃんは顔を見合わせた後で、二人同時に私に向かって大きくうなずいた。

 ……まあ、しょうがないか。年齢が一番上だからな。


 とにかく、もうあの場所ではできない。いや、あの別のグループのアイドルのコの言うことを聞かなきゃいけないわけじゃないから、やろうと思えばできるけれど、ファンを獲得しなければならないのにトラブルになるようなことをしている場合ではないのでやめて、異なるエリアで路上ライブを行うことにした。

「他のグループがいるところだと、そっちに観る人を持っていかれちゃう確率が高いから、誰もやってない場所でしようか?」

 そもそもアイドルが路上ライブをやっている場所はそんなにいくつもないだろうというのもあって、私のその提案にメンバーの二人は賛成した。

 しかし、そうすると、許可が要るのかが問題になる。ネットで調べたら、本来は管轄の警察署に行って許可を取らなければいけないが、申請してもOKしてくれないものらしく、無断でもいきなり逮捕とかはされないから勝手にやって、注意されたらやめるのが一般的みたいだ。

 というわけで申請をせずに行うことにし、良さそうな広場がある駅前に向かったのだが、やっぱりやめようかと思い始めた。私自身に、他にやっている人がいない場で路上ライブをする緊張や、無許可で行うことの不安があるのもそうだけれど、葵ちゃんが大丈夫か心配なのが最大の理由だ。彼女はおそらく真面目な性格で、だから「やる」と答えたが、普段のなんでもないときでも伏し目がちで自信がない感じなのに、心に負荷がかかり過ぎて、倒れたりしちゃうんじゃないだろうか。

 でも、アイドルをやっていくのに、これくらいの試練に耐えられないようじゃ困るよなというのもあるし、どうしようかと迷いながら目当ての地点へ歩を進めた。

 すると、倒れてしまったのだ。

 ただ、葵ちゃんじゃなくて、理恵ちゃんが。

 その場所でも最初の路上ライブでやったように歌って、予想通り誰も足を止めてくれずにいた、四曲目。理恵ちゃんがふらついて、しゃがみ込んだのだ。

「どうしたの! 理恵ちゃん」

 具合が悪くなったと思い、私は勢いよく問いかけた。

「うう……すみません、腹が減って」

「え? お腹が空いた?」

 私は呆気に取られた。

「はい。今日、ろくにご飯を食べてないもので」

 え?

「どうして? 今日は路上ライブをするってわかってたよね? なんでちゃんと食べてこなかったの?」

 理恵ちゃんはためらいがちに答えた。

「……うち、貧乏なもので」

「ええ?」

 思ってもない言葉が返ってきて、私は軽く驚いた。

 ひとまず路上ライブはやめにして、私たちは近くにある公園のベンチに移動することにした。


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