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私たちはアイドル  作者: 柿井優嬉


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5/22

「ん?」

「知ってます? 青山さんて、『メニュー』の青山美悠の弟だって」

「ああ。みたいだね」

「メニュー」というのは、私も幼い頃はテレビなどで観ていた、昔のアイドルグループで、青山美悠はそのメンバーの一人だったのだが、当時グループ内で最も人気があり、今も伝説的といった存在なのである。

 そして、小さくて、誰もが知っているというところじゃない芸能事務所だと、例えばいきなり脱がされるだとか、何をさせられるかわからないから、たとえ良い条件で誘われたとしても、お世話になるのは躊躇する気持ちになるけれども、その超有名な女性の元アイドルの弟が社長をしているというので、そんな乱暴なことはしないはずとの判断で、私はここ『ロー・キー』のオーディションを受けたのだ。けっこうな数のコが来ていたし、多くの参加者が同様の考えだったのだと思う。

 理恵ちゃんは続けた。

「青山さん、『偉いおっさんが女のコの裏で糸を引くやり方は時代遅れ』って批判的に言ってましたけど、一昔前は定番って感じだったじゃないですか、プロデューサーなんかがサプライズでアイドルたちに試練を与えるような手法が。困難を乗り越えようと頑張る姿を見せることで、ファンをもっと応援したくなる気持ちにさせる狙いなんでしょうが、そうやって上の立場の人が何から何まで、アイドル本人に有無を言わせず、命令して活動させてたくせに、卒業だけお姉さんである美悠さんの意思で決めたようにされたのが、許せないらしいですよ」

 え?

「待って。あれって、彼女が自分で卒業を決めたんじゃないの?」

「そうなんですって。私の学校の同じクラスに、芸能界のことにマニア的に詳しいコがいて、教えてくれたんですけど」

 アイドルがグループから卒業すると、だいたいの場合、しばらくはソロのタレントで活動するが、いつのまにか目にしなくなってしまう。一部の人は生き残って、変わらずメディアによく登場するけれども、グループに在籍していた頃のほうが人気があったというケースがほとんどだ。

 そんななか、青山美悠は、メニューを卒業するのと同時に、芸能界からも引退したのである。

 伝説的な存在となったのは、個人で活動せずに人気が落ちた時期がなく辞めたのも大きいだろうが、人気が絶頂に近いタイミングでの卒業だったので、世間の驚きや衝撃がすごく、その影響が一番であるのは間違いない。

「世の中の人をびっくりさせて注目を集め、新しいエース候補のコを入れて新鮮味を持たせて、グループの人気を引き延ばす戦略だったって聞きました。美悠さん本人は、メンバーと仲が良かったですし、まだ卒業したくなかったんですって。それまでいろいろやらせたみたいに、事務所が堂々と辞めさせたというならまだしも、彼女の意思で卒業を決めたようにさせられて。だから、彼女は嫌気がさして、芸能界からも去っていったって噂もあるそうですが、弟の青山さんはお姉さんを傷つけた事務所にとても腹が立った。それで、反面教師として私たちには、アイドル自身がどう活動するかすべて決定する、セルフプロデュースをやらせたいんでしょう」

 ふーん。

「とはいえ、極端だよね。また言うけど、こっちは採用されたばかりで何もわからないっていうのに。それに、その割に、この三人組にするのは決めといてさ」

「まあ、文句を口にしたところで、しょうがないんじゃないすか。芸能界なんて身勝手な変わり者ばっかでしょうし。それで、どうします? ファン獲得のほうは」

「そうそう。でもその前に、また今『すか』が出たからね、理恵ちゃん」

「あ、すみませーん」

 理恵ちゃんは、「てへ」といった、愛嬌たっぷりの態度で謝った。

「まずSNSでしょ。だけど、それならみんなやってるもんね。絶対にもっと何かしなきゃ駄目だから……」

 うーん……。

「葵ちゃん、何か良いアイデア、ある?」

 理恵ちゃんと二人でばかりしゃべっていたのもあって、彼女に訊いてみた。

「え……路上ライブをするとか、ですかね」

「そっか。なるほど」

「あったまいいねー、こーいつー」

 理恵ちゃんがまたしても葵ちゃんの肩をバシバシ叩いた。

「それ、やめなさいっつーの」

「あ、すみませーん」

 路上ライブか。別にやりたい気持ちはないけれど、どうせ人前に出なきゃいけなくなるんだから、根性をつける意味でもいいだろう。

 こうして、私たちは路上ライブに挑戦することになったのだった。


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