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私たちはアイドル  作者: 柿井優嬉


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2/22

 合格の連絡を受けた数日後の日曜日に、採用された事務所の「ロー・キー」から来るように言われたので、足を運んだ。

 オーディションはこれまで何度も受けて慣れてきていたから、そのときよりもドキドキする。

 小さい事務所といっても建物は五階まであるビルで(思いきり縦長ではあるけれども)、通された部屋のドアを開けると、フローリングの床に十脚ほどのパイプ椅子だけが置かれた、やや広い室内に、私と同じく呼びだされたのだろう、一人の女のコがちょこんと座っていた。

 目が合い、「どうも」という気持ちで軽くおじぎをし合って、その彼女とは少し離れた位置の椅子に、私も腰を下ろした。

 先にいたコは、かなり小柄で、髪はショート。おそらく中学生か高校生だけれども、童顔と背の低さから、小学生と思ってもおかしくはない。めちゃくちゃ美人とまではいかないが、アイドルになろうとするだけはあるといったレベルの可愛さだ。ロリコンの男の人にはたまらないんじゃなかろうか。

 ただ、とても内気っぽい。一言も言葉を交わしておらず、一目見ただけなのに、そう感じるくらいおとなしい雰囲気がにじみでているのだから、当たっている確率は高いに違いない。

 携帯をいじるなどして、ちょっと経って、正面の高い位置にある、壁掛け時計が目に入った。事務所から指定された時刻は午後の二時。あと十分くらいだ。

 待てよ。合格者が何名なのか聞かされていないけれど、もうそんなに時間がないのに、私たちだけということは、もしやこの二人によるグループ、その場合デュオって言うのか、で、やっていかされるのか?

 だとすると、先に来てたコがイメージ通りの無口だったら、必然的に私が、べしゃり担当になるよな。苦手でどうしようもないほどではないものの、私も話は達者じゃないというのに。しかも、聞いているお客さんやファンから、「お前はいいから、もう一人のコにしゃべらせろ!」って言葉が飛んでくる展開になる気がする。

 ここの人たちは、私は引き立て役で、先にいた彼女がメインという構図まで描いて、私たちをピックアップしたんじゃないだろうか。だからこそ、別のところのアイドルオーディションは落選に次ぐ落選だった、華のない私なんかが選ばれたんじゃないの? 考え過ぎかな?

 そうこう思考を巡らせていたら、二時まで残り数分となった。

 こんな大事なシチュエーションで遅刻なんてやらかすはずはないから、もう本当に他のコは来ないよな。

 えー、マジで? ほんとに私たち二人でのグループ、っていうか、コンビ? デュオ? なの? まさか、それぞれソロで売りだすなんてことは、もう一人の彼女は考えられなくはないが、私はあり得ないから、もっと可能性は低いだろうし。

 やっていけるかな? このすごくコミュニケーションが苦手そうなコと二人きりで……あ。

 誰かが部屋の外からドアノブを回し、ガチャッという音がして私は視線を向けた。そして入ってきたのは、事務所の社長の青山進さんだった。オーディションの際と同じく、スーツの上とネクタイを身につけず、ワイシャツの一番上のボタンを外しているという格好である。

 この事務所が大きくないのは設立から日が浅いこともあるのだろう、青山さんはおそらく三十歳くらいと若いのだが、オーディションのときずっとムッとした顔つきだった、気難しそうな人だ。

 機嫌を損ねないように、きちんとあいさつしなければと思い、私は立ち上がった。すると——。


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