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「何をやってんだ!」
事務所で、青山さんに叱られた。
「こんな問題を起こすようなら、デビューはなしだぞ!」
「すみません……」
私が謝ると、理恵ちゃんが直後に言った。
「私が、ファンになってもらえるようにカラオケボックスで歌を聴いてもらうために、男性に声をかけようって提案したんです。なので、悪いのは私です」
怒った表情の青山さんが、理恵ちゃんをじっと見つめた。
「責任を取れと言うのであれば、私だけメンバーから外して、八重さんと葵ちゃんは許してあげてください」
え? 理恵ちゃん、そんな……。
「ほう」
青山さんはそうつぶやいた。
「待ってください! 違います、私が悪いんです!」
理恵ちゃんの言葉を青山さんが受け入れてしまうかもしれないと思い、私は慌てて声を出した。
「リーダーなのに私が全然役に立たないから、彼女は無理にアイデアを出さざるを得なくなってしまったんです」
「八重さん、かばってくれなくていいですよ」
「かばってなんかないよ」
理恵ちゃんにそう返してから、青山さんへ話すのを続けた。
「だいたい、理恵ちゃんは危険をきちんと考慮して、オタクっぽい、おとなしい男性にだけ声をかけようと言っていたのに、なかなか良い返事をしてもらえなかったので、まったくオタクという感じではないあの男たちからの誘いに、歌を聴いてもらうチャンスだと思った私が乗ったんです。彼女は危ないんじゃないかと待ったをかけたにもかかわらず、秋葉原で遊んでる人たちだから大丈夫だよってはねつけて。それに……」
私は理恵ちゃんに視線を向けた。
「理恵ちゃん、ごめん。理恵ちゃんの家の生活が楽になれるように、一刻も早いデビューを目指して、私はファンを獲得する方法を考えて頑張ってるんだ、なんて口にしたけど、あれ、嘘なの」
「え?」
「本当は、自分のためだったんだよ。私、すごいバカで、学校の勉強の成績がひどいの。国語はいいんだけど、あとの主要教科、特に算数と数学は小学校の途中からちんぷんかんぷんで、介護施設巡りをやろうと言いだして、理恵ちゃんと葵ちゃんを無理やり引っ張っていったのは、あの少し前に受けたテストの点が一段と悪くて、『芸能界で生きていくしかないから、なんとしてもデビューしなきゃ』ってお尻に火がついて、それで一生懸命だったたんだよ」
そして、青山さんに訴えた。
「誰かが責任を取るのであれば、理恵ちゃんじゃなくて私です。葵ちゃんはおおごとになるのを防いでくれたわけですし、二人は許してあげてください」
「じゃあ、歌に対する情熱はないってことなのか?」
「え?」
「勉強ができなくて芸能界で生きていくしかないから頑張ったんだって、今言っただろ。オーディションを受けた動機がそういうことならば、歌手をやる熱意があるわけじゃないのか?」
「……そうですよ」
なにか急に、私のため込んでいた感情が刺激された。




