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私たちはアイドル  作者: 柿井優嬉


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15/22

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「きみのことを~ 愛してる~」

「おー!」

「ヒュー」

 立って前で歌う私たちを、座って観ている男性たちが盛り上げてくれた。

「いいよ、きみたち。絶対に売れる」

 メガネの男性が言った。

「え? 本当ですか?」

 私は喜んでその言葉に反応した。

「うん。間違いない」

 きっぱりとそう口にした彼に、隣にいる優しそうな男の人が続けた。

「こいつ、筋金入りのアイドルオタクなんだ。この男が断言してるんだから、自信を持って大丈夫だよ。俺ら、友達にだとか、たくさん宣伝してあげるしさ」

 私は葵ちゃんと理恵ちゃんと微笑み合った。

「ありがとうございます!」

 メンバー三人揃っておじぎをした。

「じゃあ……」

 男性たちは顔を見合わせた。

「ちょっと、帰る前にトイレに行ってくるね」

 一時間と初めに約束して、もうその時間が経過したのだ。

「はい」

 男性が三人とも部屋から出ていって、私たちは改めて笑みがこぼれた。

「やったね。アイドルオタクの人に間違いなく売れるって言われたし、宣伝もしてくれるってよ」

 私は二人にしゃべった。

「八重さんのおかげですー。救われました」

 理恵ちゃんも嬉しそうだ。

「そんなことない。理恵ちゃんのアイデアが良かったからだよ」

「えへへ。そうですか~」

 そんな感じで私たちが浮かれきっているなか、ドアが開き、戻ってきた男の人たちが顔を見せた。

「じゃあ、行く? 金はこっちで払うからいいよ」

「えー、いいんですか?」

 この後も別の人を誘ってカラオケボックスを利用することを考えれば、出費を抑えられるのはとてもありがたい。

「もちろん。女のコにお金を出させるなんて恥ずかしいまねはできないよ。近い将来に、売れっコになっているのは間違いないきみたちに、俺らおごってあげたんだぜって自慢もできるしね」

「ありがとうございます!」

 またお礼を述べた私たちは、小声で「本当に善い人たちだね」などと話しながら通路を移動した。

 そして、カラオケボックスの入ったビルから、もう少し進めば外に出るというところで、前を歩いていた男の人たちが振り返った。てっきり別れのあいさつをするのだろうと思った、

 のだが——。

「じゃ、この後は男女ペアになって、分かれて遊ぼう。俺の相手は、きみ」

 男性のなかで中心的な存在だった、一番優しそうな人が、そう口にして理恵ちゃんに接近した。

「え……」

 理恵ちゃんは戸惑いの表情を浮かべた。

「きみとペアになるのは、俺ね」

 今度は、メガネの男の人が葵ちゃんに近寄った。

「お前は、俺。ジャンケンで負けて、しょうがねーからだぞ」

 ごつい顔立ちの彼が、かなり不満そうに私のもとに来た。

 ジャンケンって、帰り際にトイレに行くと私たちに告げて、部屋から出ていったときにやったのか。

「あの、私たち、他の人にも同じように、歌を聴いてもらうのをやろうと思ってるんですけど」

 私は男性たちに訴えた。

「大丈夫だよ、もうやめちゃって。さっき話したように、俺たちが友達とか知り合いみんなにいっぱい宣伝してあげるからさ」

「で、でも……」

 すると、優しそうだった男の人の態度が急変した。

「おい。こっちは、下手くそな歌を何曲も聴いて、金まで出してやったんだぞ。付き合えって」

 げっ。やば——。

 そう思った直後、葵ちゃんが走って、あっという間に外へ出ていった。

「あ! バカ、何やってんだ!」

 優しそうだった男が、葵ちゃんの間近にいたメガネの奴に言った。

「しまったー。あいつ、ずっと口を開かないで、おとなしかったから、とろいんだと思って油断した」

「チッ。まあ、しょうがねえ。お前は相手がいなくなっちまったけどな」

「ああ」

 メガネの男が落胆した顔つきで返事をすると、ごつい男が私と理恵ちゃんをにらんで声をかけた。

「お前たちは逃げるなよ。払った金のぶんくらいは楽しませろ」

「えー」

「そんな……」

 私と理恵ちゃんは不安な表情で見つめ合った。葵ちゃんのように隙を見て脱出するのはもう無理だろう。

 どうしよう……。

「ほら、来い」

「いやー」

「言うこと聞かねえと殴るぞ」

 その場で少しの間、連れていこうとする男どもと、抵抗する私たちによる、小競り合いが続いた。

「コラ! 何をやってるんだ!」

 突然そう声がして、目をやると、警察官がビルの出入口から入ってきた。その後ろに葵ちゃんがいる。

 交番に行ったかして、連れてきてくれたんだ!

 助かった~。


 後で判明したのだが、あの男どもは、私たちが道行く男の人に声をかけているというのをどこかで耳にしていたのだ。そして、近づいても自分たちも誘われるかはわからなかったので、私たちを安心させるために優しい雰囲気を装って、向こうからアプローチしてきたのだった。



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