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私たちはアイドル  作者: 柿井優嬉


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「いや、いいです」

 目の前のオタクっぽい男の人は、そう言って私たちの歌を聴いてもらえないかという誘いを拒んだ。

「そうですか。すみませんでした」

 私が頭を下げると、その彼はそそくさと離れていった。

 さっそく秋葉原に足を運び、一人や数人の男性の十組ほどに声をかけたが、断られるか、無言で立ち去っていかれるかばかりだ。

 なんでだろう?

 話しかけた人がたまたまみんなアイドルに興味がなかったのか、本当は行っていいんだけどシャイだからそうできなかったのか、私たちがお金を奪おうとしているといった何か魂胆があると思ったのか、理由がはっきりしない。

「八重さん、すみません。オタクっぽい男性なら、モテないだろうし、喜んで、そんなに苦労せずOKしてもらえるだろうと考えてました。甘かったですね」

 理恵ちゃんが沈んだ表情でそう口にした。

「ううん、私も同じように思ってたよ。衣装が、やっぱりもっとアイドルらしいほうがいいのかも」

 歌うときの振り付けもだが、どういうのがいいかを三人で相談して、最初の合唱部みたいなときよりはましになったはずだけれど、セルフプロデュースで自分たちの意思で決めるうえで、ブリブリのアイドルは私たちがやりたいスタイルじゃないということで、控えめな感じになったのだ。でも、奇抜な格好の人も珍しくないここ秋葉原では、やり過ぎくらいの服装にしておいたほうが、本当にアイドルなんだと信じてもらいやすいだろうし、うまくいったのかもしれない。

 とはいえ、ちゃんとファンになってもらうのが目的で、今だけ成功してもしょうがないしな。

「あれ? なんか、すごく可愛いコたちがいるぞ」

 ん?

 近くから、こっちのほうに向かって声が聞こえて、視線を注いだ。

「ねえ、きみたち、僕らとお茶でもしない?」

 大学生か、そんな印象の、二十代前半くらいだろう若い男性で、今話しかけてきた優しそうな人に、ちょっと見た目はごつい人、そしてメガネをかけた人の、私たちと同じで三人組のようだ。

「あ、あの、私たちデビュー前のアイドルなんですけど、それなら一緒にカラオケボックスに行ってもらえませんか? 歌う姿を観てもらいたいんです」

 断られ続けるさなか、「向こうから誘ってくれるなんて、ラッキー」と思い、私は慌てて言った。

「え? アイドルって、冗談じゃなくて本当に? ちゃんとした芸能事務所に所属してるってこと?」

「はい」

「歌う姿を観てもらいたいっていうのは何なの?」

「自分たちでファンをたくさんつくらないと、デビューさせてもらえないんですよ。なので、存在をアピールしているんです」

「マジで? 大変だね。いいよ、全然、聴いてあげるよ。なあ?」

 ずっと会話の相手だった優しそうな男性が、他の二人に訊いた。

「ああ」

「お茶しようとしたんだから、場所がカラオケボックスだって、もちろんいいよ」

「だってさ。じゃあ、行こうか?」

「あ、ちょっといいですか?」

 理恵ちゃんがそう待ったをかけて、私の耳もとでささやいた。

「いいんですか? オタクって感じじゃないですけど」

 確かに、彼らはオタクというイメージではまったくない。

「でも、悪い人たちではなさそうじゃん。オタクっぽい男性は、本当は構わなくても、シャイなせいでOKしてくれないのかもよ。この人たちだって秋葉原で遊ぶくらいだから、大丈夫でしょ」

「どうかした?」

 優しそうな男の人から呼びかけられた。

「あ、いえ、何でもないです」

 私は答えた。

「なら、行こっか?」

「ほら、せっかくのチャンスだから、逃したらもったいないよ」

 理恵ちゃんと葵ちゃんに小声で言って、私は男性たちに再び返事をした。

「お願いします」


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