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私たち三人は、歌やダンスのレッスンをするので事務所から呼ばれて集まる。他の日にも自分たちで連絡して会うけれども、そのレッスン後は必ず、ファン獲得をどうするか話し合ったり行動したりしている。
前回のことがあって、今日は理恵ちゃんと顔を合わせるのが気が重かった。怒っていて、冷たくされるんじゃないか不安だったのだ。
ところが、彼女の私に対する態度は、思っていたのと正反対だった。
「リーダー、じゃなかった、八重さん、この前はすみませんでした。私のためを思って、一刻も早くデビューできるように、ファンをつくるアイデアを出して頑張ってくださったのに、同じくらいの熱量で努力せず、挙げ句の果てには『効率的じゃない』だなんて愚かな発言までしてしまいまして」
心から申し訳ないと思っているのが伝わる振る舞いだった。
「あ、いや……」
「それで、反省して、私もどうすればいいかを一生懸命考えたんです。たいしたアイデアではないですけども、聞いてもらえますか?」
「う、うん」
「秋葉原なんかにいる、見るからにオタクといった男性に声をかけてカラオケボックスに一緒に行って、私たちが歌うのを聴いてもらうというのはいかがでしょう? ファンになってもらえる確率が高くないですか?」
その案を耳にして、前回のごたごたから完全に頭が切り替わった私は、素直に意見を言った。
「でも、それ、ちょっと危なくない? ちゃんと歌を聴いてくれるのだけで済めばいいけど、知らない男の人を誘うなんて」
「ですから、非力で危険が低い、どう見てもオタクという人にしぼってお願いするんです。オタクの人たちって、見た目は悪くても、心はジェントルマンなんですよ。私、メイドカフェの店員はどういうモチベーションであの仕事をやってんだろう? って疑問を抱いたときがあったんです。給料が良いのかもしれないですが、カフェなんだから店の儲けを考えれば、無茶苦茶高くはないだろうしって。それで自分なりに分析して、おそらく、お金とかだけじゃなく、メインの客のオタクの男性は優しくて善い人たちだから本気で奉仕したくなるに違いないって結論に達したんです。アイドルとしてなってない私たちでも、いえ、駄目だからこそより一層、応援してくれると思うんです」
「そっか。うーん……。葵ちゃん、いい? それで、やってみて」
葵ちゃんがいいなら私もいいかと思い、訊いた。
「……はい」
彼女は、嫌そうではなく、しっかりとうなずいた。




