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私たちはアイドル  作者: 柿井優嬉


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「ハー」

 ため息をついた私は、理恵ちゃんと葵ちゃんに声をかけた。

「帰ろっか?」

「はい」

「……はい」

 私たち三人とも冴えない表情だ。はーあ。

 理恵ちゃんが空腹でダウンした駅前の広場で、あれから幾度か路上ライブにトライしたのだが、足を止めたのは、面白がって馬鹿にしたように観る若い男の集団か、同情してといった雰囲気の人くらいで、ちゃんと興味を抱いて耳を傾けてくれた様子なのは一人もいなかった。

 ただ、そこは、広々としていて、人通りが多く、ギターでの歌唱やパフォーマンスを行う空間としては適していても、アイドルが歌うという点では場違いな気がする。言い訳かもしれないけれど。


 このまま路上ライブを続けてもらちが明かなそうだし、無事にやれていたものの無許可なのが引っかかってもいたので、リーダーである私がなんとか打開策を見つけねばと、ファンを獲得する他の方法はないか考えた。

「『会いにいけるアイドル』っていうのは今や当たり前だから、『会いにきてくれるアイドル』っていうのはどうかな?」

 ようやく思いついたそれを、私はメンバー二人に口にした。

「ファンがアイドルに会いにいけるんじゃなくて、アイドルのほうからファンに会いにきてくれるってことですか? 面白いと思いますけど、その肝心のファンがいないんじゃないですか」

 理恵ちゃんがそう疑問を呈した。

「じゃなくて、私たちを少しでも必要としてくれそうなところに足を運んで、歌ったりすることで、ファンになってもらうんだよ」

「……そんな場所、ありますか?」

 またもや首を傾げた理恵ちゃんだけでなく、顔つきから葵ちゃんもピンときていないようだ。

「『介護職員募集』っていう文字を、いろんな場所で、よく目にしない? 介護の仕事は大変でやりたがる人は少ないし、かたやお年寄りは今たくさんいるから、どこの介護施設も人手が足りてないんだろうね。私たちは別に介護をするわけじゃないけど、歌ってお年寄りに楽しんでもらうことで、面倒を見ている施設の人にも助けになって喜ばれるんじゃないかな?」

「うーん……。だけど、お年寄りは、アイドルの歌よりも、演歌なんかのほうが好きなんじゃないですか?」

 理恵ちゃんが違和感ありありの表情で反論した。

 せっかく何日も頭をひねって、ようやく出したアイデアなのに、ちっとも乗り気になってくれず、私はムカッとした。

「それ、偏見だよ。『年寄りは演歌だろ』なんて。絶対にうまくいくと思うけど、やるの? やらないの?」

「まあ、やるのは全然構わないですが」

「……私も」

「じゃあ、電話で問い合わせてみよう」

 そして、私は近隣の介護施設に電話して説明し、受け入れてもらえるかを尋ねた。

「うちはそういうの受けつけてないから」

「ごめんなさいねー」

「そんな電話かけてこないで。迷惑なんだよ」

 ……。

「また駄目だったんですか?」

 理恵ちゃんが問いかけた。彼女と葵ちゃんの二人に「ほら、見ろ」と思われている気がした。

「スケジュールが決まってるからだよ。それに、『いたずらじゃないか?』って思われてるのかも。こうなったら、電話しないで、施設まで足を運んで飛び込みで訊こう。『わざわざ来てくれたのなら、お願い』って展開になることを期待して」

「えー。でも、大丈夫ですか?」

 理恵ちゃんが言った。

「時間がなくなっちゃうから、行くよ!」

 私は「ついて来い」というジェスチャーをして、移動を始めた。



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