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今や「学校のクラスに一人はいる」という冗談もあるくらい、女性のアイドルは大勢存在している。
男性も少なくはないが、メンバーの人数がすさまじいグループがいくつもあるし、女のコのアイドルは本当に数えきれないほどいる。
「誰が人気になるかなんて、やってみなけりゃわからないから、よほどのことがなければ採用して売りだそう」くらいの考えの芸能事務所もあるんじゃないだろうか。だから、デビューするだけならそんなに難しくないように、傍から見ると感じる。
なのに、私はアイドルのオーディションで落選し続けたのだ。
「アイドルなんて、無理、無理。だって、姉ちゃん、チョー地味じゃん」
弟にはそう言われる。
確かに、私の容姿は平凡だ。背の高さも、髪の長さも、平均的。
「いっそのこと、金髪とか、ド派手な見た目にすれば?」
とも弟に指摘された。
「嫌だ」
今どき金髪なんて全然珍しくないから、オーディションの他の参加者のコとかぶるだけになるかもしれないし、たとえ目立つことができても、結果、本当はしたくないのに、その姿をずっと続けなきゃいけなくなったりとか、無理がたたって損をする羽目になる可能性だってある。
自分では、ブスではないと思う。かといって、男子にモテることもない。これまでの人生で交際を申し込まれた回数はゼロだ。
そして、ちょっと前に十八歳になった。高校三年生である。二十歳を超えたアイドルも少なくないが、デビューする年齢としてはそろそろ限界かもしれない。であれば、断念して違う道に進むことを真剣に考えなくてはならない。
「ハー」
気分は沈み、最近ため息をよくついていた。
ところが——。
「え?」
「電話があって、合格だって」
ある日、学校から帰ると、母に告げられた。
「うそ……やったー!」
先日受けた、小さい事務所のアイドルオーディションで、ついに選ばれたのだ。
小さいところといっても、参加者はいっぱいいて、私より可愛いコばっかりだったし、けっこう日にちが経っていたので、今回も駄目だったんだとほとんど諦めていたというのに——奇跡が起きた!
「どうだ、見たか。わかる人にはわかるんだよ」
私はその日、うまくいかないのを笑われた今までのお返しとばかりに、弟に強い口調でそう言い放つと、
「やっほーい!」
ずっと浮かれ騒いで、いつ以来か思いだせないくらい久しぶりに、ぐっすり眠ったのだった。




