第七話 5年前へ(6) 取り戻す九尾の力「見ろっ!人がゴミのようだッ!」
【あらすじ】
ジジイに紹介されたら狐が空気投げして
爆発炎上?裏山で謎のDQNに襲われて
なぜかム◯カ大佐が登場←イマココ
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「はぁ、はぁっ……!」
舗装もされていない獣道を、ムイカリが全力で駆け抜ける。
後ろからは、あの緑色の小人ゴブリンが、奇妙なセリフを叫びながら追いかけてくる。
「どこへ行こうというのかねッ!」
「鬼ごっこは終わりだッ!」
さっきから何いってんだっ?。
ムイカリは心の中でツッコミを入れつつも、全速力で走る。
やがて、視界が開けた。 目の前には一本の巨木。
その根元には、手足を縄で縛られたボロボロの人物が木にしばられている。
「アンタ……ギンジかい?」
「……やあ、姐さん。無事でよかった……」
ギンジと呼ばれた人物…ムイカリさんとは旧知の仲のようだ。
「終点が玉座の間とは、上出来じゃないか」
後ろから迫るゴブリン大佐が、またしても意味不明なセリフを吐く。
「姐さん!逃げてください!俺より姐さんの方が強いけど……あいつらには敵わないっ!」
「わかった。ちょっと待て、その前に――あの訳わからんのをどうにかしないと」
「……3分間待ってやる」
「へっ?!」
まさかの提案に、ムイカリが間の抜けた声を漏らす。
本当にゴブリン大佐は動きを止め、待機状態に入っている。
今がチャンスだ。 ムイカリは急いでギンジの縄を解こうとする。
「ギンジ!単刀直入に聞く、あの祠の主は、あんたかい?」
「ああ。俺が、あの狐塚の守り手だ」
ムイカリは一瞬、寂しげに微笑むと――
「……そうかい…」
「……ったく、なんて頑丈に縛ってるんだよっ!」
ムイカリが苦戦しているのを見ながら。
ギンジがモゾモゾと身をよじる。ポケットから青い石がポロリと落ちる。
「これは…?」
「これがご神体だ。これを祠に戻せば、再び鬼門は封じられるはずだ……
姐さん……たのむ…俺のかわりに……」
「ギンジ……」
ムイカリは一瞬の沈黙の後、力強く言う。
「ダメだよ。アンタが戻しな。これはアンタじゃなきゃダメなんだ」
その瞬間、ムイカリの中で何かがハジけた。
――ドクン。
金色のオーラがムイカリの背後から立ち上がり、それは九本の尾の形を取る。
九尾。狐の頂点に立つ存在。
「……時間だ。答えを聞こう」
ゴブリン大佐がじりじりとにじり寄ってくる。
「答えは、これだよっ!」
九尾の力を解放したムイカリは、縄をいとも簡単に引きちぎった。
そして、淡い金色のオーラを纏い、白い巨大な狐へと変化、
そしてギンジをくわえて大空へ跳躍した!
「どこへ行こうというのかねッ!」
ゴブリン大佐はクラウチングスタートからの爆発的ダッシュで追撃! その勢いのままムイカリの尻尾にしがみつく!
「見ろっ!人がゴミのようだッ!」
空中でそんなセリフを吐くゴブリンに、ギンジは呆れながらも問う。 「姐さん、いいんですかい?」
「いいよ、もうめんどくさい!」
「さあ、祠までひとっ飛びだよっ!」
―――――
場所は変わり、蔵間屋敷。
時は少し遡る。
蔵間家では、継とムイカリが瘴気を追って出ていった後――
一人の男が屋敷へと到着していた。 年の頃は四十代前半。
整ったスーツを自然に着こなす、まさに"イケオジ"。 彼の名は蔵間総一。
葉子の父であり、蔵間家の実質的な頭だ。
「……なんだこれは……」
屋敷の惨状に、目を見張る総一。 爆発事故、負傷者、そして愛娘・葉子の衰弱。
「聞いてた話と違うじゃないか……」
いても立ってもいられず、総一は真っ先に稲荷社へと足を向ける。
社に祈れば、必ず道が拓ける――それが、彼の信仰。
「今回も、きっとうまくいくはずだ……なあ、向狩くん」
彼の脳裏に浮かぶ、美しき経営コンサルタントの姿。 その存在が、数々の成功を導いてくれた。
「この稲荷社に祈りな。そしたらどんどん成功させてやるからね!」
そんな彼女の言葉が頭に浮かぶ、総一はクスッと笑う。
そして――
ドクン。
総一は、社の奥から微かに金色の光が漏れ出すのを感じた。
「……っ? 今のは……」
まばたきをしても、光はもう見えない。 幻覚か? 気のせいか?
ふと、裏山の方へ目を向ける。
「……向狩、くん……?」
彼の瞳が、なぜか山奥を見ていた。
――つづく――
次回、
「ひざますけっ!命乞いをしろっ!小僧から石を取り戻せっ!」
↑おまえが石を取り戻せ!!
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