第六話 5年前へ(5)祠の秘密と謎の敵!?「はぁっはっはっ! どこへ行こうというのかねッ?!」
【前回までのあらすじ】
5年前の回想から狐がエロかったらジジイがなげとばされて爆発!
なんかゴブリンが自爆して腕噛まれて治って←イマココ!
* * *
瘴気を追ってたどり着いたのは、
山の中腹にある小さな洞窟を利用した、かつての祠だった。
かろうじて鳥居の根元が残り、神殿は無残に荒れ果てていた。
壊された狐の像が転がり、ご神体らしきものの姿も見えない。
「こりゃひどいね……ご神体まで、何者かに持ち出されたみたいだよ」
ムイカリさんがそう言う。
たしかに、ご神体らしき痕跡も見当たらない。
破壊された形跡がない以上、持ち去られたと見るべきだろう。
「なるほど。ここ、屋敷の方角から見て北東……鬼門の位置だね」
北東──風水では鬼門の方角。
祟りや邪気が入ってくるとされるこの方角に、社や祠を建てるのはよくある話だ。
「ってことは、この狐塚が鬼門の封じになってたんだな」
それが壊されたことで、
屋敷に向けて溜まっていた“狐の気”と“鬼門の邪気”が一気に流れ込んだ。
そして、それを最も強く受けたのが──葉子だった、というわけか。
「でも、葉子の狐憑きはここが原因として……あの化け物たちは何なんだろうね?
邪気が濃すぎて凝ったってだけじゃ、説明がつかないんだよ。
私も長く生きてるけど、あんなの初めて見たよ」
「長く……ムイカリさん、今いくつなの?」
「なっ!? レディに歳を聞くとかマナー知らずにも程があるよ!」
しまった……つい口が滑った。
「まったく、そんなにこのお姉さんの歳が気になるのかい?
ん? いろいろ教えてあげようか?」
と、ぐいっと距離を詰め、胸元を開け気味に見せつけてくるムイカリさん。
なんでいちいち無駄にエロいんだ……
前言撤回。気にしてない。このエロキツネ。
「さて、原因もわかったし。爺さ……会長に報告するか」
その言葉にムイカリさんがピタリと固まった。顔がサッと青ざめる。
……効果テキメン。今後もウザ絡みしてきたら、この手でいこう。
ともかく、祠を修復してもらわないことには鬼門封じができない。
僕は外に出ようと一歩踏み出す──その瞬間。
ヒュィン……!
額に書いた龍体文字『か』が反応し、視界が歪む。
次の瞬間、僕が頭を砕かれて倒れる未来のビジョンが脳裏に走った!
「ムイカリさんっ!! 危ないっ!」
叫ぶと同時に、彼女を抱えて跳躍── その瞬間、
さっきまで僕たちがいた場所が爆発した!
ドガンッ!!
「ッハァ……間に合った……」
『か』は“可視化”の文字。 今の僕は、周囲360度に目があるようなものだ。
命の危険が迫れば、未来のビジョンすら見える。
「ほう……不意打ちのつもりだったが、避けられるとは。やるな、鬼の末裔」
土煙の中から姿を現したのは── 黒の革ジャンにピッチリとした皮ズボン。
髪は妙な色に染めた、街のチーマーのような男だった。
「な、なんだいあのタイプ!? いるよね、街にああいうの!」
「おい!人をチンピラみたいにいうなッ! 俺の名はムガイだッ!」
「何が“ムガイ”だよっ! 害しかないじゃないかっ!」
ムイカリさんの容赦ないツッコミが炸裂する。
その男──ムガイは怒りを露わにし、両手に邪気を纏った。
「その邪気……屋敷に現れた化物と同じだな。仲間か?」
「誰が教えるかっ!!」
ムガイが殴りかかってきた。僕は咄嗟に警棒で受け止め、後ろに跳び間合いを取る。
この警棒、すでに白龍を憑依させた“白龍モード”だ。 あれをまともに受けたらただでは済まない。
しかし──ヤバい。力はムガイの方が上だ。 このままではジリ貧……。
……いや、負ける…。
数合を交わすうち、気づいた。
奴の両手の邪気は、切り結ぶたびにわずかに減っている。
どうやら、それを祠の邪気から補充しているらしい。
──ならば、祠を封じれば。
僕は懐から2枚の札を取り出し、ムイカリさんに投げる。
「この札に書いてある龍体文字を、白紙の札に写して! それで、ご神体を探してくれ!」
「どうやって?」
「“願う”だけでいい。祠とご神体にまだ残ってる神気が反応するはず!」
ムイカリさんが札に文字を書く。 すると、札が黄金に輝き
──空中をくるりと回り、一点を指し示した!
この文字は、“ゐ(ウィ)・さ”。探し物が見つかりやすくなる龍体文字だ。
「この光りが指す方向に、ご神体があるんだね!
わかった! 任せなっ!」
そう言ってムイカリさんが走り出した……と、同時に。
「やらせるかよッ!!」
ムガイが左手から緑色の小人を生み出した。
「コイツは俺の指示がなくても動けるようにしてある……! 行け、キツネを止めろ!」
その小人は、メガネにスーツ姿で── どこか金曜ロードショーで見たような風貌。
「3分間まってやる!」
「イヤイヤッ!早くいけぇっ!」
と、言うムス……じゃない緑の小人にツッコむムガイ。
「いぃっ!?……コイツ、喋ったぁ!?」
「ふははは! どこへ行こうというのかねッ!」
クラウチングスタートからすさまじい勢いでムイカリさんを追うゴブリン。
──ともかく、ムガイの片手の邪気は失われた。 これでようやく互角に戦える……
* * *
つづく
次回
ムイカリさん、空を駆ける。「見ろっ!人がゴミのようだっ!」
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