第十一話 鬼界カルデラと謎の石。そして現るヒーロー!
【あらすじ】
長い5年前の回想から戻り、現在へ……
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ここは、五鬼 継達が住む、五木家より徒歩一分ほどにあるさびれた道場。
かつて、孝継の曽祖父【五鬼 幸継】が現役だった頃は、ここは剣術道場を営んでいたが。いまでは面影を残すのみである。
ちなみに、五鬼家は普段は別の名を使っている。五鬼継は五木である。
しかし、外はボロでさびれていても。中に入ると綺麗に整えられている。
今では、継や葉子が普段修行する場所として使われている。
そして、その五木道場の中では。いま葉子が修行中だった。
蓋を開けた色を書いたボールペンが5本。しかしそれには芯は入っていない。
「いけぇ!」
と、葉子が気合いを入れると、その芯を取ったボールペンの先から5匹の管狐が勢いよく飛び出した!
道場の壁際に立っていた葉子から飛び出した管狐は、反対側の壁際に設置してある5本の空き缶に向かって一直線!
カランカランッ!
そして、空き缶に命中したのは三匹だった。
「ああ〜……二匹当たらなかった」
パチパチパチ
拍手しながら道場に入って来たのはムイカリさんだ。
「いいじゃないか。先週までは二匹がせいぜいだったじゃないか」
「ムイカリさん………」
5年が立ち、少し背が伸び多少大人びた葉子に比べ。まったく容姿は変わらないムイカリさん。
「でも、三匹とも狙った缶だったわけじゃないの。
まだ、気が散るとコントロールが…」
「心の揺れは式を乱す。ま、それも修行のうちさ、焦るとよけい乱すよ」
と、ムイカリさん。
「ま、それはそうと。そろそろ時間じゃないかい?」
「あ、そうだバイトに遅れるっ!!」
と、急いで道場を出ていく葉子。
「ごめんムイカリさん!道場戸締まりお願いします!」
「はいはい、いってらっしゃい」
やれやれと言った表情で見送るムイカリ。道場の戸をしめて、道場の真ん中に歩み寄る。
「ゆき爺ぃ、いるんだろ?」
………すると、白いモヤが出てきたかと思うと。それが孝継の曽祖父、幸継の形をとる。
「おぬしに爺呼ばわりされる言われはないわい、それを言うたらおぬしは婆もいいとこじゃろうが」
「ワタシはいいんだよ、神様だし。見た目の問題さ。
それより、前の神社での件。今回はちょっと勝手が違うねぇ」
「うむ、邪気の残滓が強い!おそらく、タカ坊が呼び出されたのも、これが原因じゃろう」
「だね、あのボウヤ。無理しなきゃいいけど」
と、少し遠くをみる仕草のムイカリ。
ゆき爺も、ただ黙って頷くのみだった………
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その頃、継は。
あの、例の神社での一件でのあと。
五鬼 助さんにより、神社にて調査がおこなわれた。
そして、いま。僕は五鬼 助さんに連れられて、警察署内にいる。
僕の服装は、いたって普段着。見た目はまさに中学生なんで、
助さんの後ろを付いて歩いていると、
さながら補導されてきた未成年かのようである。
………いたたまれない。
「さて、この部屋の中だよ。」
と、五鬼 助さんが懐からカードキーを取り出しドアのスリットに通す。
ガチャリ
と自動的に鍵が開く、五鬼 助さんがドアを開けると。
その部屋の中央には、黒い手のひらサイズの石が封印された瓶の中に入っていた。
「これが……?」
「そう、あの神社に出現した妖異の原因だよ」
僕の問いに答える助さん。一見、真っ黒でツヤの無い。ただの石に見える。
だが、この石がある事で、妖異がその周りに自然発生するらしい。
「周辺への調査でも、あの日だけで何かに取り憑かれたかのように人が発狂したって報告が相次いでいるよ。」
………そんなに……?
「これって、触ってみてもいいの?」
と、興味本位で聞いてみる。
「それは、止めておいた方がいいかな。たぶん継くんなら大丈夫だとは思うけど、
鬼の力とこれが、どう反応するかわからないからね」
たしかに、封印でかなり抑えられてるけどそれでも禍々しい邪気が漏れ出てる。
「分析の結果では、成分的には溶岩石であろうことがわかっている」
「溶岩石……、てことは。やつらは火山地帯の近くにいるって事ですか?」
獄鬼衆………あの5年前の蔵間家での事件以来、その姿を現していないが。
あのゴブリンのような化物は、正式には妖異と呼ばれ。
神社を始め主要なパワースポットと呼ばれる場所に出没するようになった。
そして、そこにかけられている結界をことごとく壊して回っている。
なぜなのか?……それは依然としてわかっていない。
「その可能性もあるね、ただ。これが、どこの火山の溶岩石なのかがわかってないんだ。
東シナ海にある海底火山の鬼界カルデラが成分的には酷似しているらしいけど」
「鬼界カルデラ………また鬼か…。偶然にしては出来すぎてるけど…」
「獄鬼衆の事だよね、僕もそう思う。
でも、似てるけど、どの年代の地層とも一致しないんだってさ」
と、肩をすくませる助さん。
残念ではあるけど、可能性は捨てきれない。けど、海底火山……調べるにしても手段がない…
「で、継くん。今回、君に依頼したいのは。
この石を、政府が管理してる呪物庫へ輸送する護衛を頼みたいんだ」
「わかりました!僕と助さんの二人でですか?」
「いや、今回はもう一人、同行者を頼んでいるんだ」
「えっ?!誰です?もし妖異や獄鬼衆が出てきた際には、普通の警察官とかでは刃が立ちませんよ?」
「フフフ…今回は特別に五鬼 熊さんと一緒にやることになったよ」
「………えっ!……えええぇぇぇッッ!?」
ありえないくらい絶叫した僕………
「えっ?!えっ?なんで?」
心底意外そうな助さん。
「ムリムリムリッ!だって、山を素手で割ったとか、転んだ拍子にビル倒壊させたって噂の!
あの通称【もぅむりの熊さん】の五鬼 熊さんでしょ!?僕にどう接しろとっ!」
現場のスタッフのたいがいが…「もぅむり…」とサジを投げると噂の熊さん………
噂だけ話半分に聞くとしてもとんでもない……
「い、いや。おおむね合ってるけど。
せいぜい海でクロールで普通に泳いでて、アメリカ海軍の軍艦を沈没させたとか。
野球で打ったボールがまだ成層圏で地球を周回してるとか、その程度だよ………うん…」
話半分どころかもっととんでもなかった………
さすが、現場の人が「もぅムリ……」とサジをなげた熊さん………
だめだ、不安しかない。
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その頃………。ビルが立ち並ぶコンクリートジャングル。
その中でもひときわ高くそびえ立つビルの屋上に、男が立っていた。
身長は190cmくらい、少し長めの金髪をオールバックに固め。
その瞳は顔のホリが深すぎて見えないが、瞳の輝きだけがランランと輝いて見える。
そして、その男の体格たるや、筋肉質………
いや、むしろ身体に筋肉しかついてない。
そんな身体にピッチリとしたアメコミヒーローが着るようなヒーローコスチュームに身をつつみ。
マントを風にたなびかせながら、腕を組み、立っていた。
彼の名は【五鬼 熊】
「さて!私が来たぞ………」
そのとき、マントをたなびかせていた風が止まった?
横を見ると、巨大扇風機がバチバチと音をたてている……
「ぬぅおおおおぉっ!!39800円もした扇風機があぁぁぁ~!!」
ド ガ ァ ン ッ !!
……闇夜のビルの屋上で、爆発音がこだました。
どこに?なにに言っているのか?どうしてビルの屋上?マント?コスチューム?
……そして爆発……
…………さまざまな謎をはらみつつ…
次回につづく!
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