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場面19:新商品・新サービス開始

そして、ついに運命の日がやってきた。


俺たちが心血を注いで開発した新商品と新サービスが、フロンティアの街にお披露目される日だ。


工房に籠りきりだったここ数週間とは打って変わり、早朝から街の中心部は祭りのような熱気に包まれていた。


オリヴィアさんの指示のもと、市場の一角や中央広場には特設の販売ブースが手際よく設営され、目新しい商品の噂を聞きつけた人々が、期待と好奇の入り混じった視線を向けている。


「フロンティアの皆さん! 本日より、この街の未来を、そして皆さんの生活を豊かにする、画期的な新商品と新サービスを開始いたします!」


中央広場に設けられた簡易な演台の上で、オリヴィアさんが張りのある声で高らかに宣言した。


その堂々とした姿は、もはや単なる代官の娘ではなく、この街を導く若き指導者の風格すら漂わせている。


彼女の言葉に、集まった群衆から「おおー!」というどよめきと拍手が沸き起こった。


そして、その熱気の中で、俺たちの新商品――『元気ブロック』と『タクミ・グリップ』――の販売が、威勢よく開始された。


販売ブースには、アリアが「絶対バズるって!」と豪語してデザインした、カラフルで目を引くパッケージに包まれた元気ブロックが山と積まれ、試食用に焼かれているのか、ほんのり甘く香ばしい匂いが漂ってくる。隣ではタクミ・グリップの驚くべき効果を実演するコーナーも設けられている。


「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい! フロンティアの明日の元気と未来の技術はここにあるのだ!」


その実演コーナーの主役(?)は、なぜかミミだった。彼女は元気いっぱいに、しかし相変わらず少しズレた説明で、商品の宣伝を行っている。


「この『元気ブロック』を食べれば、ミミみたいに一日中、街中を駆け回っても全然疲れないにゃ! お肌もツヤツヤ、毛並みもフサフサになる……はずなのだ! 多分! 難しいお勉強もスラスラできるようになって、フェリ姉みたいに強くなれる……かもしれないにゃ! ミミはまだ難しいお勉強は苦手だけど!」


いや、後半は完全に願望だろ! あと、毛並みフサフサは獣人のミミ限定では? それに、勉強ができるようになるとか、強くなれるとか、そんな万能薬じゃないから! めちゃくちゃな説明だけど……ミミなりに、俺たちの作ったものを一生懸命伝えようとしてくれているんだな。その気持ちが嬉しい。


俺はブースの隅で、ミミの自由すぎる宣伝文句に内心でツッコミを入れながら、拡声用の魔道具を握りしめ、必死に笑顔を貼り付けてフォローを入れる。


「えー、ただいまご紹介にありました元気ブロックですが、長時間の活動に必要なエネルギーを手軽に補給できる栄養補助食品となっております! お一ついかがでしょうか!」


「そして、この『タクミ・グリップ』を使えば、重い岩だって軽々持ち上げられて、硬い鉄だって粘土みたいにコネコネできる……かもしれないのだ! 一家に一本、常備推奨!」


(それも絶対違う! 誇大広告にもほどがあるぞ! というか、それじゃあただの怪力グリップだろ!)


俺は再びマイクを握りしめる。ミミの自由すぎる宣伝に、俺のツッコミが追いつかない!


だが、彼女の元気いっぱいの呼び込みと、時折見せるアクロバティックな実演(グリップをつけた棒を軽々と振り回したり、元気ブロックを本当に美味しそうに頬張ったり)は、意外にも人々の注目を集め、ブースの前には黒山の人だかりができていた。……結果オーライ、なのか?


一方、冒険者ギルドの掲示板や街の広場の目立つ場所には、大きな羊皮紙が何枚も貼り出されていた。


そこには、俺たちが開発した『フロンティア・ウェザーリポート』が予測した、今後数時間後から翌日にかけてのフロンティア周辺の天気が記されている。羊皮紙が風でパタパタと音を立て、集まった人々のざわめきと混じり合っていた。


「天気:晴れ(のち曇り)」「降水確率:午前10% 午後30%」「風向:北西の風 やや強し」「マナ濃度:安定(ただし夕刻より微増の兆し)」


多くの人々が、初めて目にするその情報に、期待と疑念の入り混じった視線を送っていた。


「天気予報、ねぇ……。本当に当たるのかね、こんなもん」


腕組みをした屈強な冒険者が、隣の仲間にぼやく。


「だがよ、あのオリヴィア様が太鼓判を押してるんだ。それに、あの新しい携帯食を作った連中の技術だろ? 試してみる価値はあるんじゃねえか?」


畑仕事の段取りを考え込む農夫の姿もあった。若い女性冒険者が「これで明日の依頼、雨具を持っていくか判断しやすくなるわね! 助かるー!」と友人に嬉しそうに話している声も聞こえる。杖をついたお爺さんが「わしらが若い頃には、こんな便利なものは夢物語じゃったわい……」と感嘆の声を漏らす。


まだ半信半疑といったところか。無理もない。この世界には存在しなかった概念なのだから。


それでも、物珍しさやオリヴィアさんの信頼もあってか、最初に商品を購入していく人々が現れ始めた。


「ほう、元気ブロックとやらを一つ貰おうか。長期の依頼に丁度いいかもしれん」


年配の商人らしき男が、吟味するようにブロックを手に取る。


「タクミ・グリップ……ねぇ。本当にこいつで作業が楽になるのかねぇ……。まあ、オリヴィア様の肝いりなら、物は試しだ。一つ頼むよ」


工房の親父さんだろうか、年季の入った革エプロン姿の男が、少しだけ期待したような目でグリップを見つめている。それを握った瞬間、「おおっ」と驚きの声を上げ、革と金属が擦れる微かな音が響いた。


そんな街の様子を眺めながら、俺は言いようのない感慨に包まれていた。


『マスピ! ついにデビューだよ! アタシたちの作ったものが、こうしてフロンティアの人たちに使ってもらえるなんて……超ドキドキするんですけどー! ちゃんと役に立つといいな!』


肩の上で、アリアが興奮と期待で声を弾ませている。ああ、本当にそうだな。


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