表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

管理者

白い箱みたいな部屋にある沢山の窓 

外の世界をのぞく窓 

管理者として存在するわたしは

ある時謎のループをしている世界を見つけた

まだ繰り返して数回だったから

リセットの必要は無いだろうと

その原因を見つけるためにその窓からその世界を監視することにした

原因を探るといいながら

ついついいつものように

ヒトの物語をみていたわたしは

繰り返しの世界のすべての記憶を

持っている少女をみつけた

この子が原因なのかとさらに調べてみて

特殊な魂を持つ存在だとわかったが

ループとは関係無いとわかった。

だがそのままだとその特殊な魂は壊れてしまうだろう

ここの管理者としてそれはまずい

彼女は私の次の管理者となり得る存在だからだ

原則として、管理している世界に直接手出しはできないが

特例としてそう言った存在には声をかけることができる

さてどうするかと考えながら

さらに調べていくと

そのループは

別の世界のとある国が勝手にこの世界のヒトを連れて行こうとしていたことが原因であるとわかった

召喚と言われるその行為は

トラブルが起こらないように細かい規定をつくっていて

それを違反する世界は厳罰に処さねばならない

即リセットしてやり直すかと作業していたが

その世界はリセットしてもかなりまずい状態だったので

その国の召喚士にアクセスして規約通り召喚させることにした

規約に違反していたことに関しては詳しく調べて

ことが終わってから処分することにした


そして召喚しようとしているヒトとは別枠で

彼女にも参加してもらうことにした

彼女の魂は特別で

わたしの後の管理者となるべく生まれた魂


それゆえに家族の縁も周りとの縁も薄い

彼女も例外ではなかった

その彼女が唯一心をとめたヒトが彼だった

それ自体異例なことだが

悪いことでは無い

ここでの仕事は悠久の時の如く

永遠とも言える孤独

それに耐えうる魂をもつもの

その魂が求めるものは唯一

なんの対価もなく与えられるはずのもの

いまのわたしにはいないもの

だが今のイレギュラーな状態の世界では彼女がその唯一をもとめても与えられなかった

それすら異常なことで

求められるべきものをあたえられないとわかって

わたしは頭をかかえた

そして出した結論は

わたしの権能をつかうことだった

いまはまだこちら寄りではあってもタダビトでしかない彼女の魂にどんな影響があるのかわからないが

不安定な今の彼女にできることはこれしかなかった


わたしの求めに応じて願え

彼と共にあの世界を救え

さすれば願い叶えたり


そう言って送り込んだ後は

管理者のわたしが手出しできることはなかった

彼女がその魂にアレを封じると願うことも

アレの呪いも

そしてアレが封じてすぐに滅することができないことも

全くの想定外で

今はまだタダビトの彼女に全て教えることもできず、

ただ、彼女の願いを叶えたふりをして

元の世界の時間の流れを調整することしかできなかった

そしてわたしはなんとか彼女の望みを叶える方法を考えた

わたしの権能であれば

特別な魂の彼女の願いでさえかなえられる

わたしの望みを叶えた対価

それを使って彼女の願いを叶えるために


その魂ゆえに感情を無にする傾向にある彼女

赤い月を見つめる彼女を

ただ見つめるしかなかった

赤い月の下で「月が綺麗ですね」

と呟く彼女


彼女を思う彼の夢で

お告げとしてそれをみせることしかできなかったが

彼の願いもまだ叶えていないことで

わたしが彼につかえる権能もまだのこっていた

だが管理者としてこれ以上は関われない

タダビトの彼の背中を押すことはわたしにはできない


彼女には次はない

魂の輪廻は今回で終わる 

彼の輪廻はまだ残っている

最終手段に出るべきだろうか


幸いにも彼の仲間はいいやつで

彼を吐くほどのませたあとで

彼の望みを叫ばせてくれた

良かったな

いい奴らばかりで

これでわたしの権能をつかえる


そうして

彼を彼女のいる世界に送ることができた

わたしの願いを叶えた対価なのか

彼らの記憶はそのままにできた

そしてあの赤い月の下

彼が彼女に囁いた

「月が綺麗ですね」

彼女が答える

「そうですね」

その顔は幸せに満ちていた

感情の動きにくいわたしでさえ嬉しくて

つい彼の仲間の一人にお告げとして夢に見せるほど


そして彼らがみんなで祝い酒をしているころ

あの世界では、年に一度赤い月が金になる

彼はその月の下

彼女にプロポーズしていた

あまりに幸せな感情が

彼女の魂をさらに成熟させたせいなのか

わたしの権能と共鳴して

仲間の彼ら全員にお告げとして夢にみせてしまったが

これくらいなら問題ないだろう


これで彼女は幸せな感情をもったまま

この部屋に来ることができる

いつか彼がまたここに来るまで


わたしの彼女もそろそろここにくるだろう

そうしたら私たちは溶け合って

永遠を過ごせるのだ

























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ