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彼女

それはいつものことだった

月に一度

父に連れられオトウトとハハにあう

わたしは透明人間のようにそこにいる 

父と母は元夫婦 

父は私を

ハハはオトウトをつれて離婚した


オトウトがうまれたのは

わたしが8歳のころだったか

いまにしておもえば

いつも顔を合わせれば喧嘩ばかりの

父と母がなぜオトウトをつくれたか

甚だ疑問だが無事オトウトは生まれた

母の産後の不安定な時期を

父は支えることなく

母はワンオペ子育てをするしかなかった

私もできるだけ手伝ったように思う

でも結局両親は離婚した

父は引き取った私に親切だったと思う

衣食住は不足なく準備されていたし

小遣いさえきちんと支払ってくれていた 

ただし、わたし名義の通帳にだが

学校でのあれやこれやも人を通じてきちんと対応してくれていた

虐待された覚えもないし

ネグレクトだったのかと言われたらよくわからないが

どちらかというと保護対象の同居人

と言った感じだった

ただ、月に一度母と会う時だけは

妙に上機嫌で仲のいい家族のように

私を連れで出かけていた

そしてオトウトと顔をあわせたとたん

私は透明人間になるのだ


本当は父はオトウトをひきとりたかったのだそうだ

だが当時オトウトはまだ1歳にも満たなくて

育てる自信のなかった父は

手のかからなくなっていた私を引き取ったのだそうだ

そんな事を親戚の集まった席で、珍しく酔った父が口にしていた

ハハもそれを知っていたからオトウトは渡さなかったそうだ

ひきとったのが私では

父が養育費をきちんと支払わないかもしれないから

それを知った時は強かなハハに尊敬の念さえ覚えたものだ

ハハもオトウトとあっているときの父とならその関係も良好で親子仲良くできるので、

敢えてその輪にわたしを含めることはなかった

そんなふうに何年か過ごした時

たまたま二人きりになったときに幼いオトウトは私に言った

「おまえだれなんだよ

いっつも俺の父さんについてくるけど

俺ら家族の邪魔すんなよ」

と オトウトにそんな言葉をなげつけられて

父もハハもわたしが姉であると言う話をオトウトに一度もしていないと知ったのだ

それからわたしはその親子団欒について行くのをやめたのだ

テスト勉強したいから

塾の宿題がおわらないから

クラブの合宿があるから

行かなくていい理由をとにかく探して…

そのうち父はわたしを誘うのをやめた

そして高校進学のときに

寮のある高校をえらんで

家をでたのだ

父は収入だけは良かったので

それについては何も言わなかった

そしてその学校で

あなたに出会った


たとえこのままいなくなっても

彼らの日常は何も変わらないだろう

私は透明人間だから

そして私はこの世界に残ることにした

あの世界に残してきたヒトや物そして家族だったヒトタチがどうなったか

少しは気になるかとおもったが

元々感情が希薄だったのもあるのだろう

何の感情も湧かなかった。

わたしの心を動かすのは

あなただけ…







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