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貴方は

「月 綺麗だな」とあなたは言った

その瞳に私は映っていないけど

あなたは隣にいるその人と微笑みあっていた

あなたの唯一になりたい

そうおもったのはいつからか 

何度繰り返しても

あなたの瞳に私は映らない

赤い月が輝く夜に

ここはあの世界とは違うのだと知った

この世界でなら

あなたは私の隣でも

月がきれいだといってくれるだろうか

あの世界でのあの願いは

この世界でならかなうだろうか

言葉に特別な意味などいらない

ただ、隣で、月がきれいだといってほしかった。

あなたは私の唯一だった

でもその瞳にはやはり私はうつらない


何度も繰り返すあの世界をみていたかの方が

私にして欲しいことがあるのだと言った

かの方の願いでこの世界に来ると決めたあと

その対価には何を望むかとかの方に言われた時

ある月を見ながらあなたの隣で聞きたい言の葉があるのだと願った

その言葉に意味なんてなくていいの

私の隣で聞きたかった言の葉

あなたは私がここに来た対価で

ここに呼ばれたの

願いが叶えば返すから

だからごめんなさい

今だけでいいの

かけらでいいからここにいて欲しい

できるならばあの赤い月が

数年に一度だけ

あの世界のような金の月になるその日

あなたにあの言の葉を

わたしのとなりでつぶやいてほしい


「つきが、きれいですね」

あなたは言った

その言葉が聞きたかったの

この世界では何の意味もない言葉

それが私の唯一の願い

ありがとう

あなたと共にあった時間は私の宝物

たとえただの仲間でも嬉しかった

かの方に望まれて

あれを滅する旅の仲間たちとの

旅の夜の空の下

わたしの隣であなたはつぶやく

「月が綺麗ですね」

私は答える

「はいそうですね」

ただそれだけのやりとりが

とても大切だった

金の月ではなかったけれど

赤く輝く月の夜の宝物


あれを封じてその存在を滅したあと

他の仲間は自分の世界に皆帰って行った

あなたもあの人の待つ世界にもどっていった

わたしは、ひとりここに残る

それがかの方との契約だから

あれは封印してもすぐには滅しない

なのにあれを封印した時点で、あれの呪いで

仲間と元の世界の時間が進んでいくだろうといわれた


こことは違う速さで時が流れている元の世界に戻ったときに、

彼らが世界に置いていかれないよう

彼らはすぐに戻らなくてはならないのだ

みんなは知らない

あれが完全に滅するまでその身にそれを封印する贄が必要なこと

それを最初に声をかけられた私しかしらないことも

その対価にもう一つだけ願いがかなうことも 

一つ目は彼をこの世界によぶこと

ふたつめは年に一度の金の月の下で

彼に月が綺麗だといってもらうこと

あのキラキラ輝く赤い月をみながら言ってもらったから

もう2つとも叶っているって思っていたけれど

それは本当に偶然におこっていて

願いが一つ残っていることを知って

繰り返すあの世界の異常を正すことを望んだ


彼の幸せをねがいながら

あれの魂が滅するその日まで

あなたがくれた言の葉を抱いて

ここで幸せなまま贄となる

あなたはここに来た対価に何を望んだのだろう

あの人との永遠だろうか

何度繰り返してもあなたの瞳に映るのはあの人で

わたしはあなたの唯一にはなれなかった

あの世界はもう繰り返さない

私はもうあの世界に戻れない

魂すらこちらにとらわれてしまったから


「月がきれいですね」

贄としての役目も終わったそのあとで

この世界で輝く赤い月に向かって

ひとりそうつぶやいた


この世界に1人

あなたとはもう

魂すら巡り会うことはない  

ここでわたしは死ぬまで生きる



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