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天才棋士との結婚生活  作者: 有原優
なぜ天才棋士は亡くなったのか

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第31話 結婚


 翌日、皆川さんを高級イタリアンレストランに呼んだ。

 もちろん要件はあのことだ。


 「皆川さん。ご飯を楽しみましょう」


 開口一番に、そう言った。それを聞いて、皆川さんは明らかに緊張している。


 「緊張しないでよ。さ、アヒージョ食べましょう」


 私はマッシュルームをフォークで突き刺して口まで運ぶ。


 「美味しいよ。緊張してないで、早く食べましょ」


 私的には本題は食事の終わりかけに言おうとしている。


 だけど、私も緊張しているのかもしれない。明らかに私自身のテンションがおかしい。

 久しぶりに、

 そして、ちぐはぐな会話をしながら食べること三十分。


 ついに食事は終わりを告げようとしていた。

 そろそろ切り出す時間だ。


 私は勇人君を裏切るわけではない。

 それは分かっているのに、それでも少し怖い。

 勇人君との思い出がなくなってしまう事が。

 でも、私が覚悟を決めなければならない。



 「ねえ、あなたは私の事を今も好き?」

 「ああ、好きだ」

 「なら、私たち、そろそろ結婚します?」


 そして私は色々と理由を告げた。

 そろそろ勇人君とのことが薄れてきて、前に進む準備ができたこと、娘が結婚してほしいと言っていることなどだ。


 「だから、結婚してください。お願いします!!」



 ……あれ、プロポーズって、女からしてもいいものだったっけ。今更ながら分からなくなってしまう。

 でも、そんなもの、今はどうでもいいや。

 勇人君とのも、ほとんど私から切り出したようなものだし。


 「ああ、喜んで」


 そして、私の再婚が決まった。

 二度目の結婚式はグアムだ。本当はハワイでもよかったのだが、勇人君から卒業するためという意味もある。

 二度目の結婚式に関しては、不思議な感覚だった。だけど、その時の皆川さん、いや、博君はイケメンだった。その結婚式を経て、私はこの人と結婚して本当に良かったなと思った。

 二度目の結婚式は波乱が起きることもなく終わった。

 それから私たちの口から勇人君の名前が出ることは無かった。私たちの三人目(一人目)の娘が出来た後も、愛ちゃんたちが結婚して家を出た後も。でも、私は、私たちは勇人君という一人の棋士の名前。いや、一人の人の名前を忘れることは無い。

 私は死ぬまで勇人君のことを覚えている。そう確信している。

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