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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

イチオシ短編

ちんちんのガチャガチャ

作者: ちんちんのお吸い物

 仕事帰りのOL・戸入坂(といれざか)ブレイキングダウン子は疲れていた。


「私が女だからって舐め腐りやがってクソ上司が⋯⋯」


 そう、ブレイキングダウン子(以降、ウン子)の会社には女と見ると舐めてかかり、腐る(?)クソ男がいるのだ。


「あーあ、Man(メァン)に生まれてたらなぁ〜」


 そんなことを言いながら歩いていると、信号の角のタバコ屋の角に見たことの無いガチャガチャを見つけた。

 近づいてみると、それが『ちんちんガチャ』であることが分かった。『ちんちんガチャ』の文字以外は全面茶色と焦げ茶色のモザイクで覆われている。


「なんこれヤバ」


 400円だった。ガチャガチャにしては高めだが、ちんちんにしては安いなとウン子は思った。


「⋯⋯よし、誰もいない!」


 周りを確認して財布から400円玉を取り出し、お金の入口に投入した。


「いいのが出ますように⋯⋯!」


 まさに一球入魂。すべての思いを込めてハンドルを回す。


 カラン、という音ではなく、ドン。という音がした。


 完全に真っ黒のカプセルを手に取り、フン!とハンドにパワーを込める。


 パカ、と音がして、中身がこぼれ落ちた。


「ヤバス!」


 咄嗟に靴と靴下を脱いで足でキャッチするウン子。その間0.14秒。彼女にしか成せない神業である。


 ぷにぷにしていた。


「なんだこれ。ディルドだと思って買ったのに死ぬほどふにゃふにゃじゃねーか。キンタマなんて見たことないぐらいしょぼくれてるし」


 ちんちんに文句を言っていると、カプセルの中に説明書があるのに気がついた。


『ちんちんの説明書』


 取り付けると男性になれます。


「ハイハイワロタワロタ。400円で男になれたら病院はイラネっつうの」


 ウン子はちんちんをポッケにしまうと、また上司の愚痴を言いながら歩き出した。


「あのクソ上司、なんで自分だけビール飲んで私には勝手に青汁頼むんだよクソが。飲み会行かないと給料0になるし、労基が太刀打ちできるレベルじゃねっだろ」


 小屋に帰ったウン子は玄関で下着姿になり、冷蔵庫からポッキーと午後の紅茶を取り出して戻してソファへ向かった。


「ふぅ⋯⋯さて、ポッキー食うか」


 先月父親が危篤になった際に飲み会を断ったため、彼女には金がなかった。ゆえにエアポッキーとエア午後ティーを嗜んでいるのだ。


「とーちゃん、あっちで元気でやってっかな⋯⋯」


 ウン子がビョーインに着いてすぐに息を引き取った父親は異世界転生し、食人鬼のスキルを手に入れ、勇者として第2の人生をスタートしたという報告が入ったのだが、それから数週間音沙汰がないのだ。


「ポッキーうめぇな〜」


 エアポッキーのチョコの部分だけぺろぺろしながら思いに耽けるウン子。


「とーちゃんもあーしのこと、心配してんのかなぁ⋯⋯」


 目になにかを溜めながら紅茶に口をつける。


「耳痒い」


 耳をかく。


『速報です!』


 65536Kテレビにアナウンサーが映し出される。


『またちんちんの無い遺体が見つかりました。今週はこれで16件目です。警察は犯人を捕まえるためにパトカーに乗ったり歩いたりしているとのことです』


 近頃世間を賑わしている猟奇殺人犯のニュースだ。なんでもそいつは男性だけを狙い、タマタマごとちんちんをもぎ取っていくという。

 本体を奪われたことで男性たちの意識は途絶え、生命活動を停止してしまうのだ。


『被害者は東京都在住の○○○ー○・○ー○○さん27歳、ちんちんはこれです。お心当たりのある方は0120-○○○⋯⋯』


 65536Kの画面にでかでかと映し出される被害者のちんちん。タマタマに大きなホクロがある。


「いつも思うけど、なんでちんちんの写真があるんだよ。一体誰が提供したんだよ。お前もそう思うよな?」


 エアポッキーに話しかけるウン子。


「卒アルとかじゃね?」


 答えるエアポッキー。


「あー卒アルがあったかぁ〜! やるじゃんポッキー!」


「でしょでしょ笑」


「ポリッ」


「ぎゃあああああああああ!!!」


「サクサク」


「やめてえええええええええええ!!!!」


「ごちそうさま〜⋯⋯さて、洗濯でもすっかね」


 200坪のリビングを出て150坪の洗濯もの置き場へ向かう。


 スカートを拾い上げ、隣の200坪の洗濯機置き場へ行こうとしたその時だった。


「あ、ポッケからなにか⋯⋯」


 デロン、とちんちんが出てきて落下した。


 地面に落ちた時の音は完全に「ぽとっ」だった。


 靴と靴下を脱いでキャッチする神業を持っているウン子だが、すでに裸足の場合は判断力と瞬発力が()()なのだ。


「それにしてもこのちんちん、よく出来てるなぁ。この大きなホクロとか、私だったら思い付かな⋯⋯⋯⋯アェ?」


 ニュースの画面を思い出し、固まるウン子。


「ホクロ以外もそうだ⋯⋯ちんちんの大きさも、異様にしょんぼりした玉袋も、さっきの被害者のものにそっくりだ!」


 衝撃を受けた様子のウン子。


「まさか1個1個にモデルがいるの⋯⋯? じゃあもしかしたら、あーしのあこがれのト9(きゅう)先輩のもあったりして!? それが400円で手に入るのォォォ!?!?」


 ウン子はすぐに服を着て小屋を飛び出した。あのタバコ屋へ行くのだ。


「えっ⋯⋯なにこれ」


 タバコ屋に着くと、パトカーがたくさん来ていて、10人ほどの警察官がタバコ屋の店主を取り囲んでいた。


「わしゃあ知らんのじゃ! 今朝勝手に置かれておって、まさかそんなヤバいものじゃったとは、知らんかったのじゃあ!」


 という町内放送がかかったので、現在時刻はきっかり18時94分だ。


「わしゃあ知らんのじゃ! 今朝勝手に置かれておって、まさかそんなヤバいものじゃったとは、知らんかったのじゃあ!」


 店主が暴れながら叫んでいる。


「まぁそうよね⋯⋯こんなアダルトグッズ公道に置いてちゃあかんわな」


 ウン子は諦めて帰宅することにした。


「キャアーア!」


 小屋に帰ったウン子は開口一番「キャアーア!」した。飼い犬の口から血が垂れているのだ。


「ポチ氏! ポチ氏どうしたのぉ!」


「わおーん」


「あれ、元気そうね⋯⋯てことは、もしかして誰か噛んだ!? やばいやばいやばい⋯⋯」


 ウン子が頭を抱えながらグルグル庭を回っていると、ポチ氏が何かを食べ始めた。


「うめーうめー」


 口の周りの血が増えている。


 下には血まみれの肉片のようなものが落ちている。


 ウン子はそれを靴と靴下を脱いだ足で拾い上げ、9000坪の洗面所に持っていった。


「野鳥でも食ってたのか⋯⋯?」


 じゃぶじゃぶ洗っていると、全貌が分かってきた。


「これって⋯⋯この、ホクロって⋯⋯」


 そこでウン子は気を失った。






 次にウン子が目覚めたのは病室だった。


「戸入坂さん、聞こえますか〜」


「は、はい⋯⋯」


 モヒカンの爆乳看護師の声掛けに答えるウン子。


「自分がどうしてここにいるか、分かりますか?」


「えっと⋯⋯」


「戸入坂さん、あなた何日ご飯抜いてました?」


「あ⋯⋯」


「何日抜いてました?」


「分かんないです⋯⋯」


「今は点滴で栄養を入れているので、このままお帰りいただけますが、ちゃんと帰りにカツ丼食べていってくださいね」


「分かり⋯⋯ました」


 帰り道。幸い今日は仕事が休みだったため、ウン子は安堵していた。遅刻1回につき10ヶ月、欠勤1回につき100ヶ月0給になってしまうのだ。


 そば屋の前でエアカツ丼を食べるウン子。


「お金が⋯⋯お金さえあればなぁ⋯⋯」


 いつの間にか泣いていた。気丈に振る舞ってはきたものの、とっくに心は壊れていたのだ。


「おねーちゃんだいじょーぶ?」


 振り向くと、小学生くらいの女の子がいた。


「優しいのね、ありがとう⋯⋯」


「だいじょーぶ? ぱんつみる?」


 元気のないウン子の反応に、心配そうな顔をしながらそう言った。


「え? パンツ?」


 返事を待たず女の子はスカートを捲り上げ、もっこりブリーフをさらけ出した。


「えっ⋯⋯モッコリ?」


「おねーちゃんもきになる?」


「え? あ、うん」


「こっちこっち」


 女の子はウン子の手を引いて、古い駄菓子屋へ歩いた。そこには、全面モザイクのガチャガチャ、『ちんちんガチャ』がちん座していた。


「ちんちんガチャじゃん」


「おねーちゃんしってるの?」


「知ってるもなにも、昨日買ったし⋯⋯」


「つけないの?」


「つけるとどうなるの?」


「おとこの子になれるんだよ!」


「えぇっ!?」


「えへへ!」


「またまた〜」


「おしっこもちんちんでしてるよ」


「えっ⋯⋯」


 ウン子は息を飲んだ。


「もしかして、本物⋯⋯?」


「ほんものだよ」


 女の子の話によると、このガチャはあの事件が起こるようになってから出没するようになったそうで、撤去してもまた新しいものが別の場所に置かれて、いたちごっこになっているそうなのだ。


「ちんちんのいたちごっこ⋯⋯」


 不謹慎ながら一瞬だけ「おもしろっ」と思ったウン子。せっかくなので1回回してみることに。


 真っっっっっ黒なちんちんだった。


「あれ、にほん人だけじゃないのかな」


 女の子が驚いた様子でちんちんを見ている。


 ウン子はパンツの中に手を入れ、ちんちんを取り付けた。


「えっ、なにこれ!?」


 ちんちんが肌に癒着したのだ。


「あ。このちんちん日本人だわ」


 ちんちんを装着した瞬間、「駄菓子屋に売ってる指から煙を出せるカード」で遊んだ記憶が流れ込んできたのだ。これで遊ぶのは日本人だけなので、ウン子はそう思ったのだ。


「なのにこんなにくろいの?」


「うん、たまにいるんだよ、異様に黒いやつ。ていうか、すごく頭が良くなった気がするんだけど」


「ちんちんをつけるともちぬしのパワーをゲットできるんだよ」


「そうなの!?」


「ちなみにわたしはね⋯⋯」


 女の子はそう言って後ろを向いて、またスカートを捲り上げた。


 両尻がそれぞれもっこりしている。


「もしかして⋯⋯」


「そう、3つちんちんつけてるの」


「すご! ⋯⋯確かに、股間にしか付けられないとは言ってないもんね」


「おねーちゃんも2個めつけるの?」


「うーん。さっきおしっこがちんちんから出るって言ってたけど、それって⋯⋯」


「まえとうしろから出るよ」


「やば⋯⋯。そういえば君、3つもちんちん付けてるのにさっきから9割平仮名で喋ってない? パワー入ってきてないの?」


「ぜんぶショタちんだったの⋯⋯」


 悲しそうな顔をしている。


「交換する?」


「いーの!?」


 瞳をキラキラさせて、最高の笑顔を見せてくれた。


「いいのいいの!」


 そう言ってパンツの中に手を入れ、ちんちんとタマタマを鷲掴みにするウン子。


「⋯⋯あれ」


「どーしたの?」


「取れない⋯⋯」


「ぜん力でひっぱればとれるよ」


「えぇ⋯⋯」


 取り付けたちんちんはおそらく、普通に生えているちんちんと同じようにウン子の体から生えていた。

 確かに全力で引っ張れば取れるかもしれないが、本当に全力で引っ張らないと取れないと分かったウン子は人生初のタマヒュンを経験した。


「くれないの⋯⋯?」


 潤んだ目で見つめる女の子。


「や、やってやらあ!!!!」


 燃えるような痛みに凍えるような感触、気絶しないのが不思議なレベルの激痛に悶えながら、ブチブチと引き剥がした。


「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯どうぞ、お嬢ちゃん⋯⋯」


「わーいおねーちゃんありがとー!」ブチッ


 女の子は左尻からショタちんを引きちぎり、ウン子に差し出した。


「えっ、そんな簡単に⋯⋯?」


「こーかんできた〜」


「あっそこなんだ」


「何がですか?」


「急に敬語になった」


「私たち初対面ですし、あなた年上ですし、敬語を使う理由がありませんよハハハ」


「こわ⋯⋯」


 もう1つ、ウン子は気になっていた。

 ウン子が勝手に思っていただけなのだが、交換したちんちんがメインちんちんになるものだと思っていたのだ。


 前の真ん中にショタちん、後ろの右にショタちん、左におじ黒ちんではなんだかしっくり来ないし、なにより自分が死ぬほど痛い思いをしてもぎ取ったちんちんが左の尻にくっつけられたのがショックだったのだ。


 しかしウン子は大人である。そんなことは口には出さない。


「お姉様はつけないのですか? ショタちん」


「家帰ってから付けるね」


「そうですか、では私はこれで。お姉様もお気を付けて」


「うん、ありがとね」


 ショタちんをつけるかどうか、正直迷っていた。知能が低くなりそうな気がするし、ちんちんをつけただけでは私そのものが男性になるわけではないと分かったからだ。


「おいお前」


 後ろから声がした。


「はい?」


 振り向くと、化け物がいた。

 身長は優に2メートルを超えており、パツパツのファッションにはこの世のものとは思えないほどムキムキな筋肉が浮き出ていた。


「フン!」


 男が力むとすべての衣服が弾け飛び、筋肉がむき出しになった⋯⋯かと思いきや、それは筋肉ではなく全身に取り付けられた無数のちんちんだった。


「キモっ!!!!!」


 思わず叫ぶウン子。


「俺はちんちんの弁慶。今まで999本のちんちんを集めてきた」


「へっ、ちんちんの弁慶様があーしになんの用なのさ」


 強がってはいるものの、足がすくんで動けないウン子。


「ちんちんください」


「え?」


「ちんちんください」


「いいけど⋯⋯はい」


「ありがとうございます。あの、一応これ」


 400円玉を渡された。


「はぁ、どうも⋯⋯」


「フハハハハ! 成った! 俺は成ったぞぉ! これで俺はちんちんの魔王として世界を、いや、異世界もすべて征服してやる! まずはお前からだァ!」


 そう叫んで襲いかかってきた、その瞬間だった。


「とーちゃん⋯⋯?」


 弁慶の後ろに父親の巨大な顔が現れたのだ。


「ぱっくんちょ」


「ぎゃあああああああああ!!!」


「世界の平和は俺が守る!」


 1秒に満たない時間の出来事だった。

 ウン子の父が、娘のピンチに駆けつけたのだ。


「とーちゃん⋯⋯」


 ウン子は呆然としていた。


「大きくなったな、ウン子」


「まだ1ヶ月くらいしか経ってないよ⋯⋯」


「そうだな、ウン子」


「会話テキトーかよ」


「そうだな」


「もういいよ」


「うん、じゃ帰るわな」


「ありがとね」


「ああ」


 パッ! っと消えた。ほんとにパッ! って感じで。


 それからちんちんの事件は数が減る一方で、1ヶ月後にはついに0件になった。


 しかし⋯⋯


『速報です!』


 65536Kのテレビが唸る。


『またおっぱいの無い遺体が発見されました。これで今週98万3件目で、警察はパトカーのミニカーで遊んだり、散歩をしたり、完全に諦めているとのことです』


『また、被害者はナコの街在住の○○○○さん17歳で、卒アルがまだないのでおっぱいの写真はありません。専門家によると今回は不可解な点があるとのことで、普通おっぱいをもぎ取られると血だらけの無惨な姿になるのですが、今回の被害者には乳首があり、外傷が見られないとのことです』


『速報です。先ほどのニュースは誤報でした。○○○○さんは亡くなっておらず、ただ裸で寝転んでいただけでした。おっぱいについては、ちっぱいだったとのことです』


『速報です。現場にいた警官2人が○○○○さんにビンタされ死亡しました』


『速報です。今コンビニで遊戯王カードを買ったらキラが出ました』


『速報です。寝ながら魚釣りが出来ることで有名な日本最大の釣り堀施設「フィッ寝具」がマクドナルドを買収し、これからマクドナルドは釣り堀形式となるとのことです。先行オープンの店舗では、「バンズがふやふやで釣れない」「全部バラバラになって釣り堀を漂ってる」「ナゲットは釣れた」と好評のようです』


『速報です。僕が手塩にかけて大切に育てたカマキリが入水自殺しました』


『速報です。カマキリのお尻からなんか出てきました』


『速報です。食べてみたところ無味でした』


『さようなら』

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ハリガネムシを食うなwwwww
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