表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人外の狂涛  作者: 江華
6/15

取り調べ

エレベーターから降りると1人、警官とは違う格好をした男性が立っていた。


「1課の方たちですよね。収容対象の人外を受け取ります」

「では、任せた」


エレベーターから出るとすぐに扉が閉まって上の階へと上がっていった。


「着いてこい。貴様には聞きたい事が沢山ある。簡単にここから出れると思うなよ」


雰囲気がさっきまで一緒にいた警官たちとは違う。格好も少し違うようだ。警官には鷹の入った紋章をつけているが、こいつは一本の道から三本に分かれたよく分からないマークをつけている。きっと、警察とは別物と思った方がいいのかもしれない。

面白みもないシンプルな白い廊下を歩き出す。それに着いて行った。


「路地裏で男性1人に暴力を振るった。当時は変装を解いており、素の姿で周囲の人たちを混乱させた」


男性が立ち止まる。前には部屋があり、扉が開かれる。中は机が部屋の真ん中に1つ、椅子が机を挟むように手前と奥に1つずつあるだけの簡素なものだった。


「入れ。あった事全て話してもらうぞ」


座れと促されたので奥の椅子に腰掛ける。続いて男も座る。ここはいわゆる取り調べ室という所だろうか。


「君、名前は?」

「ローガンです」

「フルネームで?」

「はい」


男は紙に1つ1つメモしながら質問を続けた。


「それじゃあ、殴った男性と何があったか、きっちりその口から話してもらうぞ」


それからうんざりするほどの質問攻めをくらい、何の誤解もないよう慎重に答えた。


「ただでさえ中身人外なのに何も素顔を見せなくったって…」


男が大きなため息をついた。


「それはわざとじゃなくて、うっかり…」


本当に何も意識していなかった。なんせ人間に変身するなど初めての体験だ。こうもあっさりバレるとは思わないだろう。


「う~ん、せっかく天然記念物としてあるんだからもう少し謹んで…」


今、分かりやすく自分が混乱したのが分かった。聞き間違いかと疑った。

…なんて言った?


「天然、記念物、?」

「知らない?()()()()()()()()()()されてるの」

「いえ…何で…」

「何でって、国がそう決めたんだから。保護する価値があるって」

「は…?」


説明されても訳がわからない。同じ言語のはずなのに理解ができない。私の頭がおかしいのだろうか。エオローは知っていたんだろうか。


「でもまあ、たまにいるんだよね。人に危害を加えるとか、問題起こす人外って」


男はまたため息をついた。


「全く、天然記念物って気高いものなんだよ?そんなものをもらっておきながら…」


耳に直接ブチッと何かが切れるような音が聞こえた。理解すまもなく、視野が狭くなって気づけば立ち上がって男に怒鳴っていた。

そんなもの欲しくてもらったわけじゃない。何故何もしていないというエオローを連れて行った。何が天然記念物だ。上から目線で、人外はものじゃない。

言いたかった事を全て言うと、部屋の唯一の扉が開いた。男が顔を覗かせている。


「あ、アダムズ…」


不安そうな顔をしている。アダムズとはずっと話していた男の名前だろうか。


「心配ない。大丈夫だから」


アダムズが制止する。すると、男は引っ込んでいった。ローガンの声が外まで聞こえていたということか。アダムズがまたローガンを見据えた。


「ローガンだっけ?ちょっと落ち着け。今日はもういいから。明日また話を聞く。今日はここに泊まっていけ」


ポタッと音が聞こえた。音がする方を見ると机の上に見覚えのある肌色の液が付いていた。顔を触るとまたせっかくつけた塗装が崩れていた。


「あと、」


アダムズが続ける。素顔が見えても思う事は何も無いらしい。


「エオローだっけ?君の友達?探してるの?」

「はい…」

「君はここに友達がいると思っているみたいだけどいないよ、ここには」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ