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人外の狂涛  作者: 江華
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街の人たち


「なあ、そこのねえちゃん」

「…私か?」


1時間弱、あたりの建物から何か情報が出やしないかと散策・聞き込みをしていたが一向に見つかる気配はなく、気付けばため息ばかり吐いていた。そんな時に街の住民であろう女性に話しかけられた。あまりにも格好が楽そうだから観光客ではなさそうだった。


「そうさ。あんただよ」

「そうか。何の用だ?」

「いやあ?ただ単にさっきからこの辺りをぐるぐると。何やってんだい?」

「観光だ。目障りだったのならすまない」


となると、もう少し探索範囲を広げるか。だが、ここら一体は見聞きし回った。あまり奥まで行くと帰り道の心配もしなくてはならない。行きはあの親切なお爺さんに送ってもらったが帰りはそうもいかないだろう。


「いやいやいや、そうじゃねえよ。何か探しているようだから手伝ってあげようと思っただけさ。地元の住民としてね」

「そうか。気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとう」

「遠慮はいらねえよ。初めてなんだろ?ここに来るの」

「分かるのか」

「分かるさあ。君みたいな子、見かけた事ないからね」


ひとつこの女性に聞いてみようか。


「そうなのか。…ところで1つ聞きたい事があるんだがいいか?」

「なに?観光地の行き先?」

「違う。人を探しているんだが…」

「…さっき観光客だって」

「あぁ、観光と人探しだった」


人探しに必需品であるエオローの写真を見せた。人間の姿の。

地元民と名乗った女性は少し困惑したような顔をしていたがそれでも写真は見てくれた。


「……あ、見たかも」

「本当か!?いつ頃見かけたとかは…」

「う、すまねえがそこまでは…元々見た気がする程度で自信はないんだ。あんたみたいに個性的じゃないし」


もしやこの人暇人か?普段、どう暮らしているんだ…

とはいえこの暇人のおかげでエオローが見つかるかもしれない。確定しているわけじゃないからまだ雲を掴んでいるのかもしれないが。


「どこで見かけた?」

「そりゃあ、この街よ」

「…それもそうか」


これ以上情報が出るだろうか。あまり覚えがないと言うし潮時かもしれない。


「…分かった。君は関係ないというのにありがとう」

「なんだ、もういいのか。なら、観光もしに来たんだろ?案内するぜ」

「いや、十分お世話になったし。遠慮させてもらうよ」

「そんなの気にするなよ。あんたなら人が良さそうだし…」

「すまないが、私は1人で見て回りたいたちなんだ」

「…そうか。そこまで言われちゃしょうがないな。いい旅をおくってくれよ」

「ありがとう」


地元民女性と分かれる。この人もなかなかに親切な人だった。おかげで少しは前向きな気持ちになれた。

またエオロー探しを再開する。いた事は確かなようなので、いつかは分からないが…せっかくだ。もう少し探索範囲を広げてみよう。帰りのことは…まあいいか。なんとかなるだろう。とりあえずもっと遠くまで行ってみよう。


「お姉さん今1人?何?観光客?俺今暇だから案内できるよ」

「…」

「聞いてる?」


どうやらこの街は観光客にはやたら親切なようだな。


「お姉さん?あれ?無視?」

「…私に何の用だ。先を急いでいるんだが」

「つれないね。どうせ観光でしょ?案内してあげるって言ってんだよ?」

「いらない。1人で見たいんだ」

「そんな寂しいこと言わないでよ。俺と遊ぼ?ね。あっちの方にいいカフェがあるんだ」


そう言った男が指差した場所は光が入っていないような裏路地だった。何故だかこの男には嫌悪の気持ちを抱いてしまう。格好はあからさまにやっすいチンピラの見た目で、いくら歩くスピードを上げども着いてくる。ひどい粘着性だ。だが、無視すれば諦めもつくだろう。


「ねー、ねー、ねー、ねー、おねーさーん!」

「しっつこいな!君は!行けばいいんだろ!行けば!さっさと案内しろ!」

「ラッキー!」


この道が1番近道だと言いながら路地裏に連れ込まれる。思ったより道幅のないところだった。

突然、壁に押し付けられた。


「…カフェは?」

「あると思ってた?」


男の顔がゲスで極まった。見ていて気持ちのいいものではない。


「やはりな…」


元々エオローを探すのにそんな暇、とれるはずもないんだ。今でもすぐに見つけ出したい一心だというのにっ…!

チンピラに鳩尾パンチをお見舞いする。


「ぐふっ!!?」


潔く倒れた。早く大通りにお戻ろう。


「あ、あの…!大丈夫でs…」


誰だろう。声を聞いて騒ぎを止めるために入ってきたのだろうか。逆光でよく見えないが少年のようである。

…という事は誰が悪者に見えるだろうか。


「あの~…」

「ひっ!!く、来るな!化け物!」

「は?」

「うわあああ!!!」


走り去ってしまった。化け物?まるで私が人外を分かっての言葉を…

そこで顔から肌色の液体が滴り落ちているのが分かった。急いで手で拭うと様々な色が手に付いた。

まさかっ!?顔の塗装が剥がれるなんて!なんてことだ。一刻も何とかしないと人探しなどしていられなくなる!

まずは顔を!

再度作り直そうとした時、


「お巡りさん!こいつです!」


あの勇気ある少年が戻ってきた。しかも警官を連れて。

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