ふれ合い
右も左も分からない世界だがエオローからしたら特に大した違いはないと得意げに話していた。
しばらくは人気が無く、とぼとぼと歩いていると後ろから何者かに尋ねられた。
「ほれ、そこのあんた。どこ行きなさる」
周りにはローガンしかいないので話しかけられたのは自分だと気づいた。立ち止まり、後ろを振り返ると馬車を引いている御者席に座った老爺だった。
あまり事実を話すのもあれなので少し情報を偽って騙った。
「観光で近くの街に寄ってみたくて…」
初めてこの顔で笑顔を作ってみた。すると老爺の人が良さげな明るい顔がさらに明るくなったように見えた。
好青年っぽくすれば意外と好かれるのかもしれない。
「そうか。この近くってするとクレアぐらいしか」
「クレア?」
どんなお土産が売っているかは知っていたが、街の名前は気にかけたこともなかった。エオローは言っていただろうか。
「なんだ。無計画で観光してるんか」
「そうでも無いんですけど、初めては自分の目で見たいって思ってしまうたちで…」
「それで…何か?」
これ以上こうして付き合っていると時間があっという間に溶けてしまいそうで。自分の話より何故この人はわざわざ私に話しかけたのか。それが知りたかった。
「あぁ、あんな何もない様な街にも観光客が来るんかと、つい本題を忘れるところだった」
本題?怪しいことかと妙に警戒しだす。
「目的地が一緒だったら乗せて行こうと考えていたんだよ」
「俺も今クレアに向かっている最中なんだよ。まだ少し街まで距離があるからきっと困るだろうと」
それだけのために…?本当に親切な人だ。
ローガンは老爺の言葉に甘える事にした。馬車の後ろはワゴンになっており、大小分かれる木箱が数個置かれていたくらいだった。1、2時間道の凹凸に揺られ、老爺と喋りながら快適な時間を送った。
クレアに着けば老爺はこれから仕事だそうで街に入ったところで降ろしてくれた。お礼を言うと、もし次会う事があればこの旅行が楽しかったものであったか感想を聞かせてくれと言われた。できる気はしなかったがいつか、と答えた。
馬車が次第に背景に溶け込んでいくと友人探しを開始した。